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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第703話:でも布団は味方だし

 フイィィーンシュパパパッ。


「ユーちゃん、いらっしゃい」


 チュートリアルルームに来た。

 ここのところ新人さん関係で毎日顔を出してはいるのだが。


「バエちゃん、お土産のお肉だよ」

「ありがとう! あれ? これいつものお肉と違うね? この前言ってた突進熊のお肉?」


 よく突進熊なんて覚えてたな。

 バエちゃんは魔物と関係のない暮らしをしているのに。

 お肉が記憶を揺さぶるせいか。


「いや、これマンティコアっていう魔物の肉なの」

「あっ、覚えてる覚えてる! サッパリとした繊細な肉って言ってたお肉よね?」

「そうそう。どーもこっちの世界では調理が難しいんだよね。一流の料理人なら何とかするのかもしれないけど、そーゆー人はお城とかに勤めてるもんだと思う。多分魔物には縁がない」

「そうねえ」

「美味いことは美味いんだ。バエちゃんとこには調味料が多いから、色々試してみてよ」

「うん、わかった」


 蒸したり茹でたりして食べる方が、焼くよりもおいしい肉なのかもしれないな。

 ってのはともかく。


「悪い子はいねがー!」

「いるっ! 今日来た!」

「どーもタイミング合わない子だな」


 例のピンクマン担当の新人のことだ。

 まーこんな日が暮れそーな時間に来て会えるとは思ってなかったけれども。

 ただやる気があるならしょっちゅうチュートリアルルームに来てもいいだろうに、まだ二回目か? 三回目か?

 『アトラスの冒険者』自体への不信感が強いのだろうか?


「何か言ってた?」

「ええと、転移の玉の感想くらいかな。午前中しばらくいて、誰か冒険者が来たら話聞きたいのかなと思ったけど、今日はたまたま誰も来なくて。やっぱり武器防具は持って行かなかったわ」

「午前中しばらくいて、転移の玉の感想くらいしか話さないのか。食べる以外に口を使うのはムダだと思ってる子かな?」

「あはは!」


 どうやら転送魔法陣と転移の玉が技術的にヤバいものだってことには気付いているな。

 『アトラスの冒険者』に関する情報がなさ過ぎて踏み切れないと見た。

 とゆーことは『アトラスの冒険者』を知っている、地元の先輩にもまだ会えていないのだろう。


「バエちゃん。今度その子来たら、『アトラスの冒険者』がどのくらい昔からあるとか、現在のドーラ政府のお偉いさん一〇人の内三人が『アトラスの冒険者』及びその嘱託店主だってこと。あるいはドリフターズギルドの地理的な位置とか、具体的なことを教えてあげてくれる? それで態度軟化すると思う」

「え? わ、わかった」


 バエちゃんは異世界人だ。

 ドーラの事情に詳しいわけじゃないから、新人に現場向きのことをあまり話さない。

 でも新人さんはドーラにおける『アトラスの冒険者』の客観的な実像や、自分にどう関わるかを知りたいだろう。


 あたしの場合は自分のことで手一杯だったし、未知の未来への希望もまた一杯だった。

 利益をもたらしてくれるのなら、『アトラスの冒険者』が少々わけわかんない組織であろうがあんまり気にならなかったけど。


「でも誰か信頼できる先輩の意見を聞かないと、武器を持つことはないだろうなー」

「そうなの?」

「うん。ここまで慎重な子だと多分ね。今日は帰るよ。またね」

「また来てね」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後に恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。輸送隊のレベル上げ、御苦労だったね』

「あたしも魔境に行ける用ができると嬉しいよ」

『ハハハ、魔境もユーラシアにこれほど愛されて幸せかもしれないね』

「あっ、そーだね」


 サイナスさんもなかなかわかってるじゃないか。

 サイナスさんにこそ、わくわく魔境ツアーを堪能してもらいたいのに。


『緑の民の二人のルーキーだが、一人は強制睡眠の『ララバイ』、もう一人が目がいいという『晴眼』の固有能力持ちだそうだ』

「目がいいってのはわかってたろうけどさ。固有能力とは気付かなかったかもしれないな」


 フリッツはやはり『ララバイ』か。

 敵に回すと厄介だが、輸送隊で大事にすればとっても有用な能力持ちだ。

 ペーターは目がいい子だなとは思った。

 固有能力だったとはちょっと意外だわ。

 『晴眼』は日常でも索敵でも使えるいい能力だな。


『札取りゲームについて。黄の民から木札半量が完成したとの連絡があって、アレク達がそれを持って緑の民の村へ行き、可能な分だけ印刷を頼んでたぞ』

「いいねえ」


 金属版の完成次第、生産開始だな。


『こっちは以上だ』

「あたしはイシュトバーンさんとカトマス行ってきた」

『うん、いよいよ画集計画の開始か。魔女の孫娘の絵だな? どうだった?』

「面白かった。マルーさんとイシュトバーンさん、マジでクソジジイクソババアって呼び合ってるの」


 両者を知ってるダンなんかは、おゼゼ払っても見たいやつじゃないかな。


『確かに面白いけれども、絵の方は?』

「バッチリだな。シンプルな立ちポーズなのに、どーゆーわけかえっちになるイシュトバーンさんの謎技能は、いくら賞賛してもし足りないから賞賛しない」

『ちょっと何言ってるかわからない』


 最大限に理解力を発揮してもらいたいんだが。

 頑張れヘタレ族長。


「大体現地で描いて、あとは家で仕上げるって言ってたよ。明日には一枚目の完成でーす!」

『案外家で仕上げるというのは、君を呼ぶ口実かもしれないな』

「気付かなかったわ。困っちゃうなー」


 べつに困りゃしないわ。

 また遊びに行ってやるか。


『明日ユーラシアは予定あるのか?』

「朝早くからカトマスなんだ。二ヶ月くらい前の新人冒険者の処遇の関係で。ギルドからおっぱいさんが来るんで、遅刻しないようにしないと」

『君、朝弱いだろ?』

「そーなんだよ。あたし睡眠抵抗持ちなのにな?」

『布団に勝てないんじゃないか?』

「でも布団は味方だし」

『ちょっと何言ってるかわからない』


 もー乙女心を理解しろ。

 もっとも『アトラスの冒険者』になってからは起きる時間が七時過ぎとほぼ固定なので、全く起きられないということはない。

 生活のリズムって大事だなと感じる今日この頃。


「サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は早起きしないと。

 寝坊フラグじゃないわ!

 おっぱいさんに迷惑だから変なことゆーな!

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