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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第738話:天国と地獄の二択

 フイィィーンシュパパパッ。


「ちょっと考えたんだけどさ」

「何でやしょう?」

「宝の地図を手に入れるっていうの、冒険物の定番じゃん? あたしら宝の地図にお目にかかったことないなーと思って」

「ないですねえ」

「宝箱から宝の地図が出てくるってあり得ると思う?」

「えっ? イッツ、ベリーストレンジね?」

「やっぱ変かな?」


 簡単に開けられる宝箱ばかりだと、苦労して辿り着いた宝箱というものにも憧れるのだ。

 贅沢だと言われりゃその通りなのだが。

 何はともあれ、本日もザクザク宝箱のノルマをこなしに来ている。


「考えてみれば、宝箱を開けに来るのがノルマっておかしいな?」

「別に来なくてもいいんでやすぜ」

「宝箱を疎かにするなんて、美少女冒険者として許されないし」

「キュートガール関係ないね」

「宝箱を疎かにするなんて、超絶美少女冒険者として許されないし」

「押しますねえ」


 アハハと笑い合う。

 うちの子達は皆いい子だ。


「でもあんた達だって今日はザクザク宝箱クエストお休みにしようって言ったら、絶対に許されないと思うでしょ?」

「許されないですぜ」

「代わりに行わなければならないことの優先順位や期待値で、仕方ないケースはあり得るでしょうけど……」

「アブソリュートリー、トレジャーボックスゲットね」

「おおう、ダンテがメッチャやる気だな」


 とりあえず現在のあたし達にザクザク宝箱クエストは必須とゆーことだ。


「で、さっきの宝の地図についてはどう思う?」

「面倒ですぜ。でも冒険らしくて嫌いじゃないでやす」

「苦労した分の見返りがあればいいですね」

「ロマンなフィーリングね」


 うちの子達の考え方も違いがあって面白いな。

 あたしも何か簡単に手に入るお宝の方がいいような気がしてきた。

 イコールザクザク宝箱クエストイズベスト。


 さて、どうだ?

 本日もまた一六個の宝箱が整然と並んでいるが?


「んー? これはまた変なことしてるね。いや、楽しませてくれてるのかな?」

「ワッツ?」

「開けていい宝箱が一個しかないぞ? あと皆当たりだ」

「「「えっ?」」」


 クララが声を上げる。


「あっ、立札に記載が追加されています!」


 附則:稀鏡の月二三日の『ザクザク宝箱! 一六の魅惑!』イベントについて。

 当たりの宝箱は一つだけです。

 当たりの宝箱を開けると、残りの宝箱の内、どれか一つが当たりとなります。

 当たりが連続すると、全ての宝箱を開けることができます。


「ふーん。つまり今日は全部の宝箱が開けられるのか。ストレスが少ないね」


 開けない宝箱を一つ残していくというのは、なかなか心残りなものなのだ。

 途中で間違った宝箱開けるかも?

 そんなことあるわけないだろ。

 ユーラシアさんだぞ?


「あっ、主催者の意図がわかった!」

「ワッツ?」

「あんた達が五つずつ開けるでしょ? 当然最後の一個はあたしが開ける展開になるでしょ? ラストに魔法の葉をたっぷり仕掛けとく作戦だ!」

「まさか……ありそうですね」


 うちの子達もそうかもって顔しだした。

 ザクザク宝箱イベントの主催者は勘所をわかってるよなー。


「今日はお約束仕立てにした主催者の勝ちだな。あたしがお約束から逃げる女と思われるのも癪だから、最後の一個はあたしが開けるよ」

「姐御のその辺の感覚がわからねえ」

「超絶美少女には避けて通れない戦いってのがあるんだよ。さて、精神を清める人っ!」

「「「はい!」」」

「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。


 うむ、これだこれ。

 心に染み入る銅鑼の音。


「よーし、じゃあ順番に開けていくよ。最初は前列右隅!」


 クララがよいしょと箱の蓋を持ち上げる。


「……二ゴールドです」

「あれ、随分しょぼいな?」


 今までこんなこと一度もなかったけどな。

 魔法の葉一枚だって売値一〇ゴールドくらいはするのに。

 でも主催者の趣向が見えるような?


「エクスプロージョンするね?」

「ダンテは過激だね。吹っ飛ばすのにも魅力を感じるけど、宝箱全部開けてからでも遅くないかな。あたし達は紳士淑女だから、主催者に執行猶予を与えてやろうじゃないか。次は奥から二列目の右端」


 主催者は勘所をわかってると褒めたところだ。

 期待に応えてくれるなら、何かツボを押さえたエンタメを用意してあるはず。


「四ゴールドだぜ」

「最後列の左から二番目」

「キャッシュ八ゴールドね」


 ほう?


「金額が倍々に増えていくのかな?」

「それはそれでワクワクしますね。最後にはかなりの金額になりそうです」


 アトムとダンテはよくわかってないようだ。


「かなりの金額になりやすかね?」

「レートが低過ぎるね?」

「とりあえず開けていこうじゃないの。文句は最後でいい」


 次々と宝箱をオープンしていく。


「現金一六ゴールドです!」

「三二ゴールドだぜ」

「キャッシュ六四ゴールドね」

「一二八ゴールドです!」

「二五六ゴールドだぜ!」

「五一二ゴールドね!」


 やはり今日は現金倍々デーか。

 結構な金額になってきた。


「一〇二四ゴールドです!」

「二〇四八ゴールドだぜ!」

「四〇九六ゴールドね!」

「八一九二ゴールドです!」

「一六三八四ゴールドだぜ!」

「三二七六八ゴールドね!」


 おおおおおおお?

 盛り上げてくれるじゃないか。


「今日の主催者はキレがあるね。最後に来て六五五三六ゴールドと魔法の葉の二択だよ。と見せかけてそれ以外の意外なアイテムだったりとか?」

「ドキドキしますねえ」

「ボス、ラストワンオープンね!」

「よーし、開けちゃうぞー。でやっ!」


 心の中でドラムロール。

 重い蓋を退けるとそこには……。


「ぎゃーやられたっ!」


 箱一杯の魔法の葉を見て笑い転げるうちの子達。

 やっぱ魔法の葉かー。

 でも六五五三六ゴールドの可能性を見せておいて、絶望に落とし込む仕掛けは実にニクい。


「アハハハ。気持ちよくやられたねえ。清々しいよ。さて、今日はたくさんの現金と、見るのも嫌なほどの魔法の葉を手に入れることができました! 主催者に感謝!」


 うちの子達が敬礼している。

 すごく楽しかった。

 極上のエンターテインメントを経験できたので、魔法の葉を引かされても素直に感謝できる。


「最後にガンガンする人っ!」

「「「はい!」」」


 皆で調子よく銅鑼を鳴らす。

 今日は気分がいいのでガンガンも捗るなあ。

 十分に満足したところで、転移の玉を起動し帰宅した。

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