第705話:張り切るノブ君
「ふむーん!」
ヨブノブ御両親との話し合いは終わった。
大きく伸びをする。
「堅い話してたから肩凝っちゃったよ」
「全然堅い話じゃなかったじゃないか」
「ヨブ君ノブ君の人生に関わる話だったわ。ヨブ君にとってはどうでもよくても、ノブ君や『アトラスの冒険者』の関係者にとっては全然無視できない話だったわ」
まったくどーすりゃこんなにお気楽な人間が生まれてくるんだか。
あたしとは真逆の方向で人生楽しんでるとも言えるのかな?
「ところでサクラさん、夜空いてる日ないかな? オニオンさんを誘ってイシュトバーンさんとこ行きたいんだ」
用件は伝わっただろう。
会食並びに画集のモデルですよ。
おっぱいさんニッコリ。
「ギルドの業務終了後の時間ならいつでも大丈夫ですよ」
「わかった。近い内に連絡するね」
「お待ちしています。では失礼します」
「さいならー」
おっぱいさんが去ってゆく。
朝早くからお仕事御苦労さんだなあ。
「さてノブ君、転移の玉が正常に働くか使ってみてくれる?」
「うん!」
おっぱいさんはもうノブ君への『アトラスの冒険者』権利譲渡は完了みたいなこと言ってた。
ならば転移の玉も使えるはずだが?
ノブ君が転移の玉を起動し……どこ行った?
「こっちだ」
ヨブ君が案内してくれる。
三つの転送魔法陣が並ぶ庭へ。
「うん、問題なく転移の玉は機能しているね。せっかくあんちゃん起きてるから、一緒にクエスト行ってきなよ」
「そうする!」
「えっ?」
「えっ、じゃないよ。たまにはあんちゃんも手伝ってくれよって、さっきノブ君が言ってたじゃないか。今日が『たまには』の日だと思って観念しな」
「あんちゃん、早く早く!」
「わ、わかったよ」
用意しに行く二人。
尻叩いてやらなきゃあのズボラナマケモノは動きゃしないんだから。
確か以前のクエスト完了時にノブ君のレベルは四だった。
あれからクエストに出てないならレベルは変わってないだろう。
装備はあたしが貸してる『スラッシュ』『シールド』と支給された『ホワイトベーシック』のはず。
クリア済みのクエスト先の魔物は大ネズミくらいだったから問題ない。
けど新しいクエストはあたしの経験上、複数の魔物を相手にするかもしれないんで、一人じゃ厳しそうなのだ。
バエちゃん理論からすると、これクリアすれば次はバトルメインじゃない変化球的なクエストになるはずだから、ギルドまでは来られるだろ。
「用意できた!」
「よーし行ってこい! ムリするんじゃないよ。疲れたら休む。困ったらチュートリアルルーム。いいね?」
「うん!」
「ああ」
転送魔法陣から二人が飛ぶ。
ヨブ君がいれば大丈夫だろ。
覇気も意欲もやる気もないけど、実力はあるからな。
あたしも転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
時間ができたので魔境に来た。
宝箱イベント等で手に入れた手持ちの素材が過去最高くらいあり、また売らなきゃいけない魔法の葉もてんこ盛りではある。
でもなー、せっかく時間があったら魔境に来たいもんなー。
アイテムなんかまとめて売ればよくね? というあたしの独断なのだ。
特にうちの子達からも反対意見はない。
「今日はレジャーですか?」
「レジャーだね。オニオンさんにも用があるんだよ。おっぱいさんとの会食いつがいい? おっぱいさんは夜ならいつでもいいみたいなんだけど」
「えっ?」
目が点になったまま固まった。
この像にタイトルをつけるなら『アルカイックタマネギ』かな。
「ダンにおっぱいさんの話聞いた?」
「え、ええ。というか一方的にまくし立てられまして、最後にユーラシアさんが推してるようだから間違いないぜ、と」
「間違いないは言い過ぎだな。でもかなり見込みがあるんだよ。オニオンさんがおっぱいさんを誘うまでにワンクッション欲しいから、今度イシュトバーンさん家で絵描いてもらう時に一緒に来て欲しいの」
「それで夕食ということですね? わかりましたが、イシュトバーン氏の都合はどうなのでしょう?」
「イシュトバーンさんは暇してるから、いつでもいいよ」
「で、では明後日の晩はいかがでしょう?」
「ヴィル、聞こえる?」
赤プレートに話しかける。
即イシュトバーンさんに伝えておこう。
『聞こえるぬ! 感度良好だぬ!』
「よーし、ヴィルいい子。イシュトバーンさんに連絡取ってくれる?」
『わかったぬ! ちょっと待つぬ』
しばらくの後にイシュトバーンさんに繋がる。
『おう精霊使い。久しぶりだな』
「昨日会ってるじゃん。まったくあたしのこと大好きだな」
『ハハハ。絵、完成してるぜ』
「あっ、ありがとう。取りに行くね……あれ? ひょっとしてヴィル持ってこられる?」
『大丈夫ぬよ?』
「よし任せた! 家の中に置いといてくれる?」
『わかったぬ! 任せるぬ!』
『おい、あんた来ねえのかよ?』
面倒なこと言い出しそうだな。
機先を制して……。
「おっぱいさんと話ができたんだ。明後日の夜、そっち連れてっていいかな?」
『おおおおそうか! 楽しみにしてるぜ!』
ハハッ、大喜びじゃねーか。
さもありなん。
「明後日はもう一人ギルドの職員さん連れてくね」
『男か女か?』
「男の人」
『そりゃ残念だな』
「惜しかったねえ。二分の一の確率を外すのは普段の心がけが悪いんだぞ?」
『縁起でもねえ』
マジへこみっぽい。
あたしとおっぱいさんが行くとゆーのに失礼な。
「同行のギルドの職員さんも、魔境のガイドをしてる面白い人だよ」
『ほお? じゃあ楽しみにしとくぜ』
「もう一つ、明後日の午前中に肉狩りするから一緒に行こうよ。画材用意しといてね」
『つまり肉狩りの現場にモデルがいるってことなんだな?』
「いるんだよ。きっとビックリするよ?」
『俄然楽しみが多いぜ』
「じゃ、明後日迎えに行くね」
『おう』
「ヴィルありがとう。絵を運んだら通常任務に戻ってね」
『了解だぬ!』
アポ取れた。
あとでギルド行くから、おっぱいさんにも連絡しとこ。
「じゃあ明後日の夕方迎えに来るね」
「わ、わかりました。色々ありがとうございます」
緊張しなくていいんだぞ?
ただのあたしの酔狂でエンターテインメントで心の癒しだニヤニヤ。
「行ってくるね!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。




