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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第70話:副市長の許可証

「こんにちはー」


 ふふーん、レイノスに着いたぞ。

 ここは西門か。

 常駐している警備兵に挨拶がてら質問する。


「この子と一緒に買い物したいんだけど、中入ってもいいかな?」

「亜人……いや、精霊か?」

「そうそう、うちの子。眩草の精霊クララだよ。よろしくね」


 警備兵が戸惑ったように互いに顔を見合わせている。

 クララはクララで泡食ったような顔してるけど。

 あたしがいるから平気だぞ?

 堂々としてなさい。


「ちなみにあたしはこーゆー者でーす」


 ギルドカードを見せる。

 これ初めて身分証として使ったな。


「あんたは、いや、あなたは『アトラスの冒険者』か!」


 よしよし、やはり知っていたか。

 コルム兄に聞いた例の『大掃除』に、レイノスの警備兵も参加するとのことだった。

 その話が末端まで届いてるのかは知らないが、少なくとも『アトラスの冒険者』とレイノス警備兵は良好な関係だと踏んだ。

 どうやら当たってたようだ。


「あたしもムリに入ろうっていうんじゃないから、誰か判断できる上の人に聞いてきてくれないかな。ここで待ってるよ」


 隊長らしき人が声をかける。


「行ってこい。急いでな」

「はっ、直ちに!」


 その警備兵は駆け出していった。

 ばいばーい。


「ごめんね。お手数かけて」

「ハハッ、想定外に対応せぬようでは警備兵とは言えぬよ」

「警備兵さんは門を守るお仕事なの?」

「いや、レイノス市内のトラブルを仲裁するのが主な仕事だな。東門と西門の警備という役割もなくはないが、常駐の場所として使ってるだけだ」


 詰め所代わりってことみたい。

 ここ屋根もあるしな。

 しかしレイノス市内のトラブルを仲裁か。

 さっき中町住民の横柄さについて聞いたばかりだから、面倒なお仕事だなーと感じてしまう。


「ところで……」


 隊長さんは目を細めてあたしを見る。

 いやん、惚れちゃいけねえよ?


「『アトラスの冒険者』に精霊使いが加入したとは聞いていた。これが君のパーティーなのかい?」

「いや、うちのパーティーはあたしと精霊三人なんだよ。そっちの二人は、あたしがレイノス来たことがないんで案内について来てくれたんだ。覚えておくといいよ。将来の勇者のパーティーメンバーだから」


 興味を覚えたか、アンセリの方に視線を向ける隊長さん。

 アンセリは今日これからのことについて話しているようだ。


「勇者というと、例の『スキルハッカー』の固有能力持ち?」


 あたしのことを知ってるくらいだから、当然『スキルハッカー』の情報も持ってるんだな。

 仕事柄『アトラスの冒険者』詳しいのか、あるいはこの隊長さんがその手の話好きなのか。

 いずれにしてもソル君のことは教えておいてあげるべきだな。


「うん。『スキルハッカー』持ちはソール君っていう一四歳の男の子なんだ。クエストの進捗状況は、もうすぐギルドまで来るくらい」

「まだギルドまで来てない冒険者のことをよく知ってるな」


 苦笑する隊長さん。

 まあチュートリアルルームにはよく御飯食べに行くし。


「なるほど。『アトラスの冒険者』は最初が厳しくて脱落者が多いと聞くが、『スキルハッカー』の子は順調にクエストをこなしてるんだな。何よりだ」

「隊長さんは『アトラスの冒険者』について詳しいんだねえ。何でかな?」

「共同作戦を行うこともあるからな。多少はね」


 なるほど共同作戦ね。

 ……貴重な情報を得られるかもしれない。

 突っ込んでみるか?


「……隊長さん、『大掃除』について何か耳にしてる?」


 小声だがストレートにぶっ込んでみた。

 隊長さんは驚いたようにこちらを見、声を潜めて言う。


「……この件についてはわけあって情報共有が禁止されているんだ。ギルドで聞いたのではなかろう? 君の情報収集力には感服するが、秘密が漏れると大変なことになる恐れがある。七日間は口外を避けてくれ」

「りょーかいでーす」


 わけあって情報共有が禁止?

 どんなわけだ?

 いや、情報収集力に感服されてもまるでわからんのだが。

 

 今ある『大掃除』の情報を整理する。

 『アトラスの冒険者』だけでなく、カラーズ各村の代表やレイノス警備兵が参加するおそらく荒事。

 話すの禁止って、まさか宗主国の帝国に対する蜂起?

 いや、参加者の理解を得られない計画のはずがない。

 ならば秘密にするのは何故だ?

 秘密が漏れるとどう大変なんだ?


 どうも大層な計画らしい。

 七日間口外を避けてくれというのは一つのヒントだな。

 それ以上の情報が得られない以上、『大掃除』について考えるのは徒労ではある。


「あたし、レイノスの事情には詳しくないんだよ。隊長さんから見て、やっぱり精霊連れは危険だと思う?」

「いや、こんなに可愛らしい精霊なら問題ないと思うよ。ただ中町の連中は別だ。やつらは全てを見下そうとする」

「中町というのは、レイノスの中でも港を中心とした地区だと教えてもらった」

「うむ。カル帝国ドーラ植民地の最も古い集落であり、中町内の住民は自分らのことをドーラ人とは一線を画した存在だと思っている。考えてみれば、レイノスの揉め事はほとんど住民同士の意識の差が原因だ。いい加減にして欲しいものだが」


 おいおい、レイノスの治安を守るはずの警備兵隊長さんも上級市民否定派か。

 これってかなり根深い問題なんじゃないの?


「隊長さん、ごめんなさい。あたし達市内でちょっと問題起こすかもしれない。ただ皆さんのお手を煩わすような危ないことにはなんないから、許してね」


 隊長さんは好奇の目で見ながら言う。


「……ほう、面白いことをしてくれるんだな? 期待してるよ」


 期待されちゃったぞ?

 実はあたしも楽しみなのだ。


「お待たせしました!」


 先ほどの警備兵が駆け込んできた。


「許可証が発行されましたので、御携帯ください。どうぞ」


 一枚の紙を渡される。

 何々、当許可証を所持する者、レイノス副市長オルムス・ヤンが身分を証明するもの也。

 えっ、副市長?


「副市長って偉い人なんでしょ? フットワーク軽っ!」


 隊長も目を瞠っている。


「これ直筆だな。精霊使いに興味を持ったか、『アトラスの冒険者』と揉めたくないのか。どっちだか知らんが、ともかくこれを持っていれば大手を振って市内を歩けるぞ」

「隊長さん、警備兵さん、ありがとう!」

「気をつけてな」


 意気揚々と門を潜ってレイノスの市内、外町に至る。

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