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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第699話:『ララバイ』

 残り七人の固有能力持ちの中から、一人の輸送隊員を選ぶ。

 緊張する子供達。

 ハハッ、これは運じゃないわ。

 祈ったってムダだわ。


 魔法系の固有能力持ちらしい子が二人いる。

 魔法系はレベルが上がると魔法を習得していくから、レベリングの効果が確実にある。

 輸送隊の戦闘力として計算できるが……。


「君がいいな」


 結局魔法系の能力持ちじゃない子を選んだ。

 薄緑の髪色をし、若干荒んだというかニヒルな雰囲気を感じる子だ。

 手袋をしている。

 未成年といっても、もうすぐ成人なんじゃないかな。

 メチャクチャレアってことじゃなさそうだが、ちょっと危うい固有能力の持ち主と見た。


「あとの子は今日はごめんね。でも固有能力持ちなのは確かだから、そっちを生かしていく手はあるよ。頑張って!」

「「「「「「はい!」」」」」」

「さっきも言ったけど、自分の力を知ることは重要だぞー」


 赤の民ビルカに鑑定してもらうといいと思うよ。

 レベリングの価値のある固有能力なら、暇な時付き合ったるわ。

 オイゲンさんが言う。


「フリッツ、精霊使い殿のお眼鏡にかなって良かったではないか」

「ああ」


 照れたようにぶっきらぼうに答えるこの子、フリッツって言うのか。

 でも嬉しそう。


「よく知ってる子なの?」

「孤児でしてな。面倒をみてやっておるのです。保護者の許可が必要ということなら、わしが保証人になりますので」


 全く問題ないな。

 白の民ケスと同じような身の上だ。

 あたしも母ちゃんが亡くなってから孤児だったけど、ドーラは皆が面倒みてくれる土地柄とゆーことがある。

 生きていくだけなら、親がいなくてもそう困ることはないのだ。

 あたしにはクララもいたしな。


「フリッツの何が精霊使い殿の琴線に触れましたかな?」

「固有能力だね」

「ほう? フリッツは利便性の高い固有能力持ちですか」

「いや、悪いことにも使えそーな固有能力なんじゃないかと思う。しかも強めに発現してるっぽいんで、もう自分の力をある程度把握してるんじゃないかな?」


 ヤバめの固有能力は毒にも薬にもなる。

 こういう子は早めに正しい方向に導いてやった方がいいと思う。


「フリッツよ、どうなのだ?」


 オイゲンさんの問いには答えず、手袋を外して言う。


「精霊使いさんよ。握手してくれればオレの能力がわかる」

「そお?」


 フリッツと握手する。

 が?


「……ごめん。ちょっとわかんないみたい」

「そ、そんなはずは……」


 フリッツうろたえてるけど、握手するだけで発動する能力なのか?

 あたしが可愛いから、緊張してうまいこと能力を発揮できなかったとか?

 レベルが高いから通用しなかったんだろうって?

 まーあたしもそんな気はするけれども。


「どれ、わしと握手してみよ」

「……ああ」


 今度はオイゲンさんと握手。


「こ、これは……」


 オイゲンさんが何か言いかけたが崩れ落ちる。

 えっ? オイゲンさんは上級冒険者レベルだぞ?

 フリッツなんかレベル一だろうけど、レベル差覆して効いちゃうってすごくね?

 オイゲンさんを助け起こす。


「オレの手に触れた者は眠りに落ちるんだ」

「……『ララバイ』の固有能力か」

「『ララバイ』?」


 オイゲンさんは知ってるらしい。

 相手を眠らせちゃう固有能力?

 ひょっとしてあれか、グリフォンを眠らせて羽を毟ったという。

 あたしは睡眠抵抗あるし、運のパラメーターも高いから効かないのかもな。


 しかし保護者代わりのオイゲンさんが能力持ちだと知らなかったということは、相当周到に隠してたってことか。

 フリッツやるなあ。


「夜泣きする赤ちゃんを眠らせるのにいいですねえ」

「あははっ!」


 エルマとイーチィはのん気だな。

 とゆーか、いつの間に仲良くなったんだこの二人?


「通常は低レベルの内から瞬間的に眠りに落とすなんてできない能力なのですが」

「よほど強く発現してるんだねえ」


 自嘲気味に言うフリッツ。


「コントロールできないんだ。だからいつも手袋をしている。呪われた手だ」


 苦渋に満ちた表情を浮かべるフリッツ。

 しかしオイゲンさんが何でもないことのように言う。


「レベルさえ上がれば制御はできるはずだ」

「そうなのか?」

「うむ。高レベル者の『ララバイ』ならば、手で触れる必要すらない。少々離れた位置からでも眠らせることができる」

「『ララバイ』ってかなりヤバくね?」


 フリッツは眠らせる効果だけ強く発現してるってことか。

 もちろん本来はレベルが上がんなきゃ使いものにならない能力なんだろうけど、フリッツの場合はちょっと歪に発現してるってことなんだろうな。

 考えてみりゃ、触んなきゃ発動しない能力だったらグリフォン眠らせるのもメッチャ難しいわ。

 羽毛布団なんて悠長なこと言ってられないわ。


「精霊使い殿がフリッツを見出してくれてよかったです」

「ええ? 偶然だよ。レベル上げ行くぞー」


          ◇

 

「フリッツさんの手袋はファッションなのかと思っていました」

「僕もです」


 エルマとペーターの言葉に苦笑するフリッツ。

 ペーターとは例の一〇歳の子の名だ。

 ちなみにフリッツとペーターは、オイゲンさんにナップザックを背負わされている。

 探索の基本だからと言っていたが、長い時間魔境にいるわけじゃないんだけど。


「私、すごく楽しみです!」

「おお? イーチィが期待してくれるのか。じゃあなるべく喜んでいただけるように努力するよ」


 エルマの家に着く。

 転送魔法陣から魔境へ。


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん、エルマさん。こちらの方々は?」

「カラーズ~レイノス間輸送隊の新しいメンバーだよ」

「もうさほどレベリングは必要ないのでは?」


 言外にもう戦争はありませんよね、との意味が込められている。

 まあ戦争はね。


「この前掃討戦跡地で、大柵が破られて魔物が侵入する事件があったんだ。魔物避けの貼り損ないがあったみたいでさ。非番の輸送隊が急行して人的被害はなかったけど、これからは移民も来るからね。高レベル者の数は必要だなーって感じた」

「ああ、アルハーン平原はまだ魔物の危険がありますか」


 オニオンさんがうんうんと頷いている。

 西域でもそうでしょ。

 ドーラには魔物と戦える人員が必要だよ。


「じゃ、行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及び妹達その他二名出撃。

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