第748話:サフランと水晶ドクロ
――――――――――一四七日目。
フイィィーンシュパパパッ。
朝からイシュトバーンさん家にやって来た。
「おっはよー」
「来たか。待ってたぜ」
「だから何で外で待ってるのよ?」
寒いとゆーのに。
季節と自分の年齢を考えてよ。
画集の計画がイシュトバーンさんとともにポックリ逝ったらどーするつもりだ。
自覚してちょうだい。
「今日のモデルはどんな娘だ? あんたと同年代の黒の民サフランとしか聞いてねえ」
「そーだったっけ? 本人曰く、黒の民で最もファッショナブルかつ華やかな少女だそーな」
「ファッショナブル? 黒の民だろ?」
「サフランはフード着けてないんだ。いつも黒のドレス着てる。呪術師で、黒の民の酢の生産の責任者だよ」
「ほお」
あの特有なえっちな目になった。
イシュトバーンさんは奇麗か否かってことだけじゃなくて、何をしたか、何ができるかってことを重視している気がする。
「準備いいかな? 行こうか」
転移の玉を起動し、一旦帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
イシュトバーンさんを伴ってギルドに来た。
「やあ、いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん。イシュトバーンさん、おはようございます」
「おっはよー、ポロックさん」
「今日も精霊使いにこき使われるんだ。よろしくな」
「ひどいなー。喜んでこき使われるくせに」
「ハハハ、こき使うことに関しては否定しないんですね?」
笑い合い、ギルドの中へ。
「御主人!」
先行させていたヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
「サフランとピンクマンは来てるかな?」
「食堂にいるぬよ。もう皆集まってるぬ」
「集まってる?」
食堂へ。
あれ、人がずいぶん多い。
「おはよー」
「イシュトバーン画伯、こちらへ!」
「おう、すまねえな」
いつの間に画伯になったんだ?
この前アンセリの絵を描いてもらった時も画伯コールが起きてた気がするな。
「どゆこと?」
当然のようにいるダンを捕まえて聞いてみる。
「この前のアンセリの絵あったろ? あれ描いてたの見てたやつが、すごいものを見たって吹聴してるんだぜ。サクラさんの絵も既に描かれたってことが広まってるしな。今日サフランを描くっての知った連中が群がってきたんだ」
「あんたもなんでしょ?」
「こんなイベントを見逃したとあっちゃ、早耳のダンの名が廃るんだぜ」
ギルド内の評判は上々ってことだな。
画集が出たら買ってください。
飲み物を注文してもらってくる。
「サフラン、ピンクマン、よろしくー」
「はい!」「うむ」
「イシュトバーンさん、こういう小道具あるけど使う?」
宝箱クエストで手に入れた水晶ドクロを取り出す。
あれ? ピンクマンとサフランの食いつきようがすごい!
「これは素敵です!」
「うむ、頭蓋骨に対する素晴らしい愛情を感じる」
何だよ、頭蓋骨に対する愛情って。
いや、ピンクマンはわかってたけど、サフランまでドクロ好きだったのか。
やっぱ黒の民なんだなあ。
イシュトバーンさんがおもむろに言う。
「ミッチェルの水晶ドクロじゃねえか」
「有名な人が作ったものなんだ?」
「生涯頭蓋骨を彫り続けた芸術家の作品だぜ」
「どんな人だ。絶対にわかり合える気がしないわ」
「ま、売るとこ売ったら三〇万ゴールドってとこだな」
「「「三〇万ゴールド!」」」
へー、メッチャ価値のあるものなんだな。
でも外野騒ぐな。
こーゆーのは買い手を見つけるのが難しいから、そうそう売れるもんじゃないの。
「まあモデルの目の色が変わったから使わざるを得ないぜ」
「黒の民だからなー」
黒の民の中では異端だと思ってたサフランでさえだ。
黒の民のドクロ好きは謎!
「画伯が描き始めたぞ!」
座らせて足を組ませるポーズ。
水晶ドクロは膝の上で、下からあおり気味に描いている。
なるほど、サフランの足が綺麗なのを一発で見抜いたか。
長いドレスなのにな。
さすがイシュトバーンさん。
ピンクマンが話しかけてくる。
「昨日、移民がレイノス港に到着したんだろう?」
「来た。でもピンクマンは移民のこと気にしなくていい。サフランのことだけ心配してなよ」
「何故小生が……」
「この画集は帝国にも大々的に輸出するんだ。絵の出来栄えはドーラの命運を左右するんだぞ?」
「……」
ちょっと強引だったか。
多分新聞で読んだかなんかで昨日の騒動も知ったんだろうけど、特にピンクマンに考えてもらうようなことじゃない。
サフランに注目してくれればいいのだ。
ダンがニヤニヤしている。
「まったく、あんたの説得は悪魔的だな」
「悪魔的だぬ!」
ヴィルが言うな。
ある程度絵が描けてくると、ギャラリーがざわめきだす。
「これは……」
「お、オカルティックエロスだな?」
やじ馬の一人が言う。
うむ、神秘的なえっちさだ。
足首の細さから目が離せない。
これはこれで人気出そう。
「この技能だけは尊敬せざるを得ないぜ」
「まあねえ」
クソジジイかつスケベジジイの分際で、何でこんな不思議に魅力的な絵が描けるのか?
クソジジイでスケベジジイだからだな。
絵も終盤に差し掛かっておかしな雰囲気になってきたので、ヴィルを連れてその場を離れる。
買い取り屋さんへ。
「お願いしまーす」
「お願いするぬ!」
箱一杯の魔法の葉他を換金し、ヴィルをおっぱいさんに預けて戻る。
「よし、いいだろう。モデルありがとうよ」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
「「「「うおおおおおおお!」」」」
「「「「画伯! 画伯! 画伯!」」」」
画伯コールだよ。
ロリ専のはずのピンクマンまで絵に夢中だし。
どうなってんの?
「サフランありがとう。お礼だよ、もらっといて」
透輝珠を渡す。
「えっ? ありがとうございます」
「ピンクマンもかなり興味持ってるよ。良かったねえ」
「はい!」
サフランも喜んでるし、めでたしめでたし。
ダンが聞いてくる。
「あんたこれからどうするんだ?」
「イシュトバーンさんと行政府行ってくるんだよ」
「移民関係か?」
「それも目的の一つだけど、プリンスの部屋に絵を飾ってくるの。行政府の大使室は殺風景なんだよね」
「クソジジイの絵は大使室に向かねえんじゃねえか?」
「イシュトバーンさんのえっちな絵じゃないってば」
あ、でも裸婦画もあったっけ?
「じゃ、あたしら帰るね」
「おう、またな」
ヴィルを通常任務に戻し、転移の玉を起動し帰宅する。




