第708話:ヴィルを行政府に送ったら
「ユー様、午後はどうしますか?」
「どうするぬ?」
昼御飯を食べながらクララが聞いてくる。
まあヴィルにも手伝ってもらいたいことがあるので呼んだわけだが。
「魚はダンテが取ってきたんでしょ?」
「イエス」
「ただ焼いて醤油かけただけなのにおいしいよね」
「細かくしたダイコンとよく合ってるんでやすぜ」
「うん。この食べ方を発明したクララは偉い!」
「本で見たことがあるだけですよ。もう、そういうのいいですから」
「そういうのはいいぬ!」
ハハッ、恥ずかしがっちゃって。
「結構やることあるんだよね。ギルドでおっぱいさんに連絡とアイテム売却、ザクザク宝箱のクエスト行くことは必須でしょ? あとはワイバーンの卵を塔の村に届けるのとバエちゃんとこに顔出しもしときたいかな」
クララが言う。
「ヴィルが届けてくれた絵を、緑の民の村に持って行かなくていいですか?」
「明日赤の民の村行く時、緑の民の村にも寄っていこう」
「ワイバーンの卵は四つとも塔の村でやすかい?」
「いや、一つはプリンスルキウスにプレゼントしてやろうと思って」
「ワッツ?」
「プリンスもあたしが構ってやらないと、寂しくて泣いちゃうかもしれないから」
笑い合う。
ウサギって寂しいと死んじゃうって聞いたことあるけど本当かな?
死んじゃう前においしくいただいた方がいいと思うよ。
さて、あちこち回る順番をどうしよう?
「……一番時間が読めないのはギルドなんだよなー。誰に捕まって何が起きるかわかんない。最後にしようか? で、夕御飯食べてこよう」
「「「賛成!」」」
最も重要な夕御飯の予定が決まった。
そこから逆算すればいいか。
「あんまり早くワイバーンの卵持ってくと、先に他の冒険者に食べ尽くされちゃってリリーが文句言うかもしれないな。じゃ、ギルドの前に塔の村」
全員が頷く。
塔の村の食堂の料理人はワイバーンの卵をどう調理するかな?
興味はあるけど、あたし達が食べると塔の村の冒険者の分が減っちゃうから、今日は遠慮しよう。
「宝箱クエストとバエちゃんとこはどっちがどっちでもいいや。宝箱クエストの重要性が高いから、今から行こうか」
「そうでやすね」
「ナイスな判断ね」
「で、その前に、と」
ヴィルに聞く。
「ワイバーンの卵持ってワープできる?」
「大丈夫ぬよ?」
「じゃ、これ一個持ってプリンスの部屋に行ってくれる? いきなり中に現れると失礼だから、窓からコンコンしてね。卵を渡したら、こっちに通信繋いで」
「わかったぬ! 行ってくるぬ!」
ヴィルの姿が消える。
イシュトバーンさんの完成原画を持ってワープすることもできるし、これから簡単なお使いくらいならヴィルオンリーでイケそーだな。
『御主人、聞こえるかぬ?』
「バッチリだよ。……何かうるさいね?」
『家来のソバカスが騒いでるんだぬ』
バックで誰か大声出してると思ったらアドルフか。
何をぎゃあぎゃあ言ってるんだ?
あ、アドルフはヴィルを見るの初めてだったか。
悪魔くらいで騒ぎ立てるとは小物だな。
「ま、いーや。モブの言動に一々惑わされなきゃいけないほど、美少女精霊使いは暇じゃないんだった。プリンスに繋いでくれる?」
『はいだぬ!』
『やあ、精霊使いだね?』
「こんにちはー。ワイバーンの卵が手に入ったから、一つあげるね」
『うむ、感謝する』
「後ろで意味不明の言語を発しながら通信を妨害してるやつに代わってくれる?」
『了解だ』
アドルフは何でビックリしたのかなあ?
ヴィルはいい子なのに。
大使室で大声あげるなんて下品だろうが。
『精霊使い! 何だこれは!』
「何だこれはってか。そうです、その子が変な悪魔です。変じゃないわ。ヴィルはとってもいい子だわ」
『ふざけるな! どういうことだ!』
「世にも珍しい善良な高位魔族だよ。うちの連絡係で、ヴィルっていうの。べつに失礼な訪問の仕方してないでしょ?」
『失礼か失礼じゃないかの問題じゃない! 殿下の元へ悪魔を送りつけてくる了見がわからん!』
面倒だなー。
もうちょっと頭柔らかい子だと思ってたのに。
「アドルフは悪魔をあんまりよく思ってない宗教の人? 聖火教徒とか?」
『違う!』
「悪魔ってだけで偏見持たんと、よーくヴィルを見てみ? 可愛いし正装だから、場の雰囲気壊すわけじゃないでしょ?」
『……言われてみれば』
「プリンスの威光は人類以外にも及ぶのだ。悪魔くらいでガタガタゆーな」
『む、なるほど』
納得したらしい。
マジでちょろいな。
「ヴィルはうちの連絡係なんだ。今後も送ることがあると思うからよろしくね。で、本題いくよ。ワイバーンの卵を持ってプリンスと一緒に町へ出て、どこかの食堂で料理作ってもらいなよ。結構な高級食材らしいんだ。余った分は食堂にあげちゃうでも他の客にごちそーするでもいいからさ」
『要するに殿下の余慶に与らせよということだな?』
「そーゆーこと」
まあ人気取りしとけってことなのだが。
「あんたなら手頃な店に心当たりあるでしょ?」
『ある。レイノスのことなら任せておけ』
「頼んだよ。プリンスに代わってくれる?」
『ああ』
『代わったよ。予だ』
「話聞いてた? なるべくレイノスで顔売っといてね」
『わかった。しかし……』
言いたいことはわかる。
ドーラみたいな小国の大衆に愛想良くしてメリットがあるのか?
「直接帝国に働きかけることができない以上、できることはやっとこ。どこかで役に立つ人材が出てこないとも限らないし」
『……うむ』
プリンスルキウスももどかしい思いがあるんだろうが、さしあたってドーラにおける地歩を固めるのが最優先だろう。
とゆーか今できるのそんだけだわ。
間違ってドーラが早期に大躍進を遂げた時、プリンスの手腕を喧伝することもできるし、ドーラと最も深い関係を有する皇子として重要性が高まるということもある。
……ま、陛下の余命を考えると難しいけどな。
次期皇帝を巡る争いを考えた時、元々プリンスが逆転できる目は多くない。
だって第二皇子が躓いてくれないと出番すらないんだから。
「じゃ、また今度遊びに行くね」
『ああ、楽しみに待っているよ』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」
『はいだぬ!』
よーし、こっちは終わったぞ。
赤プレートをしまう。
「宝箱ゲットしに行くぞー!」
「「「了解!」」」




