第755話:聖火教徒のお手伝い
――――――――――一四八日目。
「今日ねえ、聖火教徒のお手伝いで、魔物退治してくるんだ」
「ほう? ユーちゃんはどこでも引っ張りだこだろ」
「モテる女はツライなー」
「ハハッ、美少女はモテると決まってるんだぜ」
涅土の精霊カカシと笑い合う。
今日は凄草の株分けの日なのだ。
凄草はもちろんありがたいんだが、。
「ダイコン、すげえ葉っぱ大きくなってるね?」
「ちょっと驚く成長スピードだよな」
今日の話題はダイコンがメインだ。
カカシの管理あってこその成長なんだろうが、結構驚き。
お宝のダイコンだけのことはある。
移民の食料の救世主になれるかもしれない存在だ。
ぜひドーラ中に広めたい。
「栄養分は大丈夫? 足りる?」
「腐葉土のところから引っ張ってるから問題ねえな。以前の魚肥あっただろ? ようやくいい感じなんだぜ」
「あったなあ。忘れかけてたよ」
思い出す津波事件。
ハハッ、懐かしいな。
「あれ? するとコブタマンの残骸とかも肥料になる?」
「なるぜ。しかし今のゴミ捨て穴のところまでは手が届かねえ」
あ、手を伸ばすんだ?
依り代タイプの精霊は何がどう手なんだろ?
依り代の案山子の手ってわけじゃないよね?
「どうしたらいいかな?」
「腐葉土の穴の隣にもう一つ小さめの穴開けとくから、そこに入れといてくれるか。オイラが粉砕して熟成させて肥料にするぜ。量はさほど必要ないから、穴に入らない分は今までのゴミ穴に捨ててくれ」
「わかった。カカシは頼りになるなあ」
「なるんだぜ」
よし、肥料はカカシにお任せして。
「ユーちゃんの農業のスタンスってのはどうなんだ?」
「えっ、スタンス?」
「ユーちゃんは畑で食い物だけ作ってオーケーってわけじゃねえんだろ?」
難しいことじゃないんだが。
「あたしはドーラをいい国にしたいじゃん?」
「ドーラのヒロインだからだよな?」
「そうそう」
カカシはよくわかってる。
「せっかくあたしは『アトラスの冒険者』で、魔境はじめいろんなところへ行けるじゃん? あちこちで有用な植物を採取してきて、使えそうだったらドーラに広めたいんだよね」
「食用植物に限らずってことかい?」
「うん」
これカカシのスタンスとは合わないのかな?
カカシは凄草みたいな栽培の難しいものにチャレンジしたいみたいだし。
「……外国へ行けるといいよなあ」
呟くように言うカカシ。
賛同してくれるのかな?
「ユーちゃんの考え方はわかったぜ。有用でドーラの気候に合ってるものがいいんだな?」
「今は移民に何食べさせたらいいかが優先事項だけど、常に次を考えてなきゃいけないじゃん?」
「使えそうな植物を見つけたら、どんどん持ってきてくれよ。オイラもちょっとはアドバイスできるからよ」
「助かるなあ」
カカシとクララの言うことを聞いてれば、有用植物を厳選できそう。
あたしの行動範囲が広いこともあって、多くの植物を導入するということは、多分うちのパーティーに一番向いていることだ。
やる気が出てくるなあ。
「さてと。出かけるかなー」
「おう、行ってらっしゃい」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「おっはようございまーす!」
「ユーラシアさん、今日はよろしくお願いします」
「任せて!」
聖火教のアルハーン本部礼拝堂にやって来た。
立派な建物だなあ。
転送先は礼拝堂の前のところなのだが、ミスティさん始め聖騎士二名、男性のハイプリースト二人、女性のハイプリースト一人の他、応援であろうレイノスのハイプリースト一人と、おそらく移民の聖火教徒を率いてきたと思われるヒゲの男が一人いる。
聖火教の主だった面々がほぼ勢揃いだ。
パラキアスさんも来ていた。
「パラキアスさんも応援?」
「聖水を使えと提案したのは私だからな。責任があるだろう」
「そーかー」
ミスティさんが地図を取り出し、パラキアスさんが指し示しながら言う。
「全体としては細長い。しかし大きく区分して、ほぼ丸く広い地区と細長い地区の二つになる。細長い地区の方を先に片付けてから、丸く広い地区を全員で囲うべきだろう」
うん、正攻法だな。
「ではまず丸い地区の方には魔物が外に出ないよう最低限の人数を配置し、残り全員で細長い地区を狭い方へ聖水で圧迫、ユーラシアさんが縦の長い方向へ進撃してください」
あたしが魔物を倒すことに関しては問題なさそうだ。
聖水で追われた魔物をやっつけるだけ。
しかし聖水ってどれくらい効き目があるもんなんだろ?
興奮してる魔物でもちゃんと嫌がってくれる?
「ユーラシアさん、何か意見あります?」
「うちのヴィル呼んでいいかな? パラキアスさんとヴィルに上空からチェックしてもらって、危なそうなところあったら急行してもらえば、より安全だと思うけど」
聖水に追われて恐慌状態になった魔物が暴れると、魔物の密度によっては不測の事態も考えられるんじゃないか?
パラキアスさんとヴィルが見てりゃまず大丈夫だろ。
「ヴィルとは?」
ヒゲの男からの質問だ。
あ、レイノスのハイプリーストと新規の移民はヴィルを知らないよな。
「精霊使いユーラシア配下の高位魔族だ。好感情好きで、人に悪さをしないという際立った特徴がある」
「高位魔族だと?」
「帝国本土テンケン山岳地帯の集落が襲われた時、同地の聖火教徒を救うのに格別の働きを示してくれました。悪魔ではありますが、特別に聖火教で認めてもいいと考えています」
「悪魔でもいい子はいるよ。とにかく呼ぶから、自分の目で判断してよ。ヴィルカモン!」
赤プレートに呼びかけ、しばらくして現れる犬耳の幼女悪魔。
「御主人の呼ぶところわっちあり! ヴィル参上ぬ!」
「よーし、よく来た。百獣の王のポーズ!」
「がーおーぬ!」
「「可愛いな」」
邪悪な存在じゃないことは理解していただけたようだ。
ぎゅっとしたろ。
「聖火教の幹部の皆さんだよ。挨拶しときなさい」
「よろしくお願いしますぬ!」
「こちらこそ」
ヴィルはいい子、よしよし。
ミスティさんの指示が飛ぶ。
「では手筈通りに。ワフロスはユーラシアさんを案内しなさい」
「はっ!」
ワッフーがお供か。
あたしと絡み多いしな。
「配置についてください」
「「「「おーっ!」」」」
さあ行くべえ。
ワッフーにレベルをプレゼントしてやれると最高だが、経験値の高い魔物が出そうにないんだよなあ。




