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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第754話:コメントしづらい

「サイナスさん、こんばんはー」


 軽く食事を取ったあと、寝る前恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「移民は無事到着した?」

『ああ。特に問題はない』

「地母神ユーラシア様の加護があったかな?」

『コメントしづらい』

「いや、カル帝国は汎神教の信者さんが多いって話だから、移民にもユーラシア信者が多いんじゃないかと」

『コメントしづらい』


 神々しいあたしの名前を冠している女神ユーラシアは、豊穣を司るという神格上、農民には信者が多いんじゃないかなと思っただけ。

 初回の移民は出国税で種や苗取り上げられたのは計算外だったけど、畑仕事のできる人達を優先してもらっているのだ。

 

『移民達はかなり精神的ダメージを食ってたな』

「まー見知らぬ土地で人生一からやり直しってのは、やっぱり不安だろうしねえ」


 おまけに財産没収で貨物船に詰め込まれて来たんだもんなあ。

 心も荒むわ。

 お肉たっぷり汁パーティーくらいじゃ補えんわ。

 

『皆がユーラシアのような神経を持っているわけじゃないからな』

「褒められたんだかディスられたんだかわからないんだけど」

『物事をいい方に考えられるのが君のいいところだ』


 誤魔化されたような気がする。


『明日から本格的に生活環境を整えていくことになるな』

「うーん。食料足んないよねえ?」

『白と灰の村中心に食料を供出すれば、飢え死にだけは防げるだろうが……。ほとんど保存食を持ってきていないのと、寒季なのが厳しいな』

「お宝ダイコンを有効に使ってね」

『収穫できるまでの二〇日間を何とか乗り切れれば』


 あのダイコンが収穫できるまでどうにか持たせれば一息吐ける。

 春蒔きの種が足んないのは厳しいが。


「明後日あたしん家に台車回してよ。お肉狩ってくる。移民用に例の保存用空箱も用意するから」

『本当か! 助かる!』


 サイナスさんが喜ぶ。

 各村族長達には話してくれてたんだろうが、実際に移民が到着してさらに厳しい現実が突きつけられたんだろうな。


『明るい話がないでもないんだ』

「デス爺の訓話とか?」

『頭の明るさじゃないよ!』


 アハハ、結構好き。


『ほとんど農家の次男三男で、耕作の知識については特に問題はなさそうだ。作物の種を所持している移民も多い』

「あっ、多いんだ? それは嬉しいな」

『もっとも量は多くないから、腹の足しになるかはわからんな』

「いや、この際ドーラで上手く育てられる作物がわかればいいよ」

『うむ』


 来月以降の移民は普通にものを持ってくるだろうしな。


「あたしは明日、聖火教の礼拝堂行ってくるんだ」

『魔物退治して居住区を広げるんだったか?』

「うん。突進熊がいるんだって。割とおいしい肉だから楽しみだなー」


 たくさんいるといいな。

 そーすりゃ保存食も増えるから。

 サイナスさんがしみじみ言う。


『目的変わってるぞと言いたいところだが、ユーラシアが大喜びでやってる時は周りも楽しいからな』

「おっ。物事の真理に気がつくとは、サイナスさんも族長として一人前になったね」


 アハハと笑い合う。


「今日魔境行ってまたクレソン取ってきたからさ。明日植えてくるよ」

『クレソンは案外大活躍しそうだな』

「本当に今年さえ何とかなれば、ドーラはバラ色だよ。開拓に携わってる人達の士気は大丈夫かな?」

『問題ないぞ。君が出してくれた資金もまだまだあるしな』

「あたしはドーラにお金引っ張ってくることを頑張りたいなー。西域にまだまだ知らないものがありそうなんだよね」


 輸出ネタを増やしたいのだ。

 サイナスさんが聞いてくる。


『君、今日は何してたんだ? 魔境行ってただけじゃないんだろう?』

「今日は老人介護だな」

『イシュトバーン氏か?』

「うん。黒の民のサフランいるじゃん? 酢の製造担当の」

『クロード族長の姪のドレスの子だな? 彼女も画集のモデルということか』

「ギルドで描いてもらったの』

『ギルドで? つまり口コミ効果も期待してということだろうから……』

「もー冒険者盛り上がる盛り上がる。イシュトバーンさん画伯って呼ばれてんの」


 インウェンとエルマの絵はカラーズ緩衝地帯で描いてもらってもいいな。

 ポスターも売れて嬉しいだろうし。


「その後行政府行ってきたんだ」

『イシュトバーン氏を連れてか?』

「うん。プリンスの部屋に絵を飾るって名目だったけど、昨日ドーラに移民として来た軍人さん二人を見てもらいに。イシュトバーンさん見る目あるからねえ」

『ふむ、その軍人というのは?』

「あたしが帝国本土で戦った人。向こうで干されそうだからって誘っといたの」

『ああ、本当にドーラに来たのか。もうか?』


 ハハッ、ビックリしてやがる。


「プリンスの下で働いてもらうことにしたんだけどね」

『イシュトバーン氏に見てもらうとはどういうことだ? 人格に問題があるとかではないんだろう?』

「んー意見を聞きたかったんだよ。軍人さん本人は納得してドーラへ来てるけど、家族は納得してるかわからんでしょ?」

『ああ、家族連れなのか。なるほど、心配の種だな』


 家族が篭絡されて切り崩されることもあるのだ。

 本来はドーラみたいな小国でそんなことを考えても仕方ないんだが、プリンスルキウスの事情が絡んでるからな。

 嫌なところで足引っ張られて、プリンスが活躍する数少ない場面を潰されちゃかなわん。

 プリンスを押し立てるドーラの国益に反する。


「新聞使って優秀な帝国の軍人来たるって記事書いてもらってさ。家族にもスポット当てれば大丈夫だろうってことになった。イシュトバーンさんが面倒みてくれるって」

『ならば問題なさそうだな』

「多分ね」

『しかし、えらく細かいところまで気を回してるじゃないか』

「たまたま気付いただけだよ。その御家族とは、あたしもどっかで絡みがある予感がするんだ」

『君のカン、大体当たるんだろ?』

「当たるねえ。でもどういう風に関係してくるのかまではわかんない。あたしの命を狙いに来るのか、それとも婿になるのか」

『え?』


 冗談だってばよ。

 あたしとの絡みはともかく、クリークさんマックスさんの御家族の風通しをよくしとくことは必要だろ。


「カラーズも開拓地も健闘を祈る。サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は聖火教本部礼拝堂だ。

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