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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第757話:魔物退治あらかた終了

 魔物を退治しながら進む。

 当然のことながら無双状態だ。

 うちのパーティーにかかればこんなもの。

 聖水撒き部隊との連携で、後ろには一匹の魔物もいないと断言できる。


 さて、そろそろ細長い区画は終わりだと思うけど。

 

「もう少しで広いところに出るのかな?」

「ああ。とりあえず崖上の魔物がいなくなれば信徒の危険はなくなる」

「皆で追い込んだ魔物が慌てふためいて逃げようとすると、追ってる側が危ないな。ここからは手加減せずにばさーっといくよ。使える毛皮とかが少なくなっちゃうけどごめんね」

「最初から気にせず倒してくれて構わなかったのだが」


 ワッフーが苦笑し、ためらいがちに聞いてくる。


「……悪魔バアルは、どうなっているんだ?」

「嫌がらせはされたな」

「どんなだ?」

「掃討戦跡地にクー川から水引こうとしてるんだよ。移民を受け入れるなら水利がよくないといけないから」

「うむ」

「ただ水を引こうと思うと海水が混ざっちゃうから、少し上流から水を引き込むことになったんだ。その時に魔物退治しなきゃなんなかったんだけど、三つ首のヒドラとかドーラにいないでっかい黒いドラゴンとか召喚してきたよ」


 驚くワッフー。


「まさかキングヒドラとブラックデモンズドラゴン?」

「それだ。ワッフーはよく知ってるねえ」

「帝国本土では災害級とされている魔物だぞ?」

「らしいねえ。ヒドラの牙って結構高く売れるじゃん? 首刎ねても刎ねても生えるから、牙が七〇本以上取れたんだよ。黒ドラゴンも一体倒しただけで『逆鱗』が五枚も取れてさ。開拓資金の足しになって良かった。オーディエンスもやたら盛り上がったしなー」

「避難させなかったのかよ!」

「観客を? ムリだわ。いきなり魔物召喚されたんだもん」


 パニックになったら却って危険だったわ。

 もっともカラーズの住人はあたしの実績をよく知ってるからか、ドラゴンくらいじゃ慌てやしない。

 よく教育されてます。

 口あんぐりのワッフー。


「……嫌がらせの域を超えてるだろう」

「むしろエンターテインメントの域に入ってたね」

「バアルのやったことだという証拠はあるのか?」

「ないけど、そんなことする動機と実力両方を備えてるのがバアルしかいない」

「……うむ」


 バアルは姿を見せないんだよなー。

 やつも警戒してるのか。

 ただこのままネチネチ散発的に嫌がらせされ続けるなんてことはないと、あたしのカンが告げている。

 おそらく決着は近い。


「バアルは帝国の政治・軍事における最高実力者第二皇子ドミティウス殿下と通じていると聞いた。移民に対するひどい仕打ちもバアルのせいなのか?」

「ミスティさんに聞いたんだ?」


 いかにも悪感情を好む悪魔のやりそうなことではあるが……。


「全部がバアルのせいなのかはわかんないな。第二皇子の、今度新大使としてドーラに来たルキウス第四皇子に対する嫌がらせのセンはあるかなとは考えてるけど。あ、第四皇子をあたしはプリンスって呼んでるんだ」


 移民の悪感情を取り込みたいがためにバアルが噛んでたとしても不思議はない。

 でも戦争起こしたりとんでもドラゴンを召喚したりするやつが、出国税で移民に嫌がらせってのはな?

 ちょっとみみっちいというかアクションのテイストが違う気はする。

 いっぺんバアルと会って、性格を把握しておきたいもんだ。


 いずれにしてもミスティさんはワッフーにかなりの部分を話しているらしい。

 ならば……。


「ぶっちゃけバアルとつるんでドーラを攻めようとするようなやつが帝国の最高実力者って迷惑じゃん? だから第二皇子がライバル視してドーラに飛ばしたプリンスを盛り立てようとしてるんだよ」

「ああ、それも聞いた。ドーラ行政府が新大使ルキウス皇子殿下に助力できない理由も」

「すげえ面白い状況だと思わない?」

「面白い? 精霊使いは面白いと見るのか」


 だからそーゆー不可解なものを見る目を向けるなよ。


「ここから状況をひっくり返せたら最高でしょ? ダメで元々なんだし」

「ハハッ、なるほどな。精霊使いが新大使を玩具にしているってことも聞いた」

「いや、玩具にしているわけではないんだけれども」


 傍からは遊んでいるように見えるのかな?

 全力で支援しているんだとゆーのに。


「どの辺を目標にしてるんだ?」

「プリンスが皇帝になってくれると最高だなー。まあ帝国の有力者にプリンスはドーラでこんなに頑張ってるんだよーってことを広く知らせることができて、かつ第二皇子が大きな失敗をしないとムリだね。ちょっと実現の可能性がない。だから大使として実績挙げさせて、第二皇子が無視できない存在にまで持っていきたい。具体的にはドーラ~帝国間の貿易を活発化させて、それをプリンスの手柄って感じにしたいの。ドーラにはおゼゼがないから、ガンガン輸出しないとどうもならんって事情もあるけど」

「ふむ、現実的だな」

「とにかく輸出品目増やしたいなー。聖火教徒からアイデアあるようだったら教えてよ」

「わかった」


          ◇


「よーし、オーケーだなー」


 細長い区画から魔物はいなくなった。

 次は丸く広い区画だ。


「ここで待っていれば、皆が聖水で追ってくるはずだ。」

「じゃ、大人しく待ってようか」


 半端なタイミングでこっちから攻撃かけると、魔物が恐慌起こして危険かもしれない。

 思いっきり引きつけて『薙ぎ払い』だな。


「魔物が逃げると崖から転げ落ちるくらいの位置から攻めた方がいいねえ」

「ふむ? ではやや西に回ろうか」


 細長い区画の封鎖を任せてやや西へ。


「おー、集まってきてるねえ」


 信徒達が整列し、一つの面が魔物を追うような形状だ。

 結構な圧迫感があるなあ。

 これは魔物もビビるわ。


「いくぞお! 薙ぎ払いっ!」


 いやあ、バタバタ倒れる魔物達。

 一撃でこんなに倒したの初めてだな。

 ダッシュして『あやかし鏡』の効果でもう一回薙ぎ払い!

 聖水撒き部隊の皆さんの大歓声だ。

 呆然と呟くワッフー。


「すごい……ほとんど全滅じゃないか」

「ワッフーはパワーカード知ってるんだっけ? 『スナイプ』っていう、攻撃が遠くまで届くやつ装備してるんだ」


 まーでも聖火教徒の皆さんがここまで追い込んでくれたから。

 あたしは決めるところは決めるぞ?

 もうさほど危険はなさそうだ。


「油断しないで残った魔物を片付けるよ!」

「おう!」

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