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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第756話:生きとし生きるものの命をいただく

 聖火教本部礼拝堂周りの魔物退治が始まった。

 あれ、ワッフーがちょっと硬くなってるかな?


「何だかんだで腕が鳴るなあ」

「さすが冒険者だな。やはり気合いが入るものか」

「どれだけ食料を確保できるかがあたしにかかってると思うと」

「食糧確保より確実な魔物の排除が重要なんだぞ?」

「乙女の小さな胸の……」

「緊張しているのか」

「下のお腹がグーグー鳴りそうです」

「腕が鳴るんじゃなかったのか?」


 アハハ、お腹も鳴りそう。

 よしよし、ワッフーの硬さも取れたか。


 あたし達のスタート地点は礼拝堂の真南、歩いて一五分くらいの位置だ。

 まずはここから北東に向かって魔物を駆逐していくことになる。


「作戦開始は九時だ。我々に近い側の西から東の水辺へ魔物を追い詰めていくから、五分過ぎたらスタートだ」

「オーケー。基本的に水辺までの魔物を全部倒せばいいんだよね?」

「可能か? 北に池があるが、そこに行くまでには崖があるのだ。崖より西側を確保できれば御の字と考えている」


 なるほど、平面の地図だけじゃわかんなかったが、結構な高低差があるのか。

 しかし農業のことを考えると、水場まで安全域を確保できる方が絶対にいい。

 魔境クレソンも持ってきたことだし、植えるとしたら水場近くがいいしな。


「崖の下の池の周りはどんな感じ? 湿地でズブズブとかない?」

「ない。草ぼうぼうだが、足場はしっかりしている」

「広さは?」

「全体として三角形だが、均せばそうだな、二〇〇×二〇〇ヒロくらいだろうか」

「大した広さじゃないけど、水場に近い場所がそれだけ使えると使えないとでは大違いだね。確保しよう」


 ワッフーが驚く。


「えっ? 聖水部隊は下まで降りられないぞ?」

「わかってるわかってる。パラキアスさんとヴィルに魔物を上から見つけてもらって、個別に倒していけば大丈夫だよ」


 いや、どうせ強い魔物なんかいない。

 うちのパーティーも『遊歩』でバラけて飛んでめいめいが魔物を倒してってもいいか。


「でもヴィルにあんまり働かせるのはちょっとなー」

「何だ、契約上の問題か?」


 警戒するワッフー。

 悪魔だからってそんなんではないのだ。

 大体あたしはヴィルと契約なんかしとらんわ。


「ヴィルが『闇のブレス』吐くと、せっかくのお肉が塵になっちゃうの」

「……そろそろスタートだ。よろしく頼む」

「任せて!」


 もうちょっと尊敬の目付きで見てくれないかなあ。

 食べ物重要なんだぞ?


          ◇


「薙ぎ払いっ!」

「お見事」

「お見事なんだよ」


 殺人蜂と食獣植物をバサッとやっつける。

 ハハッ、調子がいいなあ。

 どうもこの辺に出る魔物は掃討戦の時の魔物と突進熊みたい。


「この辺って人形系の魔物いる?」

「踊る人形か? いや、見たことないな」

「そーか」


 人形系はいないかごく少数と思われる。

 残念。


「何故だ?」

「いや、人形系は儲かるし、比較的多めに出るならワッフーのレベル上げてやれるなあと思ったから」

「ありがたいが、いきなり魔法を撃ってくる人形系は危険だ。集落の近くには出て欲しくない」

「住民大事の考え方もあるか」


 あたし達のような冒険者と、集落の民を守るハイプリーストでは考え方が違うもんだ。

 とゆーか人形系を大喜びで倒すのって、あたし達以前にはなかった考え方みたいだしな?

 時代とともにやり方が変わってくるってことかもしれない。

 

 聖水を撒いていた聖火教徒達が、会釈してどんどん先へ先へ大回りして進んでいく。


「ははあ、あたし達に近い側から追い込んできて、倒して制圧したエリアの人員はいらなくなるから薄いところに回すのか」

「そういうことだ」

「突進熊とネズミのデカいやつは食べられるんだよね」

「ヒポポタマウスか?」

「食べられる魔物の血抜きしといてもらえると、もっとありがたいんだけどなあ」

「うむ、食料としても重要だしな」


 食べ物はメッチャ重要なんだよ。

 ようやく理解したか。

 赤プレートに話しかける。


「ヴィル、聞こえる?」

『聞こえるぬ!』

「ミスティさんに、倒した魔物を血抜きして運ぶ人員をこっちへ寄越してもらってくれる?」

『わかったぬ!』


 ワフロスが呟く。


「遠隔通信できるというのは実に便利だな。しかし聖火教の大祭司が悪魔と会話する状況というのはどうも……」

「頭固いなー。ヴィルは特別だから。テンケン山岳地帯の聖火教徒を救い、ドーラの独立にも貢献した大殊勲者だぞ?」

「うむ、功労者だな」

「さあ、どんどん行こうか」


 さらに前へ。


          ◇


「しかし全体攻撃バトルスキルというものは、存外命中率が高くないものなんだな?」

「いや、命中率低いってことはないんだけど」

「そうか?」


 先ほどからあたしがよく使っている『薙ぎ払い』、確かに命中率がよくない。

 ワッフーが不思議に思っているようだ。

 まあ理由があるんだが。


「突進熊いるじゃん? あれ頭だけすっ飛ばすと、丸々身体部分の毛皮が利用できるんだ。だからなるべく頭を上手に刎ねようと思ってるんだけど、複数体出ちゃうと『薙ぎ払い』では難しくて」

「利己的な理由過ぎる!」

「突進熊は一体ずつ出てくれないかなあ」

「あんたの都合通りにいくか! もっと真面目にやってくれ!」

「目一杯真面目にやっとるわ。生きとし生きるものの命をいただくんだぞ? 食べるところはありがたく食べる、利用するところはありがたく利用する」

「む……俺の考えが浅かったようだ」


 ワッフーが姿勢を改める。


「てっきり精霊使いは、肉と魔宝玉のために効率を追求するのだと思い込んでいたから」

「大体当たってるけれども」

「あんたのポリシーがわからん!」

「だから頭固いとゆーのに。今はものも食料も土地も足りないでしょ? せっかくの機会なんだから欲張っていかないと」

「……言ってることは正しそうなのに、何故か納得できない」

「特に今は食べ物に困ってるんだから、ここで物資を確保しとかないと冬を越せないぞ? お布施で生きてる宗教者は、あたし達と感覚が違うのかしらん?」

「正面から言われてしまうと、返す言葉もないんだが」

「あたしは聖火教徒じゃなくてコブタミート教徒だからなー。根本的なところで考え方が違うのかもしれないねえ」

「何だコブタミート教って。もっともな意見だと思い始めたところで茶々を入れるな!」


 どうせいっちゅーんだ。

 魔物を追ってどんどん前へ。

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