第743話:お肉たっぷり汁パーティーだ!
パラキアスさんから状況を説明され、ミスティさんの顔が曇る。
だよなあ。
希望を持って旅立つべき移民が、財産没収の上異国に放り出されるっておかしいだろ。
つっても法律を盾にガタガタ言われると、他国のことだから文句も言えないのか。
始末をこっちに押しつけるのは勘弁してもらいたいなー。
「困りましたね」
「マジで困るなー」
「帝国政府には予の方から厳重に抗議しておくが、当座の役には……」
「船内は暴動寸前だそうだ」
「あ、よかった」
「「「「「「「「何が!」」」」」」」」
あたしのよかった発言に一斉にツッコミが入る。
何がと言われても。
「暴動起こせるほど移民に元気があることがだよ。元気があれば何でもできる。身体弱って何にもできないんだと、手の打ちようがないもん」
「ふうん……」
「ハハッ、ユーラシアらしい独特の視点だの」
「最悪ではないということじゃな?」
「うん」
納得していただけましたか?
あたしを常識のない子みたいに見るのはやめておくれ。
パラキアスさんが言う。
「ユーラシアは打開する策があると見ているんだな?」
「あるある」
「どうする?」
「パーティーしよう!」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
再びの総ツッコミ、なかなか気分がいい。
「パーティーとは?」
「お腹一杯になると、大概のことはどうでもよくなるんだって」
「移民に何かを食わせて気を逸らすということか」
「そー言っちゃうと誤魔化すみたいだけど、美味いもん食べさせてもらって不満こぼす人はいないと思うぞ?」
これは宇宙の真理。
全員が頷く。
「オルムスさん、港の広場の使用許可もらうよ。精霊連れて飛ぶけどごめんね」
「えっ? あ、ああ」
「ミスティさん、聖火教の炊き出し用の大釜貸してよ。港の広場に用意してくれる?」
「わかりましたわ」
「アドルフ、煮ておいしそうな野菜と塩、あと薪、これで買えるだけ買ってきて」
魔宝玉をいくつか渡す。
運ぶの大変かもしれないけど、レイノス人のアドルフなら友達くらいいるだろ。
「わかった。しかし俺の名はロドルフだ!」
「じっちゃん、メキスさんとその部下何人か連れてきて。帝国の事情知ってる人が手伝い要員として欲しい」
「うむ、任せよ」
「パラキアスさん、プリンスとリリー連れて少しずつ移民を下船させて広場に誘導してくれる? 少々気が立ってたって、プリンスの固有能力『威厳』があれば抑えられるから」
「了解だ!」
「あたしお肉狩ってくる! 二〇分で戻るね」
転移の玉を起動して帰宅する。
イベントだ!
お肉たっぷり汁パーティーだ!
◇
「ドーラ名物! コブタマンの解体ショーだよ!」
「おお、すげえ!」
クララが瞬く間にコブタマンを解体していく神技の前に、目を丸くしている移民達。
ビックリするのもわかるわ。
精霊を見るのも初めてだろうし、見かけ幼女があっという間に骨とお肉に切り分けていくのだから。
帝国は魔物少ないっていうから、ひょっとすると魔物を見るのも初めての人がいるかもしれないな。
いずれにしてもクララの神技は一見の価値ありなのだ。
「すごくおいしいお肉だよ。たっぷりあるからね。食器用意して釜の前に並んでて」
「な、なあ。あの子は亜人なのかい?」
「クララは精霊だよ。でもごめんね。精霊は人見知り激しいから喋んない」
とっくに湯も沸いている。
うちのダンテ始め火魔法使える面々が協力して特急で煮立たせたのだ。
いい匂いがしてきた。
骨からいいダシも出た頃なんじゃないかな。
大量のお肉と野菜を投入し、灰汁をすくって塩で味付け。
「できたぞー!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」
期せずして起こる拍手。
「お、おいしい!」
「今狩ってきたばかりの新鮮な獲物だからね。臭みがないでしょ」
「こんなにたっぷりの肉食べたの初めてだよ!」
「たくさんあるぞー! 余ったってしょうがないんだ。遠慮せずにどんどん食べてって」
うんうん、移民の皆さんに喜んでもらったよ。
よかったよかった。
ドーラは田舎ではあるけどいいところだからね。
帝国の税制なんかのせいで、こっちにとばっちりが来てはかなわんわ。
思ったより混乱しなかったから、メキスさん達の応援いらなかったか。
あれ、プリンスとオルムスさんパラキアスさんメキスさんと移民の家族?
何してるんだ?
「ユーラシアも気になったか?」
リリーもチラチラ見とるわ。
「なるねえ」
「当然絡みに行くのだろ?」
「行くねえ」
プリンスかメキスさんの知人かな?
こっちはミスティさんとデス爺に任せておけばよさそうなので、うちの子達も連れてそっちへ顔を出す。
と、突然叫んだ移民の男。
「あっ、山の四天王!」
「あたしが『美少女戦士』こと、精霊使いユーラシアでーす」
飛空艇の艦長さんとテンケン山岳地帯に攻めてきた歩兵の隊長さんが、家族を連れて海を渡ってきたのだ。
やったぜ、計算通りだ!
パラキアスさんが笑う。
「ハハハ、『美少女戦士』の予言がどうこう言ってるぞ? 説明してくれ」
「例の空飛ぶ軍艦の艦長さんと、その後山岳地帯にこもってた時に攻めてきた部隊の隊長さんだよ。二人とも優秀だから、帝国で干されちゃうならドーラにおいでって誘っといたの」
「あれは勧誘だったのか? 未来は海を越えたところにあると、えらく漠然としたことを言われたと記憶しているのだが」
「俺は艦長さんと行動をともにするとリリー皇女に会う機会がある、と言われた」
「両方当たったじゃん。さすがあたし」
アハハと皆で笑う。
あんなアバウトな言い方だったのに、マジでドーラに渡ってきたぞ?
帝国で相当風当たりキツかったんかな?
優秀な人材はドーラに来るといいよ。
「リリーはこの二人知ってるんでしょ?」
「クリーク少将とマックス中佐であろう? もちろん知っているぞ」
喜ばしげに背筋を伸ばす二人。
あれ、少将はともかく、中佐なんてかなり数多いんじゃないの?
よく名前まで覚えてたな。
リリーすげえ。
あたしあれだけ喋ってて隊長の名前知らなかったんだけど?
「ユーラシアが弄んだのか?」
「その言い方はあたしが悪女みたいじゃないか。誤解があるから訂正してよ」
「いい女だと言っておるのだぞ?」
「何だそーか」
リリーとの掛け合いを見ていたクリークさんが言う。




