第718話:小さい宝箱
フイィィーンシュパパパッ。
「宝箱ラスカル」
「何でやすか、それは?」
「あたしにもわかんないけど、頭に浮かんだ言葉なんだ。何かの啓示かな?」
「もう、何の啓示なんですか?」
「敬虔な宝箱教の信徒には、神様が恩恵をくれるかもしれないじゃん?」
「ボスはコブタミート教の信者ね」
「改宗前だったか」
今日もまた地上の天国、ザクザク宝箱のクエストをこなしに来た。
あんまりこのクエストをノルマって言うのも不信心とゆーか、宝箱と主催者に対する感謝が足りないよーな気がするんだよな。
うまい言い方がないものか。
「見ておくれ、この整然と並ぶ宝箱を!」
今日もまた四列四個ずつ、計一六個の宝箱がある。
が?
「おかしいな? ワクワクドキドキ感が少ない気がする。信仰が足りないのかな? 宝箱よ、もっとあなたの威光に浸らせたまえ!」
「ユー様、何だか変な人みたいですよ?」
「変人のシュチョーね」
「信仰が足りないのではなかったかな? じゃあどういうことだろ?」
「姐御、宝箱がいつもより小さいですぜ?」
「あ、本当だ」
言われてみると、昨日までより一回りコンパクトだ。
どゆこと?
いつも宝箱まで持ってっちゃうから、材料費を節約したのかな?
「ちょっと物足りない感じがしますね」
「クララでも思うのかー。由々しき事態だね。立札はどう?」
「立札の記述には特に変化はありません」
ふうん?
となると演出の一種なのかな?
いや、細かい揺さぶりをかけて、あたしが当たり宝箱を引く確率を上げようとしているんだと見た。
「どうするね? エクスプロージョンするね?」
「あれ? ダンテがいつになく過激だよ」
イラついたんだろうな。
ダンテにとっては宝箱の大きさもロマンなのかもしれない。
……ビクッとした宝箱は前列右隅と。
「ダンテの提案は魅力的で考慮に値するけど、少し落ち着こうか。中身がコンパクトとは限らないからね」
「中身が貧弱だったらどうしやす?」
「そんなの吹き飛ばすに決まってるだろ。昨日だってキモ人形ばっかりゾロゾロ出てきたんだぞ? あたしの辛抱にだって限度があるわ!」
「人形は可愛いじゃないですか」
「可愛いってのはヴィルやクララみたいなののことを言うんだぞ? まったく昨今の言葉の乱れは許しがたいよ」
昨晩クララは寝室にキモ人形ズ計一三体を並べて愛でていたのだ。
どういうことだってばよ?
おかげで一〇時間くらいしか眠れなかったよ。
「それだけ寝れば十分ですよ」
「いつもと同じでやすぜ」
「心を読むな。反則だぞ」
「バット、邪神像はキュートね」
「ええ? キュートの使い方も間違ってない?」
ダンテはダンテで邪神像を飾っているらしい。
キモ人形ズよりはマシとはいえ、何なんだろうな?
うちの子達の間でおかしなアートブームだよ。
「アトムも何か飾っとく? 地母神ユーラシア像がお勧めだよ」
「いや、あっしはパワーカードを枕元に置いてやすんで」
「おおう、なるほど」
パワーカード大好きなのは知ってたけど、枕元に置いて寝るほどなんだな。
趣味のことはさておき。
「宝箱が小さい分、デカい銅鑼の音を鳴らそうじゃないか!」
「「「賛成!」」」
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
素晴らしい×四。
心に染み入る×四。
小さなことはどうでもよくなっていくよ。
「よーし、宝箱開けようか」
「トゥデイはどれがヒットね?」
「前列右隅だよ。さあ、五つずつレッツオープン!」
うちの子達がそれぞれの宝箱のところへ散り、蓋を持ち上げていく。
今日は何が出るかな?
「絵です! 肖像画!」
「通常素材の詰め合わせだぜ!」
「キャッシュ五〇〇〇ゴールドね!」
うん、今日の出物は普通っぽいな。
キモ人形出たら許さんって心情が伝わったのだろうか?
「額当て、魔法の装備品です!」
「レア素材! これは『オリハルコン』でやす!」
「ジュエルボックスね! ビューティホー!」
「薬草です! 月草五株!」
「スクロールだぜ! 絵が描かれていやす!」
「ブーツね! マジックアイテム!」
「現金五〇〇〇ゴールドです!」
「現金五〇〇〇ゴールドだぜ!」
「ピクチャー二枚ね! ヘルアンドヘブン!」
「機械式の時計です!」
「田園風景の絵だぜ!」
「コモンマテリアル詰め合わせね!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
「はーい、しゅ~りょ~! 今日もたくさんのお宝ゲットだぜ! お宝を提供してくれたクエストの主催者と、クエストを振ってくれたギルドに感謝して合掌!」
合掌は変だったか?
まあ、うちの子達皆手を合わせていることだし。
「今日はお宝っぽいお宝だったね」
「バラエティに富んでたね」
「『オリハルコン』は嬉しいですぜ」
『オリハルコン』は初めて手に入れたレア素材だ。
新しいパワーカードの交換対象となることが期待できる。
「ところで宝石箱って何かな?」
「とても綺麗ですねえ。あっ、中に真珠が入っていますよ」
「随分大粒だねえ」
魔宝玉のように魔道の材料に使えるわけじゃなく、装飾オンリーの用途のものだ。
これほどの品なら高価なんじゃないかな。
お宝ではあるが、あたし達にあまり用があるものではない。
「あたし機械式の時計って初めて見るよ。部品が細かくてすごいねえ」
うちの子達がコクコク頷く。
懐中時計ってやつだな。
裏蓋を開けると小さな部品がギッシリなのだ。
こうした金属の加工はドワーフでなくてノーマル人の技術だという。
「ドーラで時計って言うと日時計か魔道のやつじゃん? こういうことできる人、ドーラにいないよなー」
「カル帝国の時計職人でしょうね」
世の中にはすんごい技を持ってる人がいるもんだ。
ますます移民が来るの楽しみだよ。
最初に来るのは農業に従事することのできる人で技術者じゃないけど、まずは人口が大事なのだ。
「美術品が結構出るなあ」
マジで価値のあるものなら帝国から人を呼べそうではあるけど。
「かなりスッキリしたからたくさん銅鑼鳴らしていくことにするよ」
「ユー様はどうあっても鳴らしたいんですよね?」
「あたしは知っている。あんた達だって鳴らしたいでしょ。ガンガンする人!」
「「「はい!」」」
「よーし、思いっきり鳴らそうじゃないか!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
皆で雑念がなくなるまでガンガンしたあと、転移の玉を起動し帰宅した。




