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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第696話:スリルとサスペンスまでサービスするのに

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後にヴィル経由の通信を行う。


『ああ、こんばんは』

「今日あちこち行ってきたんだ。細々とした用があってさ」

『ユーラシアはあちこち行けて羨ましいなあ』

「『アトラスの冒険者』のいいところの一つだね」


 転移の玉をもらった時、メッチャすごいアイテムだと思ったもんだ。

 今でもその認識は変わらないが。


「サイナスさんもいろんなとこ行くのは可能だよ」

『試しに聞くけどどうやって?』

「まず魔境でレベリングするじゃん?」

『……』


 そこで黙んないでよ。

 輸送隊員だって全員がやってることだわ。


「レベル二〇以上になれば飛行用パワーカードの『遊歩』が使えるから……」

『全力で断わる』

「サイナスさんにはお世話になってるから、魔境レベリングはタダでいいよ。ついでにスリルとサスペンスをサービスしちゃう」

『全力で断わる』


 もーサイナスさんはヘタレなんだから。


「西域の自由開拓民集落ザバンに行ってきたんだ」

『お茶の産地という?』

「うん。プリンスルキウスとイシュトバーンさんを連れてね。で、現地でパラキアスさんと待ち合わせ」

『ん? やけに大物揃いだね』

「ザバンのお茶がすごいって騒いでるの、あたしだけだからさー。皆認めてるんだぞ、マジで売り出すから気張れよって、生産農家に発破かけに行ったの」

『君、そういうところは本当に気を使うよな』

「信用は大事だよ」


 物事とゆーものは、信用があって儲けられてリスクがない方向へ転がると決まっているのだ。

 あたしもウィンウィンな話は景気よく転がしたいしな。

 ザバンのお茶は素晴らしいので、いずれ村をあげて大々的に栽培して欲しい。


「例の超すごいお茶は、政府が買い上げることに決まった。サイナスさんのアイデア通り、プリンスの認めた商人に売るって形になりそう」

『いいじゃないか。今日は特にトラブルもなく終わったんだね?』


 ところが予想外の要素が。

 あたしのエンタメに多いやつ。


「ザバン行ったら、パラキアスさんとバルバロスさんが睨み合いしててさあ」

『バルバロスって『西域の王』の?』

「そうそう」

『かなりのわからず屋だって話じゃないか。揉めたのか?』

「特には。デス爺と協力して西域よろしくねって頼んできた」

『パラキアス氏と睨み合いしてたんだろう?』

「何で睨み合いしてたんだろ?」

『オレに聞くなよ』


 ま、どーせ気に入らないパラキアスの野郎が己のナワバリの西域で何してるんだ、って思っただけだろ。

 どうってことないない。


「でもやっぱバルバロスさんもひとかどの者って感じだわ。実力者に会えると、刺激があって面白いねえ」

『ユーラシアは人に会うのを、本当に楽しそうに話すな』


 楽しいんだもん。


「クマみたいなおっちゃんだったよ。ヴィルもクマぬか? って言ってた」

『ハハハ、ヴィルにも会わせたんだ?』

「将来連絡取るかもしれない相手には、ヴィルを会わせとくことにしてるんだ。便利じゃん?」

『悪魔に拒否反応ある人はいないのか?』

「今んとこいないなー。聖火教徒でも大丈夫だし」


 ヴィルはとてもいい子だからね。


「で、その後パラキアスさんと別れて、プリンス、イシュトバーンさん、バルバロスさんの三人連れて、塔の村行ってきたんだ」

『デスさんとバルバロス氏の連携の仲立ちということか?』

「名目上はそう」

『ん? 企みがあったのかい?」

「とゆーほどのことでもないけど、バルバロスさんったら、このなりだと娘は近寄ってこないって寂しそうだったからさ。塔の村のエル、リリー、レイカを紹介したの」

『……わかるようなわからないような』

「オルムスさんとバルバロスさんの対立って、オルムスさんが優男でモテるからってのが土台にある気がするんだよね」

『マジかい?』

「多分」


 統治思想の対立ほど根深い理由ではないのかもしれない。 

 けどバルバロスさんの嫉妬が、少なくとも修飾要因にあるのは確実だと思うんだな。

 乙女の鋭いカンによればだが。


『では、これで西域は丸く収まる?』

「だといいなー」


 さすがにオーケーかまでは保証できないってばよ。

 オルムスさんとバルバロスさんの対立と、個々の自由開拓民集落がやっていけるかは関係ないんだもん。


『ルキウス皇子とイシュトバーン氏を塔の村へ連れていったのは?』

「プリンスはリリーがどんなところで暮らしてるか知りたいだろうし、あたしとイシュトバーンさんは画集のモデル頼むって用事があったしね」

『モデルは三人娘だな? 了解もらったのか?』

「もちろんだよ」


 画集のモデルも中核どころは固まってきた。

 全部で二〇人くらいになりそう。


『メキスだったか? 潜入工作兵の隊長さん、ルキウス皇子に会わせたのか?』

「チラッと考えたけど、今日は時間なかったな。いずれ機会があったら会わせようかと思ってる」


 情報という面では、ドーラのド田舎で畑仕事してるメキスさんが提供できるものは何もないだろう。

 でも積もる話もあるんじゃないかな。


「画集の絵描きは明日からスタートの予定だよ」

『明日? 新人輸送隊員レベリングの日だぞ。忘れてないだろうな?』

「やだなー。新人の選定も楽しみだから覚えてるよ」

『君、楽しみじゃないと忘れそうな物言いだな?』

「否定はしないけれども」


 アハハと笑い合う。


『午後に絵ということか』

「うん。カトマス行くんだ。最初のモデルはマルーさんの孫娘だよ」

『『強欲魔女』の? イシュトバーン氏との過去の因縁とかは問題ないのか?』


 やはりサイナスさんも気になる部分か。


「あたしもちょっと注意すべきポイントだと思ったね」

『思うだけで放っておきそう。揉めたら揉めたでエンタメだわとか考えてそう』

「画集は商売に絡んでるんだから揉めたくないわ。互いにクソジジイ、クソババアと呼び合う仲って言ってたから、全然大丈夫だなー」

『君の感覚は本当にわからない』


 雰囲気だってば。

 大丈夫なもんは大丈夫としか。


「じゃ、サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ。活躍は結構だが、たまにはゆっくり休めよ』

「いやー、何もしないと退屈なんだよね」

『パワフルだなあ』


 もうちょっと乙女にかけるのに相応しい言葉にならないのかなあ。


「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はまず、緑の民の村だな。

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