第74話:ヒントを辿れ!
「チェスナットがシーズンだったね」
「おう、クリ以外はまだ時期が早えな」
アンセリを見送ってから、留守番のアトムとダンテの話を聞く。
二人はクリをゴッソリ拾ってきてくれていた。
嬉しいなあ。
甘味は貴重だもんな。
「うん、ありがとう。二、三日寝かせたら茹でて食べよう」
レイノスでの出来事をアトムとダンテに話し、今後どうするかを話し合う。
主に謎の『大掃除』についてなのだが。
「……とゆーわけで、レイノス西門の隊長さんの言うことからすると、七日以内に何かありそう」
「焦りますねえ」
「クララが言うと全然焦って聞こえないんだよな」
「セブンデイズ……」
「準備ったってなあ。レベル上げしかねーんじゃねえか?」
「とにかくあたし達のやれることをやろうよ。明日は本のダンジョン、明後日はバエちゃんとこかな」
「ユー様。ギルドに行かないことで、必要な情報を得られないかもしれないリスクがあります。それはよろしいですか?」
さすがクララ。
あたしも考えないではないポイントなんだが。
「今の段階ではあたし達の持ってる情報のが多いでしょ? それ以上のことはギリギリになってからでも遅くないと思う」
アトムが発言する。
「本のクエストを完了して、次のクエストが来ないとは決まっちゃいねえ。姐御、やはり本のクエストが優先ですぜ」
「うん。あのダンジョン、知り得た限りでは特に新しいパワーカードは必要なさそう。だけど新しい素材も手に入れたから、どんなカードと交換できるかは確認しといてもいいと思う」
全員頷く。
「イシンバエワさんが何か御存じかもしれません」
「バエちゃんは仕組んでる側だと思うんだよな。聞くのは危険な気がする」
「ユー様なら聞き出せるんじゃないですか?」
「そーゆー視点か。尻尾出したら突っ込んでみようか」
ん? ダンテ何?
「あの肥溜めガール……」
「ほこら守りの村のマーシャ?」
『肥溜めガール』って相当なパワーワードだなおい。
さすがオレンジ髪だけのことはある。
関係ないけど。
「占い師って言ってたね。インビジブルなものが見えるかもしれないね」
「……なるほど」
あり得る、ダンテやるじゃないか。
ほこら守りの村へ行くべし。
御神体クエストのクリアから三日。
マーシャの穢れ(物理)が抜けるには、まだちょっと早いかな?
「よし、明日謎の本のクエストが片付いたら、明後日はほこら守りの村とバエちゃんとこだね。あとは展開次第。今日はここまで」
◇
――――――――――二二日目。
早々に家の仕事を終え、本のダンジョンへ行く。
すぐにレベルが上がり、あたしとクララとアトムは一四、ダンテは一三となった。
今回は誰もスキル覚えなかったな。
レベルが低い内はよく習得するものなので、ちょっと損した感じ。
あたし達が成長した証拠であるのかも知れないが。
「クララ、この辺でコブタは処理の限界かな?」
「そうですね」
「よーし、肉狩りはここまでにして、次のフロア行くよっ!」
「「「了解!」」」」
各種オブジェクトが散在するフロアで、赤い本『トリセツ』を開く。
正しく辿れ。
左上の本から。
「本ってあれだよねえ?」
左手奥にある黒く分厚い本を指差す。
「マジックパワーを感じるね」
「またいきなりどこかへ転送されちゃかなわねえが」
まあでも開いてみるしかなさそうだなあ。
すると触っただけで本が語りだした。
ほう、こういう仕掛けか。
本はね、多くの知識が含まれているよ。
本はね、紙でできているよ。
じゃんけんではね、紙は……に勝てるんだ。
「答えは石、ですよねえ」
「謎の答えを追って、オブジェクトを順に触っていくってことかな?」
散らばるオブジェクトの中に、石というか岩がある。
次はあれらしいな。
触るとやはり石が語りだす。
大きい大きい丸い石。
転がして、下に落とそう。
「『下に落とす』、がヒントだとすると、あの階段かな?」
「他に答えらしいものがねえでやす」
階段もどうやらオブジェクト扱いのようだ。
触ると次のヒントを聞くことができた。
まだまだ下には降りられない。
のんびり座って過ごそうよ。
「ノーヒントね?」
「いや、『座って』がヒントでしょう。あの青い椅子を」
腰が痛くなってきたよ。
ロボットくんにマッサージ。
「これ、間違えたらどうなるんでやすかねえ?」
「こらアトム、変なフラグ立てない!」
まさかチャレンジは一回限りなんてことはないだろ。
ロボット、つまりカラクリ人形にタッチ。
私はロボットだけれども。
立ち入り禁止の場所がある。
「立ち入り禁止?」
入っちゃいけない系のオブジェクトなんかあったかな?
ここでカンの出番なのか?
「今までのオブジェクトアゲインてこともあり得るね」
「確かに。困っちゃうなあ」
「あ、ユー様、このロープ『立ち入り禁止』の札がついてます」
解決ズバッと。
ここは危ない、立ち入り禁止。
それとも剣で切り裂くかい?
「これは簡単、この剣だね」
我を抜くのは勇者のみ。
クマの勇者は今いずこ。
「おーおー、伝説の剣みたいなこと言いだしたぞ?」
「誰だよクマの勇者」
これはわかりやすいな。
クマのぬいぐるみに触る。
クマと言えどもぬいぐるみ。
火にはとっても弱いんだ。
「これどっちだろうね?」
火のついたキャンドルと消火器が残ってるのだ。
「ストレートにファイアキャンドルだと思うね」
よし、キャンドルに。
荒々しくロウソクを灯せ。
消せないほどの勢いになれば、奴の出番はもうすぐだ。
「熱っ!」
こら、『荒々しく』『消せないほどの勢い』を後出しすんな。
おかげで火傷したじゃないか。
クララが『ヒール』をかけてくれた。
「消火器だわな、間違いねえ」
うんうん、消火器に触る。
消火剤の泡に埋もれた生首。
道は彼が語るだろう。
生首て。
確かに頭像が残ってるけれども。
「『道は彼が語る』ということは、これで最後でしょうか?」
「でも生首喋るのかー。気分的にやだなー」
生首にデコピン。
コングラッチュレーション!
緑よ、本となれ!
最後のオブジェクトだった植木が消え、机とその上に乗った本が出現した。
「コングラッチュレーションだ! やったね!」
「魔力を感じる青い本。転送本の可能性大ですぜ」
「うん。でももうちょっと余韻に浸らせてくれてもバチ当たんないぞ?」
本を開く。
やはり転送本か。
魔力の奔流が身体を包む。




