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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第719話:白き族長が民を導く

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後に寝る前恒例のヴィル通信だ。

 最近一日の中で一番落ち着く時間になっている。


『ああ、こんばんは』

「フェイさんにパワーカードを渡してきたじゃん? これで新人輸送隊員にも武装させることができるからね。一安心だよ」

『ん? そう危険はないだろう?』

「輸送隊任務中に魔物を見たことはあったって、以前インウェンが言ってたからさ。戦闘になったことはないみたいだけど」


 むしろ危険なんかあっちゃ困る。

 でもアクシデントはこっちの都合で起きるもんじゃない。

 これはあたしの持論だ。


 『アトラスの冒険者』になって以来色々な事件に巻き込まれた幸運の……悲運の美少女としては、備えあれば憂いなしを提唱したい。

 武器持ってるのと持ってないのとでは安心度が全然違うからなー。

 今後開拓地の方で魔物が出ないとも限らないし。


『『光る石』スタンドは楽しみだよ』

「何が楽しみなんだろうな? 賢い美少女にもわかるように教えてくれる?」

『いや、単純に夜にやれることが増えるから』

「睡眠不足は乙女の大敵なんだけどなー」

『……乙女以外にはメリットが大きいんじゃないか?』

「欲しがる人が多そうだとは感じた」


 クララも、そしてどういうわけかカグツチさんも欲しそうだしなあ。

 意外と需要があるのか?

 あんまり広めたくないんだが。

 ま、いいや。

 お土産としてあちこち配ることにしとこ。


「どうでもいいけど、転移石碑に使ってる大地から魔力を吸い取る技術あるじゃん? あれと併用するか、あるいは一定の大きさ以上の『ファントマイト』入れてスタンド作るかすると、わざわざ魔力の注ぎ足ししなくてもよくなるんだよ」

『常夜灯を灰の民の村の門にすると、洒落てると思わないか?』

「あっ、格好いい! サイナスさんやるなあ」

『ハハハ、そういうのには君食いつくんだな』

「篝火は火事の危険があるじゃん? 魔力による常夜灯ってのはいいと思ってさ。あちこちに設置しておけば夜でも歩けるし」

『うむ、心躍る未来図だなあ』


 公共物方向に広げるアイデアだったか?

 今日の『光る石』スタンドが成功したら色々考えても面白いかも。

 いや、黒妖石の小石集合体は帝国に輸出したくないんだった。

 考えるなら他の輸出品が先だわ。


「今日午後、エルフの里行ってきたんだ」

『何か用があったのかい?』

「一つはエルフ独自のパワーカードを買いにだな。風属性与ダメージを五〇%アップして、しかも『ウインドカッター』以上の風魔法が付属してるってやつ」

『なるほど、世界樹を切るためのカードだね?』

「そうそう。世界樹バカでかいからさー。それなりの手段は必要なんだよね」


 世界樹を切り出して来さえすれば、フェイさんをはじめとする黄の民が材木にしてくれるだろう。

 移民の住居の材料問題は解決するはずだ。

 サイナスさんが言う。


『森エルフ達も木を切るために使っているパワーカードなのかい?』

「おそらくね。付属魔法には『大木斬り』って名前がついてるし」

『ほほう。実にエルフらしくて面白い』


 確かに。

 これも一種の生活に役立つパワーカードだもんな。

 生活系のパワーカードはもっと数が増えてもいいと思う。

 職人の発想に期待しちゃうよ。


「で、もう一つの用はエルフの族長に画集のモデル頼むこと」

『エルフの族長って女性だったのか?』

「あっ、言ってなかったっけ?」

『昔の冒険者ヒバリさんのパーティーの一員だったとは聞いたが』


 アビーについては言いたいことたくさんあるけど、全部話していては乙女の大事な睡眠時間がなくなってしまうわ。


「アビゲイルって言うんだ。結構な年齢なんだけど若々しい綺麗な人だよ。多分精神年齢が外見に現れてるんじゃないかな」

『言い分がひどい』


 いや、エルフの特に女性の歳が見かけじゃわからないのは本当。


「森エルフにしては珍しい、色の白い人でさ。眼鏡かけてるの。で、ヤバいくらい天然」

『ふむ、どうやら天然がツッコミどころだな?』

「サイナスさん腕を上げたね。あたしの仕込みがいいからだな」

『汚されてしまった気がする』


 ひどいことを言う。

 ひどい返しかな?


「前『クールプレート』と『ウォームプレート』の製法教えてもらうのの対価が高級魔宝玉の鳳凰双眸珠だったんだけど、欲しがった理由が転がしてみたいから、なんだよ。おかしくない?」

『それ聞いて、君も転がしたくなっただろう?』

「サイナスさんはあたしをよく理解してるなあ。アビーの言うことは聞いた瞬間は何だそれって思うんだけど、すぐに心を侵食されるの。有益無益関係なしに誘惑される。メッチャヤバい」


 苦笑してるね?


「今日も会うなりお肉を食べたいの、身体が脂を求めているの言い出すんだよ。だけどアビーの気持ちがよーくわかるのが困る」

『困りはしないだろ。君と感性が似てる人なんじゃないか?』

「かもしれないけど、あたしの感性はあれほどやりたい放題暴れてない」

『よく族長が務まってるな?』

「ナンバーツーができた人なんだよ」

『うまいことできてるな』

「ただしアビー自身も、『ウッドエルフ史上最高の魔道士』って評価ではあるんだよね」


 ヒバリさんのパーティーで冒険者やってたくらいだ。

 ヒバリさんはあたしに似た人らしいから、実力のない者をパーティーに入れるわけがない。

 そーいや以前マルーさんは、エルフは族長の権威が強いって言ってたな。

 いろんな要因がエルフの里の平和に影響しているのだろう。


『白いエルフか……』

「ん? 引っかかるとこなんだ?」

『うろ覚えだが、森エルフの神話だか伝承だかに『白き族長が民を導く』というのがあったはずだ』

「へー。サイナスさん物知りだねえ」


 じゃあアビーって伝説的な族長(笑)なんだ?

 アビーの色の白さもカリスマ性を嵩増しする要素があるらしい。


『アビゲイル族長にもモデルの了解はもらったんだな?』

「もちろんだよ。明日も二人の絵を描いてもらうから、画集は着々と進行してると思って」

『わかった。ユーラシアのやってることはワクワクするな』

「そのワクワク形にならない?」

『使い過ぎのフレーズ』


 大笑い。


「じゃ、サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はアリスとおっぱいさんの絵だな。

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