第709話:クレイジーなセンス
フイィィーンシュパパパッ。
今日もまた皆大好き日替わり宝箱ザクザクおかわりイベントに来た。
ちょーっと名前違うかもしれないが、意味するところは合ってるだろ。
「隣の宝箱は赤い」
「ここの宝箱は青いでやすけれども」
「今日は全部金色宝箱になってる、なんてのもあり得るかと思ってたけど、意外と大人しいね」
「ボスはルックスに誤魔化されないね?」
「外見どうこうより、中身が大事なんですよね?」
「何であんた達はわざわざ確認を求めるのだ。素直にその通りだって言えない雰囲気になってきたろーが」
押すなよと言われると押したくなる心理、あれと同じだ。
あたしがお約束と宝箱の中身のどちらを重視するのかとゆー、哲学的な問題に発展しちゃうだろーが。
「一昨日から惑わされるイベントになったよなー」
「アトモスフィアがチェンジしたね」
「それなー。主催者があたし達を楽しませようと目先を変えてるのかもしれないから、文句は言わないことにするけれども」
宝箱の中身が豪華になってるわけじゃないのが微妙だなってだけだ。
もっとサービス精神を発揮しろ。
「さーて、今日はどうかしらん?」
一昨日のように全ての宝箱が同じ気配なんてこともないし、昨日のように金色の宝箱が一つあるなんてこともない。
ただ四行四列一六個の宝箱が配置してあるだけだ。
「立札の記述も変わりないです」
「変だな? 何もおかしいところがない。逆に不安になるな」
「いや姐御。おかしいって言ったら、このクエスト自体がおかしいでやすぜ」
「アトムが正しいね」
「……ボス、ルームのラフなインプレッションがなくなってるね」
「うん」
ダンテの言う通りなのだ。
これも一昨日からなのだが、荒んだ感じが徐々に薄れてきている。
どういうことを意味してるんだろうな?
「何かの予兆ですか?」
「いや、変事が起きる感じはしないな。部屋自体に命があって、精神的に回復してきてるみたいに思えるけど」
もちろんこの部屋が生きてるなんてことはない。
ただこの部屋の状態が、イベント主催者の精神状態を反映してるのかなーとはチラッと思う。
……宝物を毎日取られるのに嫌気が差してきたけど、あたし達が感謝の気持ちを示していることに対して前向きに捉えられるようになった、と考えるのは穿ち過ぎだろうか?
「ま、いいや。やること変わんないし」
「ガンガンするんでやすね?」
「そうそう、ガンガンしてからかっぱぐ。ガンガンする人っ!」
「「「はい!」」」
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
うんうん、実にいい。
うおーんという唸りが心の淀みを消し去っていくようだ。
「さあさあまいろう、お宝をいただいてまいろう」
「トゥデイはどれがヒットトレジャーボックスね?」
「手前から二列めの、左から二番目だよ。五つずつ開けちゃってね」
「「「了解!」」」
うちの子達が大喜びで宝箱を見定めてゆく。
「今日は宝箱の中身にサプライズがあるのかもしれませんねえ」
「大歓迎的な嬉しさだな」
いいものが出てきたらごっつあんだよ。
とりあえずオープンしてみようじゃないか。
「コウモリ人間? の人形です!」
「キングヒドラの人形だぜ!」
「デカダンスのフィギュア!」
全員キモ人形引いてるじゃないか。
すごく嫌な予感がする。
「現金五〇〇〇ゴールドです!」
「食獣植物の人形だぜ!」
「ビートルマンのフィギュア!」
「現金五〇〇〇ゴールドです!」
「ただの人形……巨人の人形だぜ!」
「キャッシュ五〇〇〇ゴールドね!」
「ドラゴン人間の人形です!」
「ワーウルフの人形だぜ!」
「キャッシュ五〇〇〇ゴールドね!」
「木人トレントかドリアードの人形です!」
「ゾンビの人形だぜ!」
「デーモンのフィギュア!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
「はーい、しゅ~りょ~! たくさんのお宝をくれた主催者に感謝しましょう」
しかしまさかのキモ人形ザクザクデーだったぞ?
全部じゃなかったからいいけれども。
「今日はハズレの日かー。まあ現金が二万ゴールドも出たもんな。十分だろ」
「巨人やデーモンの人形は割と普通でやすぜ」
「その人形の背中見た?」
「背中? あっ、何だこれ?」
巨人や悪魔なら普通に作っときゃいいものを、何をとち狂ったか背中に人間の頭が取りつけてあるのだ。
クレイジーなセンスだろこれ。
「ダンテがビートルマンって言った時、何事かと思ったけど、確かにビートルマンだわ」
「ビートルマンでやすねえ」
コガネムシだか甲虫系の魔物だか知らんけど、虫に人間の頭が取りつけてあるのだ。
しかも後ろ足で立ち上がって、百獣の王のポーズを取っている。
だからどーして人間の頭なのだ。
このシリーズ同じ作者なんだろうな。
何でこんなことしたか小一時間問い詰めたいけど時間のムダ。
「ワーウルフもただのオオカミに人間の頭がついてるような気がする」
「メイビーソー、アハーン」
「でもよく見ると可愛いですよ?」
は?
「……クララが本格的におかしなことを言い出したよ。『可愛い』って何だっけ? あたし辞書見てると寝ちゃうから、詳しく調べたことなかったなあ」
この前も『愛嬌』を間違った解釈で使ってたぞ?
クララは普通の本より辞書を読んだ方がよくない?
「でもこのキングヒドラ見てくださいよ」
「あたしの心がいくら広くても、これは『可愛い』の範疇に入らないなー」
「三本の首についてる人間の頭がすごく精巧にできてます!」
「……本当だ。でもそれってプラス評価なの? 減点ポイントなんじゃないの?」
アトムやダンテが激しく頷いてるけど。
ただ評価が割れるってことはやっぱり芸術作品だからなのかなあ?
「いいんです。私は気に入りました。お部屋に飾っておきます」
「クララの部屋ってあたしの部屋でもあるんだけど」
これを飾るのかー。
何がクララの琴線に触れたのか。
……まあいいか。
クララに気に入られてキモ人形ズも満足だろ。
「かなりモヤモヤするから、たくさん銅鑼を鳴らしていくことにするよ」
「あっしもガンガンしやすぜ!」
「ミーもね!」
「私も!」
何故クララがモヤモヤするのだ。
全くわけがわからん。
「さーて、いくぞお!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
皆で心ゆくまでガンガンした後、転移の玉を起動し帰宅した。




