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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第697話:イーチィと緑の民の村

 ――――――――――一四〇日目。


「サイナスさん、おっはよー。ありゃいないや。ショップの方かな?」


 今日はいい天気、緑の民から輸送隊員を選抜しレベリングする予定だ。

 うちの子達を連れて灰の民の村へ来た。

 サイナスさん家には誰もいない。


「あたしがわざわざ足を運んでやってるのに、留守とはどーゆー了見だ」

「ユー様、今日はサイナスさんに用はないのでは?」

「言われてみれば。何となくノリで入ってきちゃったよ」

「緩衝地帯行きやしょう」

「レッツゴーね」


 灰の民の商売がどうなってるかも気になるしな。

 緩衝地帯へ。


「あ、やっぱりサイナスさん、こっちにいたんだ」

「やあ、いらっしゃい」


 サイナスさんはショップで店番? 呼び込み? をしていた。

 つか立ってるだけじゃん。


「煽って売ろうとはしないの?」

「まあ一日だけ売れ過ぎても需要を読みづらくて困るから」

「それもそーか」


 毎日売れ過ぎるように考えたいところだが、作物の供給量自体に限界があるしな。


「灰の民の商売は問題ないんでしょ?」

「農作物ということなら好調だね。移民が来ればもっと売れるだろうし」

「農作物以外に売るものあったっけ?」

「ちらほら問い合わせがあるのは石けんだな」


 灰の民製の石けんは質がいいって聞いたことあるな。

 他色の民にも知られているのか。


「石けんは生活必需品でしょ。しかも宣伝の必要もなく良さが知られているものを作って売らないのは何でなの?」

「単純に材料の植物油が足りないから」


 他色の民との垣根が低くなって交易が始まるって最初から予想できていたなら、その前年から油の取れる植物の生産を増やしていたろう。

 でも去年いきなり交易開始だったもんな。

 準備できてるはずがなかった。


「今年は油も拡大生産するんだ?」

「ああ。だが石けんまではとても手が回らないだろうな。食用油自体の引き合いも増えるだろうし」

「むーん?」


 大量移民が来ることがわかりきってるからか。

 重要性としては食用作物 > 油 > 石けんの順だ。

 灰の民は人口自体も少ないしな。


「儲けるために灰の民は、食用作物よりも工芸作物を作るべきなのかなー」

「油を取るのも食用作物からだけどな。現在はほぼ」


 それ以上何も言わず口を閉ざすサイナスさん。

 わかる。

 灰の民はあんまり儲けようって気がないし、交易にも消極的だから。

 また移民が多いことがわかりきってる今年は、食べられるもの以外を作ろうっていう気運にならないだろう。

 舵取りが難しい。


「族長は大変だねえ」

「ハハッ、わかるかい?」

「あたしはあたしの仕事をするわ。行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


 黄の民のショップへ。


「フェイさん、おっはよー」

「待っていたぞ。精霊使いユーラシアよ」


 いつもいつも挨拶が大仰だなあ。

 ……ひょっとしてあたしに反感持ってる親族関係の人が、近くにいるということかな?

 一応注意。


「姉様!」


 イーチィだ。

 楽しそうだね。


「じゃ、行こうか」

「はい!」

「姐さん、よろしくお願いしやァす」

「うん、任せて」


 眼帯男がデカい身体を縮こまらせて言ってくる。

 妹を可愛がってるみたいだな。

 微笑ましい。


「しゅっぱーつ!」


 緑の民の村へ。


「イーチィは歳いくつなの?」

「今日で一四歳になりました」

「誕生日おめでとう! 何もないからぎゅーしてやろう。ぎゅー」

「えへへ、ありがとうございます」


 エルマと同い年だったのかよ?

 子供っぽいとこあるけど身体が大きいし、あたしと同じくらいかもと思ってた。


「緑の民にあたしの妹分の冒険者がいるんだ。今日その子に手伝ってもらうの」

「姉様の妹分……」

「妹は何人いてもいいんだぞー」


 何だ、羨ましいのか?

 イーチィをもう一度ぎゅっとハグする。

 可愛いやつめ。


「イーチィは緑の民の村行ったことある?」

「初めてです! 他色の村の中に入ったことがなくて」

「普通、そーだよねえ」


 族長クラス以外はあんまり他所の村に行く機会はない。

 あちこちに呼ばれたり用を作ったりするあたしが例外なのだ。

 交流が深まってきたから今後は行き来が多くなるかもしれないけど、緩衝地帯で用足りること多いだろうしな。


「でも黒の民の村の門までは行ったことがあります」

「門まで? どういうこと?」


 黄の村と黒の村は確かに近いが?


「黒の民の村の門はおどろおどろしいでしょう? 黄の民の子供達の間では、肝試しというとあの門まで行くのが定番なのです」

「なるほどっ!」


 あんな趣味の悪いドクロ門でも利用価値があるんだなあ。

 あれ? でもインウェンはドクロ門この前初めてだって言ってたぞ?

 子供の頃、皆と肝試ししなかったのかなあ?


「あ、緑の村の門は大木なのですね」

「門は部族の特徴が出てて面白いよ」


 大木の門から村内へ。


「あっ、精霊使い!」

「こんにちはー」


 村人が話しかけてくる。


「緑の民からも輸送隊の人員を選抜するって話じゃないか」

「だから今日来たんだよ。協力的な人がいるといいけど」

「族長が募集したんだ。四〇人近く集まってるぜ」

「四〇人?」


 予想外だな。

 緑の民って暇なんかな?


「ビックリするほど大人数だな。今の輸送隊はまだ、あんまり稼げる仕事じゃないんだけど?」

「白の民や灰の民で子供の輸送隊員がいるそうじゃないか。それを聞きつけて、レイノス行ってみたい、大人扱いされたい子供が大勢押し寄せたんだぜ」

「なるほどー」


 子供達だったか。

 イーチィも目を輝かせている。


「私もなんです。どんな楽しいことがあるかと、すごく楽しみなのです!」

「うーん、商売だからな? 子供ばっかりだと信用に関わるんだけど。ま、いいか」


 子供ったって、成人間近の子も多いはず。

 上手いこと人員を配分すれば構わんだろ。

 知識の吸収も早いだろうし。


 族長宅の前に来た。

 マジだ、子供多いな。


「こんにちはー」

「精霊使い殿!」

「お姉さま!」

「盛況ですねえ」

「ハハッ、交易と輸送の注目度が高いのですぞ」

「この子は黄の民の輸送隊ズシェン隊長の妹イーチィ。彼女も新人輸送隊員で、待望の白魔法使いなんだ。こちら緑の民のオイゲン族長と、同じく緑の民の冒険者エルマだよ」

「よろしくお願いします!」

「ほう、白魔法使いですか。活躍を期待しておりますぞ」

「こちらこそよろしくお願いします!」


 顔合わせはお終いっと。

 オイゲン族長が新輸送隊員候補者達に声をかける。

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