第734話:折れた世界樹を切り出すお仕事
――――――――――一四五日目。
目が痛くなるくらいの快晴だ。
寒いけど、却って眼が冴えていい感じ。
今日はペペさんが折っちゃった世界樹を回収してきて、移民のための木材とする日だ。
「おーメッチャいい天気! 切断日和!」
「何でやすか? それ」
「切断に適した日!」
「言い換えたって一緒ですから」
ハハッ、ダンテはいつものように肩を竦めてふーって顔をしている。
安定のうちの子達だなあ。
ちなみにヴィルは朝までおねんねしていた。
疲れていたとゆーわけではなくて、周りで寝てる人がいるとその眠気を吸っちゃうからとゆーことみたい。
悪魔って面白い。
「灰の民の村行ってくるね。デス爺連れてすぐ戻ってくる」
「「「了解!」」」
『遊歩』で飛んでいく。
歩くのも風情があって好きなのだが、今日は時間も大事だからなー。
「おっはよー、ありゃ、サイナスさんいないや」
じゃ灰の民のショップか、それとも転移石碑のところかな?
緩衝地帯へ急ぐ。
「お待たせ!」
デス爺の頭が光り輝いてると思ったら、その他カラーズ各村の族長あるいは族長代理が既に集まっていた。
最年長であろう白の民ルカ族長が話しかけてくる。
「精霊使い殿。本日はよろしくお頼み申す」
「任せてちょうだい」
「では我々はこの転移石碑で飛んだ先、クー川近くのところで待機しておりますでな」
「りょーかいでーす! 行ってきまーす」
お弁当を購入、何か言いたげなデス爺に気付かないフリをして転移の玉を起動し帰宅する。
どうせ言葉遣いがなってないとか、あたしの可憐さ美しさに何の支障もない部分でのお小言だろう。
聞くだけ時間のムダだってばよ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、おはよう。チャーミングなユーラシアさん。そちらは?」
「ポロックさんは面識なかったか。カラーズ灰の民の元族長で、今は街道の西の果て塔の村の村長のデス爺だよ。こちらはドリフターズギルドの総合受付のポロックさん」
「御高名はかねがね伺っています」
「うむ、こちらこそよろしく」
握手。
ポロックさんが言う。
「今日は、世界樹を運んで製材するんだとか?」
「そうなの。移民に必要な木材が足んないからどうにかなんないかって相談されたんだ。ペペさんが折っちゃった世界樹が今になって役に立つとはビックリ」
アハハと笑い合う。
「魔境世界樹エリアはもう問題ないのじゃな?」
「と、思う。ペペさんは何も言ってなかったよ」
世界樹エリアは人形系パラダイスのいい思い出しかない。
今どうなってるかも楽しみだなー。
ギルド内部、お店ゾーンへ。
「おっはよー。あれ? ピンクマンとサフラン?」
ヴィルをなでなでしているダンが答える。
「カール達も世界樹の切り出しを手伝ってくれるそうだぜ」
「あっ、助かる助かる!」
そーいや移民の関係で輸送隊が一回休みって言ってたか。
酢や醤油も生産調整して、調味料ラボも暇なのかな?
だからどこか行きましょうってことになったと見たニヤニヤ。
「こちらがじっちゃんだな?」
「転移術の権威、塔の村の村長デス爺ね。黒の民のピンクマンとサフラン、ギルドのオチ担当のダンだよ」
「「「よろしくお願いします」」」
「こちらこそ」
えーとデス爺とペペさん、ピンクマン、サフラン、ダン、うちのパーティーとヴィル、合わせて一〇人か。
フレンド転移には問題ないな。
さて、ペペさんを起こして世界樹エリア、ペペさんの家へ。
◇
「ふわー。もうこんなに大きくなってるのか。せかいじゅのちからってすげー!」
元世界樹のポッキリ地点に来た。
以前挿し木した枝が既に木になってるんだが?
メッチャ成長が早い。
「問題ないの。おそらくはこの内一本が生き残って、新しき世界樹となる」
デス爺の言葉にクララがコクコク頷く。
ふむ、再びペペさんがロマン砲を撃ち込まない限り平気と。
「ペペさん聞いた? 間違ってもロマン砲を撃ち込んじゃダメだよ。木がまだ小さいから全部吹き飛んじゃう」
「やだあ、ユーラシアちゃんったら!」
「おい。楽しみが足りないからって、フラグ立てるのはやめろ」
フラグじゃないわ。
あたしが余計なこと言ったみたいな雰囲気になってるのは納得いかんわ。
「でも魔物のレベルが低くない? 見たところドラゴン一匹もいないじゃん」
「最近そうなのよ。せいぜいワイバーンクラスまでくらいしか出ないの」
「ふーん?」
ピンクマンが言う。
「おそらくは挿し木したものがそれぞれ活発に魔力を吸収しているのだ。生存競争を勝ち抜くために」
「うむ、ドラゴンが生育できるほど、魔力濃度が高くならないのじゃろうの」
「じゃあ世界樹の苗を少し間引いた方がいいくらいかな?」
「いや、不自然に手を加えることによって魔力濃度の急変を招くかもしれない。放っておいた方がいいと思う」
ピンクマンの意見にデス爺とクララが同意し、ペペさんが感心し、サフランがポーッとし、ダンがニヤニヤしている。
あたしもニヤニヤだ。
ピンクマンの格好いいところが見られて、サフランよかったね。
「それぞれの立場が分かって面白いとか思ってるんだろ?」
「もうこれだけで来た価値はあったなーって」
ダンはこういう人情の機微には敏感だ。
「先っぽの方から切っていこうか」
「幹の太いところは切るのが大変だぜ」
「そーだね。クララ、お願い」
「はい。フライ!」
皆を連れてびゅーんと東方向へ飛ぶ。
「この辺でいいか」
「はい」
大きく枝が張り出す手前辺りで着地する。
「ダンテが切断、クララが『フライ』でまとめて、じっちゃんが転移で運んで。『ウインドカッター』で切れそうな部分はクララが切っちゃっていいから」
「「了解!」」「引き受けたぞ」
ダンテにパワーカード『ウインドエッセンス』を、そしてデス爺クララダンテの三人にマジックウォーターを渡す。
「ペペさんは『遊歩』のカード持ってるんだっけ?」
「持ってる持ってる! 練習したから飛べるようになったの!」
「じゃあ魔物に奇襲されないように上から監視しててくれる? ヴィルもね」
「わかったわ」「わかったぬ!」
「ペペさんは間違ってもロマン砲撃っちゃダメだよ。ヤバそーな魔物出たらすぐ教えてね」
「はあい」
「これはフリじゃないからね?」
こんだけ言っときゃ大丈夫だろ。
正直懸念は予定外の場面でぶっ放されるロマン砲だけなのだ。




