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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第728話:大雑把な計画

「サイナスさーん、こんばんはー」


 寝る前恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。雨降って来ちゃったな』

「うん、でもうちの子によると、明日の午後にはやむみたい」

『そうか。じゃあ支障ないかな。今日デスさんがカラーズへ来たんだ』


 木材にする世界樹を切り出す件を伝えてくれたかな。


『例の世界樹を運んで木材にするという案、明後日ならどうかとのことだったが』

「あっ、ちょうどいい! 今日ペペさんと会えて、明後日都合つけといたんだ。明日中にカラーズの族長連とデス爺に伝えようと思ってた」


 サイナスさんが疑問に思ったらしい。


『ペペさんって、連絡を取りやすいわけではないのかい?』

「比較的難しいね。ペペさん家は魔境世界樹エリアにあるから、魔物に襲われないように結界張ってるんだよ。だからヴィルで連絡取れないんだ」


 すぐに連絡取れって言われると困る人ではある。

 もっとも今まで、緊急に連絡取りたい状況はなかったな。

 デス爺だったら結界の内側に転移できるのかもしれない。


「ペペさんはギルドのスキル屋の店主なんだけど、お客がほぼうちのパーティーしかいないんで、ギルドにいないことも多いんだよねえ」

『よくわからない。汎用スキルなら、皆が買おうとするだろう?』


 さて、ロマン砲の説明をどうしたらいいものか?


「汎用スキルは別のところで販売してるの。ペペさんは自分の作ったオリジナルの魔法とバトルスキルを売る人なんだよ。アーティストだから。アートでロマンでドリームなスキルしか作らないし、基本気に入った人にしか売らない。趣味でやってるから採算は度外視」

『ははあ? 君は気に入られているということか』


 間違いじゃないけど、むしろあたしがペペさんを気に入ってるんだと思うけどな?


「緩衝地帯で商売の交流始まった日に、すごい音して急に海の王国に招待されたってことがあったでしょ? あれペペさんから買った魔法の試し撃ちしてたら、海の王国で問題になっちゃったからなんだ」

『えっ、あれ魔法だったのか? 海で放ったやつが聞こえるって、威力おかしくないか?』

「この世の最強の魔法だって。理論上の魔力の凝縮限界にかなり近付いてるから、これ以上はムリみたいなこと言ってた」

『へえ。最強の魔法か。かなり魔法の素質がないと覚えられないんだろう?』


 あ、サイナスさんは習得条件みたいなこと知ってるんだな。


「三系統以上の魔法系固有能力の持ち主じゃないと覚えられないの。うちのパーティーだとダンテだけだな」

『三系統以上の魔法系固有能力って、相当厳しいな。じゃあ最強魔法を使えるのは、ペペさんとダンテだけなのかい?』

「いや、知ってる限りでもう一人。あたしの三日後輩のソル君っていう、十人会議にも参加してたドラゴンスレイヤーの『アトラスの冒険者』が使えるよ。ソル君は一二個までなら習得条件を無視してスキルを覚えられる、超レア固有能力持ち」

『ふうん、すごい固有能力があるんだなあ。しかし最強魔法って、かなり使い道が限定されるんじゃないか?』


 使用コストがひどいことも言ってないのに気付いたか。

 確かに威力の強過ぎる魔法は使いづらい。


「ペペさんはこの魔法の試し撃ちでドラゴン吹っ飛ばしまくってレベルカンストしたらしいけど、あたし達は魔境で使うの禁止されたな。危ないからって。ほとんど使う場面がないのは確かだね。でも脅しには使えるよ。それから帝国で飛空艇落とすときにぶちかました。飛空艇は魔道結界張ってたからダメージは与えられなかったけど、乗員を混乱させて飛行魔法で乗り込むことができたんだ」

『実に楽しそうに話すね。君ネタ魔法は大好きなんだろう?』

「愛すべきネタ魔法だねえ」


 ソル君も『デトネートストライク』を今後使う場面はないかもしれない。

 しかし最大最強の魔法を使えるということ自体が、切り得るカードの一つになるのだ。


『まあとにかく、世界樹の搬送については明後日でいいんだな?』

「うん。朝にカラーズへ行くよ」

『ユーラシアは何か面白いことはあったかい?』

「世の中面白いことは多いなー。今日イシュトバーンさんに二人絵を描いてもらった。一人はおっぱいさんなんだ。もーこれで画集は成功したみたいなもん」

『ハハハ、そうか』


 喜ばしげですね?

 画集の企画は、サイナスさんがけしかけて実現したようなもんだしな。


「三日後に移民の第一陣約九五〇人がレイノス港に到着するよ。その内四〇〇人が聖火教徒なんだって」

『聖火教徒が四〇〇人も? 随分偏ってるな。どうするんだ? 礼拝堂のところだけじゃ受け入れられまい』

「あたしもどうするつもりか、ミスティさんとこに相談に行ったんだよ。全部受け入れる気みたい」

『どうやって?』

「礼拝堂の周りって、崖とか池とかで区切られた区画なんだよ。かなり広いんだけど、魔物全部やっつければ住む場所くらい確保できるだろうって」

『大雑把な計画だな。君が言い出したのか?』


 大雑把な物事を全部あたしのせいにすんな。

 一割はあたし関係ないわ。


「方法論を示したのはパラキアスさんだな。聖火教の信者全員使って聖水ばら撒いて魔物を狭いところに追い込めば、あたしが片付けられるだろうって」

『大胆だな』

「ミスティさんはもっと大胆なんだよ。その計画にこれから来る四〇〇人の移民も使おうとしてるの」

『いきなり働かせるってことか?』

「そうそう。まあ退治よりも気になるのは、魔物駆逐後の宴会だね。聖火教は炊き出し用のでっかい鍋だか釜だかを持ってるはずなんだよ。焼き肉じゃなくてお肉たっぷり汁のパーティーになりそう」


 掃討戦の時の大きいネズミみたいなやつ、食堂の大将はあまり美味い肉じゃないって言ってたけど十分食べられるレベルだった。

 突進熊がいるなら万々歳だ。あれなかなかおいしいしな。


「美味いお肉がいるといいなー」

『趣旨が変わってるぞ?』

「変わってないって。食べることは一番重要。移民をおいしい御飯で歓迎することも重要」

『まあ君が楽しめればいいのか』

「それが最重要」


 アハハと笑い合う。


「じゃ、サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日の午前中は雨か。

 午後はアンセリの絵だけど、午前中はどうするかな?

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