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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第720話:極端に多くね?

 ――――――――――一四三日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「おう、待ってたぜ」

「うん、待ち構えてるんじゃないかなーとは思ってた」


 今日はイシュトバーンさんにアリスとおっぱいさんの絵を描いてもらう予定の日。

 まず本の世界へ案内しようとイシュトバーンさん家に行ったら、既に画材を持ってスタンバイしてたのだ。

 用意がいいとゆーか待たせるあたしの魅力すごいとゆーか。


「行こうか。じゃ、イシュトバーンさん借りるね」

「あっ、精霊使い殿! 帰りはいつ頃になりますかな?」


 警備員さんの質問だ。


「二時間後くらいかな。そんなにかからないかも」

「わかりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「さいならー」


 転移の玉を起動して一旦帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 イシュトバーンさんとうちの子達を連れ、お肉の聖地本の世界にやって来た。


「アリスー。絵師さん連れてきたよ」

「いらっしゃい。あら、イシュトバーンさんじゃないの」

「おう、アリスか。久しぶりだな」

「え?」


 本の世界に連れてきたらー、まさかの知り合いでしたー。

 チックショー!


「何で知り合いなの。予想外にもほどがあるだろ」

「三〇年くらい前か、ここへは連れてきてもらったことがあるんだぜ」

「マジか。ビックリさせるつもりだったのに、つまらんなー」

「私は嬉しいわよ?」


 まあアリスが喜んでるならいいか。


「イシュトバーンさんが絵を描いてくれるのね?」

「そゆこと。あたし達はお肉狩ってくるね。ごゆっくりー」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 お肉(加工前)とうちの子達を置いてきたあと、再度本の世界に戻ってきた。


「どお?」

「どうって、まだ三〇分も経ってねえじゃねえか。もう狩りは終わったのか?」

「終わった。とゆーか本の世界はすぐ獲物に出遭えるから、あんまり時間かかんないんだよね」

「呆れたもんだぜ。こっちはもう少しだな」


 クララやニルエの絵でわかってる。

 イシュトバーンさんも大体三〇分くらいで描いちゃうからな。

 どらどら?

 生き生きとした絵だ。

 これだけ見るとモデルが人形なんてわからんな。

 そして安定のえっち風味。


「ねえアリス、最近帝国関係で変わったことある?」


 イシュトバーンさんがビックリした目でこっち見てるけど?


「昨日移民の第一陣約九五〇人を乗せた船が出航してるわ。三日後にはレイノスに到着するわよ」

「いよいよ来るかー。楽しみだなー」

「あら、大変よ? 受け入れ準備は整ってるの?」

「うーん、精一杯努力はしてる」


 すぐ耕地にはできる。

 世界樹の製材が間に合えば何とでも。


「内、聖火教徒が約四〇〇名よ」

「えっ?」


 極端に多くね?

 いや、移民の男女比や年齢の偏りはある程度覚悟してたけど、半分近く聖火教徒とは思わなかったぞ?

 礼拝堂近くには確かに土地の面積はあるが、魔物がいるから居住域を広げるのは簡単ではない。

 じゃあ掃討戦跡地の方で引き受けるか?


「聖火教徒は毎月四〇〇人くらい来るのかな?」

「いいえ、そんなことはないわ。移住希望者リストからすると、今年一年間で聖火教徒は一五〇〇人くらいね」


 やたらと多いのは今月だけか。

 イシュトバーンさんが言う。


「聖火教徒の移民はミスティ大祭司に任せるつもりだったんだろ?」

「うん。でも本部礼拝堂のところには先月も移民が来てるんだよ。いきなり四〇〇人受け入れるのはムリじゃないかな」

「どうするんだ? クー川西の掃討戦跡地で受け入れるのか?」

「ミスティさんと相談だな。一度行っとこうとは思ってたんだ。そのつもりで多めにコブタ狩ってるから。あとで現状報告してくるよ」


 イシュトバーンさんがあのえっちな目であたしを見てくる。

 こっちはいいからアリスを見てなよ。


「面倒見がいいな」

「仁愛のオーラが大地を覆うでしょ?」

「ああ」


 しれっと肯定するな。

 そーゆー反応は照れるだろ。


「帝国の第二皇子はどうしてるかな?」

「相変わらず主席執政官として手堅い手腕を発揮してるわね」


 逆に言えば新しい取り組みはしていないということだな?

 ドーラと揉めたから大人しくしているのか、メキスさんの言うように情報が乏しいから動けないのか。


「カル帝国の政府は、海外植民地を引き締めようとしているわ」

「ふーん。ドーラが独立したことと関係があるのかな?」

「ドーラのスムーズな独立が、他の植民地にも独立の機運を盛り上がらせている。それを帝国が抑えようという構図ね」


 ん? ドーラは円満独立だぞ?

 何で他の植民地が……。


「……変だな?」

「何がだ? 他の植民地が湧きたつのは自然じゃねえか?」

「ドーラって海の一族の支配域の関係で特殊じゃん? 帝国は初めから港町レイノスしか統治してなかったが、手がかかる割に実入りが少ない。ムダが多いので放棄したって話に持っていけば、他の植民地が独立したがるなんてことないと思うんだけど」


 ある意味事実だしな。

 海外植民地なんて情報が入りにくいはずだ。

 ドーラの特殊性をスルーして、独立の情報だけ伝えてるのか?

 イシュトバーンさんもおかしさに気付いたようだ。


「そういやそうだな。各植民地で独立を煽ってるやつがいるのか?」

「とゆーか帝国がドーラ独立の経緯をきちんと説明すればいいのに、周知させるのを怠ってるんじゃないかな」

「ふむ?」

「この前のリリーのお付きの黒服さんと潜入工作部隊のメキス隊長がさ。ドーラ遠征の失敗は第二皇子の失点だから、取り返すために外征するんじゃないかって言ってたの。それは悪魔バアルの思惑とも合うって」

「ほう、物騒な話だな。つまり帝国政府が海外植民地の反乱を誘ってるってことか。対ドーラで思うようにいかなかった分、政府と軍の権威を高めるためにどこか他の植民地の反乱を叩き潰す?」

「可能性はあるねえ。まだ決めつけられないけど」


 単に情報が入んなくなって、第二皇子の対応が後手に回ってるだけかもしれないしな?


「あんたはえらく細けえところから変だってのに気付くんだな」

「そんなことないって」


 本当に洞察力がヤバいのはパラキアスさんだってばよ。

 あたしはいろんな人の話を聞く機会があるだけだ。


「で、どうすんだ? 帝国が対外政策を硬化させると、ドーラにも影響ありそうだぞ?」

「すげえ迷惑だねえ」


 どーすべ?

 ドーラとあたしにできることは何だ?

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