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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第750話:芸術は……おゼゼだ!

「こんにちはー。精霊使いユーラシアがイシュトバーンさんを連れてきましたよ。プリンスルキウスに連絡してくれる?」

「はい、こちらへどうぞ」


 行政府受付のお姉さんに案内される。

 お姉さん達とも顔馴染みになったなあ。


「すぐ通されるんだな」

「あたしはVIPだからね」

「あんたのヒップはなかなか魅力的だぜ」

「いやん。でもあたしのお尻はあんまり大きくないと思うんだけど?」

「腰が細く締まってるからな。ラインが奇麗なんだぜ」

「そーかー。自分じゃよくわからないことだった」


 イシュトバーンさんのお付きの女性二人は澄ましているが、受付のお姉さんは怪訝な顔をしている。

 いや、スケベジジイ基準だとこれくらいはセクハラトークにならないから。

 二階の大使室へ。


「こんにちはー」

「ああ、いらっしゃい」


 プリンス達がにこやかに迎えてくれる。

 よしよし、もうクリークさんとマックスさんも早速働かせて……働いているね。


「こちら引退商人のイシュトバーンさんとそのお付きの女性ね。空飛ぶ軍艦の艦長だったクリーク少将と歩兵部隊で山に攻めてきたマックスさんだよ。あ、マックスさんの階級忘れちゃった」

「中佐だ。もう意味はないがな」


 引退商人と簡単な説明しただけなのに、クリークさんマックスさんはイシュトバーンさんを見下そうとしない。

 プリンスの態度で察したか、ひとかどの人物と見て取ったか。


「よろしく。あんた達も精霊使いに絡め取られたか。観念した方がいいぜ? こいつはやることなすこと大体笑えるからな」

「エンターテイナーって言ってよ」


 苦笑しながらイシュトバーンさんと二人が握手を交わす。

 雰囲気がいい感じで何より。


「今日はどうしたんだい?」

「前言ってた、この部屋に飾る絵を持ってきたんだよ」

「ほう!」


 プリンス前のめりですね?

 本当に芸術好きみたい。

 イシュトバーンさんの見立てだから間違いないよ。


「これは、エイトクの風景画ではないですか! 実に素晴らしい!」

「もう一枚、毛色の変わったところでルネの絵だ。エイトクを出入り口近くの壁に、ルネを応接スペースに飾るといいと思う」

「なるほど、そうですな!」


 プリンス大喜びだけど、軍人二人はあんまり興味なさそう。

 アドルフはちょっと絵がわかる人みたいだな。


「風景画の方はいいと思うけど、こっちのヘンテコな絵はよくわかんない」

「奇抜な発想のモチーフがエッジを利かせて表現されているのが素晴らしいんだ」

「すげえ、何言ってるのか全然意味が通じない」

「皇子殿下よ、そんな言い方じゃこいつには伝わらねえ。この絵買ったら一五〇万ゴールドはするんだぜ」

「メッチャ値打ちもんだね!」


 皆が笑うけど、軍人二人もそんなにするのかって顔だぞ?

 絵って高いな。

 クリークさんが聞いてくる。


「この絵は、どういう由来で手に入れられたんです?」

「精霊使いが持ってくるんだ。このクラスのが何十枚もある」

「何十枚もですか? 信じられませんね」

「『アトラスの冒険者』のクエストで手に入るんだよ。でもあたしこういうのわかんないから、価値のわかるイシュトバーンさんとこへ置いとくの」

「おい、オレんとこは倉庫扱いなのかよ?」

「真贋判定士付きの倉庫だよ」


 アハハと笑い合う。

 絵が高いってことは、クララやダンテが飾ってるキモ人形や邪神像も結構なお値段するんだろうなあ。

 マジでアートは価値がわからんな?


 ……アートで思い出したけど、ペペさんが絵を描いたり粘土細工作ったりしたら、結構なお値段になるんだろーか?

 生き方や思想がアートなだけじゃダメなんかな?


「いや、ありがとう。部屋が潤う」

「時々ローテーションで絵を替えに来るぜ」

「お願いします!」


 まあプリンスも喜んでくれたことだからいいや。

 この部屋で商談をするんでも、価値ある絵を飾って高級感を演出した方が、ドーラが舐められにくいだろうしな。


「ああ、『ウォームプレート』のパワーカードだが、簡単な紹介文を予の懇意にしている商人数人に渡してくれるよう頼んでおいた。これだ」


 何々? ドーラ発の燃料いらず消耗せずの安全な暖房器具あり、詳細は貿易正常化後にうんぬん。

 なるほど、商人さんも予備知識があると検討しやすいかもしれないな。

 プリンスもよくそんな時間があったもんだ。


「プリンスありがとう!」

「ザバンで購入した通常品の茶だが、かなり美味いぞ。輸出したら売れると思う」

「そーなの?」


 以前リリーは、帝国本土のものと遜色ないと言っていた。

 輸出したら輸送費の分、競争力が劣ると思ったんだけど。


「帝国本土のものと同レベルじゃ売れないかなーと考えてたよ」

「皇族が飲むクラスのものと同レベルなら最上等だぜ?」

「あっ、なるほど!」


 言われるまで気付かなかったな。

 リリーが皇族っぽくないのがいけないのだ。


「以前緑の民長老ズにザバンのお茶飲ませた時、輸入物よりずっと香り高いって言ってたんだよ。だから帝国は劣等品をドーラへ送りつけてるのかなーと思ってた」


 となると使えるカードが増えるな。


「おい、悪そうな顔になってきたじゃねえか」

「ん? 超すごいお茶と同時に投入すべきか、それともドーラ茶の希少価値を上げてから売るべきか考えてただけだよ。取れる手段が増えると楽しいね」

「新茶はまだ先なのだろう? ゆっくり考えてくれ」

「うん、わかった」


 とゆーかドーラの産品の販売戦略は、オルムスさんかパラキアスさんが考えることなんじゃないかな?

 あたしじゃ帝国の需要がわからんもん。 

 さて、今日の用はお終いだな。


「じゃ、あたし達帰るね」

「ああ。また来てくれ」

「クリークさんマックスさんアドルフもまたね」

「ロドルフだというのに。わざと言ってるだろ!」

「だからモブの名前覚えられないんだよ。あたしが名前覚えられるような、一人前の補佐官に早くなって。プリンスもあんたの成長を望んでいるんだぞ?」

「む、そうか?」


 まったくちょろいぜ。

 プリンスとクリークさんマックスさんが苦笑してるじゃないか。

 ……大使室も和やかではあるんだが、アドルフがちょっと委縮してるのかな?

 プリンスもクリークさんマックスさんも有能な人ではあるけど、ドーラのことはあんたが一番詳しいのだ。

 存在感を発揮して欲しいね、とゆー美少女なあたしの感想でした。

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