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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第711話:可愛がるには二種類ある

「何にせよ産業を発達させて売るもの売っとかないと、ドーラはビンボーから抜け出せないよ。あたしビンボーは嫌いだなー」


 三人が頷く。

 あたしは豊かでものを手に入れやすい世界がいいと思っている。

 今ドーラで不十分ながらもその条件を満たしているのは、レイノスとカトマスくらいだろう。

 カラーズと塔の村のドーラ東西両端が今以上に機能すれば、そして帝国との貿易を活発にできれば、ドーラは絶対にいい国になる。


 セリカとアンが聞いてくる。


「ユーラシアさんは、新大使ルキウス皇子の接待を一任されてると聞きましたが」

「魔宝玉クエストで手に入れた莫大な資産を、移民関連ですべて吐き出したと聞いた」

「今は動いたら動いただけ、ドーラが発展する段階でしょ? 最高に面白いところに関われて、すっごい楽しいんだ」

「エンターテインメントですか」

「エンターテインメントだねえ。ごめんよ、ソル君には面倒なとこ押しつけちゃって」


 ソル君は十人会議の一員として、政府の言うことを唯々諾々と聞かなきゃいけない場面が多いんじゃないかな。

 あたしは言うこと聞かせるのは好きだけど、聞くのは嫌い。

 ソル君が苦笑する。


「いや、ユーラシアさんの代わりは誰にもできませんから」

「ところで犯罪者取り締まりの方はどうなってるかな?」


 『アトラスの冒険者』が受け持っているはずだ。

 大量移民が来ると治安も悪化しそうだから、今の時点で問題があるなら早めに手を入れないといけない。

 ソル君の見解はどーだろ?


「新政府が安定してきたことと、ユーラシアペナルティの恐ろしさが知れ渡ってきたことで、楽になってきましたよ」

「ソル君達は知ってるかな? 単に魔法の葉を齧るより、青汁にした方が不味いの。もー舌が痺れる感じ。レイノスで魔法の葉青汁はこんなに不味いですよイベントやったら、失神者が続出しちゃったんだ」


 アンが言う。


「新聞で読んだ。迫力というか、怨念のこもった記事だったな」

「新聞記者ズにも飲ませたからなあ」


 ハハッ、不味過ぎてビックリしたんだろ。

 結果として犯罪抑止効果に繋がるならいいことだ。

 セリカが聞いてくる。


「移民の受け入れ先の方はどうですか? 現在のドーラ一番の懸念はそこかと思いますけど?」

「どこまで話したっけ。掃討戦跡地に転移石碑を設置、カラーズから行き来できるようにして、急ピッチで開発進めてる。具体的にはクー川から水を引く用水路作ってるんだ。もうクー川に平行に流れて海に注ぐ最初の一本は開通してるよ。今は西へ水路伸ばしてるところなんだ」

「ではもう心配はない?」

「いやあ、心配は多いね。移民が大勢来るって急に決まったことじゃん? 今年蒔く用の種が足りないんだよねえ。オルムスさんに頼んで、種たくさん持ってこられる移民を優先してって言ってあるけど、実際には来てみないとわかんない」


 ドーラに合わない作物だってあるだろうしな。

 最初の一年はマジでノウハウがない。


「ははあ」

「米を作りたいんだよね。単位面積当たりの収量が多いらしいじゃん? 稲作よく知ってる人が種籾たくさん持ってきてくれるとありがたいけど。クー川沿いに土地は確保してあるから」

「グームでも米は作っていますが少量です。大量生産のノウハウはないですね」

「だろうねえ」


 いや、帝国でも個々の農家が細々と作ってるだけで、組織だった大規模生産はしてないのかもしれないな?

 研究すると面白そうだが、移民が山ほど来て土地が必要だってのに、悠長なことはしてられない。

 残念。


「ま、移民の方はまず大丈夫だと思うよ」

「大丈夫だぬ!」


 よしよし、ヴィルいい子。


「……掃討戦跡地で、考えられないような凶悪な魔物が出現したと聞きましたよ」

「デミアンから聞いたのかな?」


 三人が頷く。


「うーん、召喚術みたいなんだ。でもドロップアイテムでメチャクチャ儲かったし、見物人もすげえ喜んでくれたから、結果としては良かったけどね」

「三つ首ヒドラの首を笑いながら狩っていく精霊使いは怖かったと」

「大げさだなー。大喜びはしてたけど、笑ってはいなかったよ」


 多分。

 クララ何?

 あたし笑ってたって?

 細けえことはいーんだよ。


 ……まあソル君達には話しておくべきだろうな。


「バアルっていう悪魔の仕業だと思うんだ」

「すごく嫌なやつぬ!」


 ソル君パーティーに説明する。


「悪感情を得るために戦争起こすっていう、ある意味悪魔っぽい悪魔なんだ。帝国の事実上のトップである第二皇子と組んで、ドーラに攻めてこようとした」

「本当なんですか?」


 ソル君が驚いている。


「悪魔に詳しい聖火教と西域に攻め込んできた潜入工作兵の隊長、両方から聞いた情報だから間違いないな。隊長は第二皇子のことをよく知ってる人物だよ」

「「「……」」」

「飛空艇を落として決定力がなくなったから、戦争らしい戦争になんなかったじゃない? だからバアル殿が御不満らしいんだ」

「あれからすぐドーラの独立は認められましたよ?」

「うん、注目すべきポイントだよね」


 帝国はむやみやたらとドーラに攻め込もうとはしなかった。

 極めて冷静な判断だ。

 第二皇子はバアルとタッグを組んではいても、利用されちゃってるわけではない。

 帝国最大の実力者ともなると、悪魔に対抗できるんだな。


「どーもあたしがバアルの恨みを買ってるから、嫌がらせしてくるみたい」

「対決になるようでしたら、オレ達にも声かけてくださいよ」

「え? 小物っぽいからソル君の手を煩わせるまでもないなー。ただこっちのマジックポイントを使用するスキルを禁止するっていう、割と反則気味の固有能力を持ってるようなんだ。懸念材料そこだけ」


 驚くセリカ。


「魔法もバトルスキルもってことですか?」

「そうそう」

「回復できないのは長期戦になった時厳しいな」


 むしろ長期戦消耗戦は、レベルのカンストしているあたし達にとっては望むところ。

 自動回復装備で対策もできる。

 でも逃げちゃうのが問題なんだよな。


「まあ目の前に現れたら可愛がっとくけど」

「可愛がるぬか?」


 不満そうですね?


「ヴィル覚えておこうね。可愛がるには二種類あるんだよ。せっかくだからアンセリに可愛がってもらいなさい」

「「ダブルでぎゅー」」

「ふおおおおおおおおお?」


 笑い声とともに夜は更けてゆく。

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