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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第747話:新しいドーラの夜明け

「美少女精霊使いユーラシア参上!」

「ヴィル参上だぬ!」

「随分テンションが高いね」


 いつも通りだと思うがな?

 レイノス港から帰ったあと、灰の民の村のサイナスさん家にやって来た。


「移民はどうだった?」

「結構なトラブルがあったね」

「やっぱり」


 おいこら、あたしが犯人みたいな目で見るな。

 帝国政府のせいだわ。

 あたしは無関係だわ。


「御主人は無関係だぬよ?」

「そうそうって、ヴィルは何であたしの考えてることがわかったのかな?」

「何となくだぬ」


 人の感情を糧とする悪魔はそーゆーことがあるのかな?


「今はまだ、帝国とドーラが仲悪かった時のバカ高い出国税のままなんだそーな。移民が持ち物取り上げられて、ほとんど何も持たずに来ちゃった」

「えっ?」

「種とか持ってきてもらうはずだったのになー。予定狂っちゃったよ」

「……えらいことになったな。より一層厳しいぞ」

「ここで助っ人でーす。お宝ダイコンの種!」

「お宝ダイコン?」


 うん、わかるまい。


「四季蒔きで収穫まで二〇日間、その後花咲いて二ヶ月で種になるって」

「ほう、二〇日間で収穫できるのか。ありがたいな。まさにお宝」

「ただし土の栄養分をかなり必要とするらしいんだ。肥料は注意ね」

「わかった」


 ごそっと種を分ける。

 カラーズと開拓地でこのダイコンが広まってくれれば、結構な戦力になるだろ。

 灰の民の村で栽培法を確立してちょうだい。


「明日には移民がこっちに来るよ」

「ああ。いよいよだな」

「いよいよ新しいドーラの夜明けだね」

「え? ユーラシアみたいに能天気なことを考えていたわけじゃないんだが」

「能天気とは何事」

「何事だぬ!」


 アハハと笑い合う。

 移民のことはよろしく頼むね。


「さて、帰ろ。塔の村にもダイコンの種置いてこないと」

「御苦労だね」

「今日は夜のヴィル通信はないよ」

「了解」


 転移の玉を起動して帰宅する。

          ◇


『おう精霊使い、顛末を聞かせろ』


 全てが終わってから、イシュトバーンさんにヴィルで連絡を入れる。

 お肉たっぷり汁パーティー用のコブタマンを狩って運ぶ途中、イシュトバーンさん家に寄ったので、あとで話聞かせろとせがまれていたのだ。

 もー忙しかったんだぞ?


「ドーラ独立前って、移民ほとんどなかったし貿易細ってたじゃん? 帝国の法律が厳しくなってたみたいで、今もまだ出国税がメチャクチャ高いんだって。移民達は貨物用の船に押し込められて、着の身着のままドーラ来ちゃったの」

『天幕や保存食も持たずにか?』

「天幕はなかった。保存食は最低限だよ。目ぼしいものは皆没収。マジ困るんだけど」


 天幕は多分カラーズにある分を貸せば足りるんじゃないかな。

 建築ブームの予感。


「帝国の法整備が遅れてるってことなんだ」

『おかしいじゃねえか。どうして移民は急いで来たんだ? 法律変われば普通に渡海できたんだろう?』

「詳しいことはまだ聞いてないからわかんないけど」


 変な話だ。

 でも移民は納得して来たんだろうから、誰かに聞けばわかるだろ。


『で? あんたが放っておくわけねえだろう?』

「パーティーした」

『はん?』


 どうせあのえっちな目をしているに違いない。


「聖火教の炊き出し用のでっかい釜借りてさ。あたしの狩ってきたお肉を煮たんだよ。大評判でした」

『ハハッ。途中でこっちへ寄ったんだな? 肉なんて滅多に食べられねえだろうから、皆喜んでたろ?』

「うん。今までもお肉は大正義だと思ってたけど、絶対正義かなと思い始めた」


 イシュトバーンさんの声が若干低くなる。


『……法整備が遅れてるってのも、悪巧みなわけだな?』

「メキスさんやプリンスルキウスはそう見てる」


 誰の悪巧みかって?

 第二皇子に決まってるだろ。

 移民の不満を高めといて、責任を全部プリンスに押しつける算段だったのではないかってことだ。

 本当だとするとすげえ性質が悪いんだけど?


『噂をバラ撒いてやれよ。いや、パラキアスとオリオンがやるか』

「え?」

『ドーラへ渡った移民達が、持ち物全部取り上げられて放り出された。第二皇子ドミティウス主席執政官の施策に大いなる不満を持ってるってな』

「なるほどー。パラキアスさんがやりそう」


 政治的手腕を疑問視されるのが第二皇子にとって最も痛いだろう。

 パラキアスさんは悪いやつなので、的確に弱点を攻めるに違いない。


「でも収穫もあったんだよ。あたしが帝国で会った二人の有能な軍人さんが、海渡って来てくれたんだ」

『ほう? オレにも会わせろ』

「プリンスに仕えてもらうことになった。大使室行く時にでも見てくるといいよ」

『あんたこっち来れねえか? 飾る絵持っていくことを口実にしようぜ』

「いいね。じゃ明日、サフランの絵描いたら行こうか?」

『おう』


 イシュトバーンさんは人を見る目あるからな。

 意見は参考になる。


「言うの忘れてたけど、エルフの族長を絵描いてもらう時に、イシュトバーンさん家に連れていくつもりだったんだよ。でも海の王国行くことになっちゃった」

『はん? どういうことだ?』

「海の女王はエルフの族長と元々面識があるんだよ。たまには会いたいんじゃないかな。で、エルフの族長はおいしいお肉を食べたい人なの」

『ほお?』

「だからイシュトバーンさんも一緒に海の王国にお邪魔しようよ。海底で絵描いてもらっていい?」

『おおおお、海底の王国へ行けるのか! 長生きはするもんだぜ!』


 あれ、大喜びですね?


「海の王国行きたかったの?」

『伝手がないと行ける場所じゃねえしな。海の女王ニューディブラも気難しい性格なんだろ?』

「気難しくないよ。伝手がないと行けないかもしれないけど、女王は商売に前向きだし、亜人とは普通に交易してるみたい。海底には商店街があって、買い物するのは自由だよ」


 考えてみりゃ領域内を通過することさえ許さないってのは、傍から意固地な人に思われても仕方ないな。

 海には海の事情があるんだが。

 海の女王は情の深い、いい人だよ。


『海の王国へ行くのはいつになるんだ?』

「日は決まってないんだ。楽しみにしててよ」

『おう!』

「じゃ、明日はギルドね。朝迎えに行くから」

『待ってるぜ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 カラーズへはさっき行ってきたから、今日はサイナスさんとの通信はなしだ。

 夕御飯食べたら寝るべし。

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