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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第715話:『光る石』スタンドの注文

 サイナスさんとクララのテンションが妙に高い中、赤の民の村へ急ぐ。

 あたしとアトムとダンテはもう一つ乗り切れないとゆーか。

 夜寝る派にとっては『光る石』スタンドの有用性はピンと来ないのだ。


 緑の民の村と赤の民の村は隣同士だから近い。

 炎モチーフの門が見えてくる。


「どうする? カグツチ族長に職人を紹介してもらうか?」

「カグツチさんに会うの暑苦しくて嫌だなあ。でも冬だからいいか」

「理由がかなりひどい」


 笑いながら赤の族長宅へ。

 ごく個人的なことでカグツチさんの手を煩わすのも悪い気がした。

 まーでも灰の民族長のサイナスさんがついて来てるにも拘らず、挨拶しないのも変だからな。


「こんにちはー」

「おう、精霊使い殿とサイナス族長ではないか。ようこそ」


 スクワットを中断して笑いかけてくるカグツチさん。

 どんだけスクワットが好きなんだ。

 それ以上太ももを太くしてどうする。


「何用かな?」

「陶器の職人さんを紹介してもらいたいんだよ」


 『光る石』スタンドがかくかくしかじか。

 読書家どもの圧力がどうのこうの。


「ほう、面白い発想だな」

「うーん、溜められる魔力量がどれほどになるかわからないんだよね。試作品というのもおかしいレベルなんだけど」


 純粋な黒妖石に比べて、小片を固めたものだとどれほど効率が落ちるかがまるでわからん。

 まあ『光る石』なんて誰でも使えるくらいだ。

 大した魔力量を必要とする訳じゃなし、失敗するとは考えていないが。


「『光る石』スタンドが実用化できたら、自分にも売ってくれぬか?」

「え?」


 言っちゃ悪いけど、カグツチさんが読書してるところはちょっと想像できない。

 カグツチさんこそ夜はグッスリタイプだと思ってたのにな?

 イメチェンでもするつもりなのだろーか?


「『光る石』を持ってトレーニングしていると、握り潰しそうになるのだ」

「なるほどっ!」


 夜もスクワットしてるのか。

 極めてカグツチさんらしい理由だった。

 納得した。


「普通の陶器でよさそうだな。轆轤を使用した食器等を得意とするところよりも、民芸品や芸術品を仕事としている工房がいいのではないか。こちらへ」


 カグツチさんに案内されて陶器工房へ。


「邪魔するぞ」

「族長……と精霊使い?」

「こんにちはー」


 サイナスさんもうちの子達もいるけどね。


「精霊使い殿から注文があるそうだ」

「おっ? うちの工房も精霊使いから注文が入るようになったか。嬉しいね」

「ハッハッハッ、美少女だから嬉しいんだね? 贔屓にするよ」


 笑い。

 打ち解けた雰囲気になる。


「こういうものを作って欲しいの」


 『光る石』スタンドについて説明すると、職人さんが難しそうな顔になる。


「一般に混ぜ物をすると焼いた時に割れやすくなるんだ」

「そーなの?」


 聞かなきゃわからんことはあるもんだ。

 じゃあ黒妖石の小石を固めてっていう考え自体が使えないかもじゃん。


「この黒い石、高熱は大丈夫なんだな?」


 アトムが頷いてる。


「うん、大丈夫」

「よし、じゃあ一度焼きで試作品作ってみるか。ダメなら、仕上がり具合は劣るが乾燥させただけで固まって仕上がる粘土もあるぞ。乾燥粘土なら割れる心配はねえな」

「そんなんもあるんだ? なら安心だな」

「食器には使えねえんだけどな。乾燥粘土も視野に入れておく。で、どうだ?」

「うん、任せた。両方で一個ずつ作ってくれる?」

「了解だ。形は……」


 いや、華美華美しいのはいらん。

 実用品はシンプルイズベスト。

 納得いきませんか。

 でも依頼者の希望は聞こうね。


 サイナスさんが言う。


「随分大きくなったな?」

「うーん、黒妖石がどれくらい必要かわかんないんだよ」


 感覚的にはこんなに大きくなくても魔力容量は足りると思う。

 一つ作ってみての判断だな。

 大は小を兼ねると言うし。


「完成までにどれくらいかかるの?」

「一〇日だな」

「あ、結構かかるんだ?」

「混ぜ物入りだしな。乾燥に十分時間が欲しい」


 プロの言うことだから素直に従っとこ。


「ちなみに乾燥させただけで仕上がる粘土の作品はどんな感じ?」

「これだぜ。向こう側に同じ形の焼きの作品がある。比べてくんな」

「艶が違うね。一目でわかるわ」

「焼きに比べりゃ高級感に劣ることはわかるだろう? 乾燥させて仕上げ材塗るだけだから簡単だけどな」


 でも『光る石』スタンドならば実用上は充分な気がするな?


「焼きと乾燥粘土の利点欠点をもう少し教えてくれる?」

「おっ、精霊使いに興味持ってもらえるとは嬉しいねえ?」

「美少女だから?」

「押してくるじゃねえか」


 皆で笑う。


「硬い、美しい、材質的に安定してるってのは焼きの利点だな。製作過程で割れちまうことが多いのは欠点だ」

「ふむふむ」

「乾燥粘土は手軽で細かい細工が利くのはいいところだな。価格は焼きより少し安くできる。ただ脆いんだ。だからさっきも言ったように食器には使えねえ。用途はほぼ飾り物に限定されるな」

「ふーん。例えば同じ形のものをたくさん作ってくれって言われたら、どっちのが簡単なのかな?」


 職人さんが虚を突かれたような顔をする。


「え? まあ同じだが、完成までの時間が短い分、乾燥粘土の方がいいだろうか?」

「ありがとう。今日の試作品の分のお代はいくら?」

「四〇〇ゴールドでどうだい?」


 代金を支払う。


「じゃ、一〇日後くらいに様子見に来るね」

「おう、またな」


 工房を後にする。

 サイナスさんとクララがワクワクしとるわ。


「三日前に塔の村行ったんだけど、レイカは元気だったよ」

「そうかそうか」


 嬉しそうだね。


「モデルを頼みに行ったの」

「モデル?」


 クララの絵を見せて説明する。


「ほう、画集か。面白いな」

「本と親しむ社会にしたいんだ。手始めとして美人絵画集出すの。これは多分、メチャクチャ売れるよ。帝国に輸出もする予定なんだ」

「輸出か。遠くまで見ているのだなあ」


 カグツチさんが笑う。

 この人ちょっと以前より落ち着いた気がする。

 交易が好調に推移してるからかな?


「もう画集の計画はスタートしてるよ。まだレイカの絵は描いてもらってないんだけど」

「今後もレイカのこと、よろしくお願いする」

「うん」


 お願いされたって困るのだが、こーゆー時は肯定しか選択肢がないのはお約束だからな。

 あーんどあたしはお約束に忠実な子だし。

 カグツチさんと握手して別れる。

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