第694話:グロテスクな愛嬌
フイィィーンシュパパパッ。
日課であるザクザク宝箱のイベントに来た、が?
「やっぱり宝箱あるじゃないか」
「姐御、海岸には新しい『地図の石板』はなかったでやす」
「とゆーことは、まだこのクエストは継続中ってことだね」
「オールかっぱぐね!」
「その通りだ!」
あたしにもらわれたい宝箱が、今後もザクザクだね。
これがハッピーライフハッピークエストか。
クララが指摘する。
「でも、宝箱の数が一六個ですよ? 昨日と同じ数です」
「あれ? 本当だ?」
クララは細かいところにすぐ気付いて偉いな。
『ハズレ以外の全ての宝箱を開けると、次の日は宝箱が一つ増えます』のルールが適用されるなら、今日の宝箱は一七個並んでいるべきだ。
しかし『宝箱は一つのハズレ以外、残り全てにお宝が入っています』『ハズレを引くと終了、次の日からチャレンジできなくなります』が有効なら、消化不良ではあるがクエスト終了でもおかしくない。
主催者はどう整合性を取るつもりだろうな?
「あっ、ユー様! 立札表面の記述がかなり変わっています!」
「よーし、他ならぬあたしにお宝を貢いでくれる主催者のゆーことだ。読むだけは読んでやろうじゃないか」
「納得するかは別なんでやすね?」
「そりゃそーだ」
ダンテよ、肩を竦めてふーっての様になってるよ。
立札の内容はどれどれ?
稀鏡の月一六日のイベントの扱いについて。
同等の宝箱一つをハズレ扱いにする試みでございました。
が、『注:お宝が入っている宝箱に罠はありません』の記述から、罠のない宝箱はお宝扱いであるとするのが妥当であると思われますので、かのイベントはノーカウントとし、『ザクザク宝箱! アイテム長者は君だ!』は終了いたします。
なお、件のお宝は差し上げます。
「あれっ? ザクザク宝箱クエスト終わっちゃったぞ?」
「続きが書いてありますよ」
稀鏡の月一七日以降について。
新イベント『ザクザク宝箱! 一六の魅惑!』を開催いたします。
宝箱は一六個に固定、一つのハズレ以外残り全てにお宝が入っています。
一日に一回チャレンジ可能です。
ハズレを引くと終了、次の日からチャレンジできなくなります。
どうぞお楽しみください。
「裏面の記述は変わりありません」
「ははーん、毎日ぶん捕られるお宝が増えていくのに耐えかねて、昨日の一六個はくれてやるからルール変えさせてってことだね?」
「でやしょうなあ」
「アンフェアね!」
アンフェアなことは主催者も理解しているのだろう。
だから昨日詫びとしてお宝をタダで寄こした。
でも先にお宝渡しといてから、あとで条件変えるのは確かにズルいなー。
昨日もあたし達が全部宝箱開けるのを躊躇すれば、くれる気なかったんだろうし。
もっとも一日ごとにもらえるお宝が増えるなんて、夢みたいなクエストがいつまでも続くと考えるほどあたしも子供ではない。
どこかで何かしてくるとは思っていた。
今までは開ける宝箱が多くなるほど確率論でハズレ(あたしで言う当たり)を引く可能性が高くなるってトラップだったのだろうけど、主催者もあたしの運とカンの良さを理解したんじゃないかな?
これからは変わったことしてきそう。
楽しみだな。
「ま、お宝クエストが続くと思えばいいか」
「珍しく物わかりがいいでやすね?」
「何だ珍しくって。あたしは夢見る子供のように物わかりがいいんだぞ?」
うちの子達がメッチャ笑ってる。
近頃で一番ってくらいウケた。
何故だ、解せぬ?
「モヤモヤする分は、ガンガンして発散するぞーっ!」
「「「賛成!」」」
心置きなく銅鑼を鳴らす。
あースッキリした。
「さて、宝箱いこうか」
「ボス、トゥデイはどれがストライクね?」
「えーと、手前から三列目の右端だよ。あんた達五つずつ開けなさい」
「「「了解!」」」
うちの子達が嬉々として宝箱を開けてゆく。
うんうん、いいね。
今日から開けられる宝箱が一五個で固定なら、うちの子達が五個ずつ開ける勘定だ。
あたしが魔法の葉を引くこともない。
これが平和か。
「現金五〇〇〇ゴールドです!」
「風車の絵だぜ!」
「ペンダントね! マジックアイテム!」
「クマの人形です!」
「現金五〇〇〇ゴールド!」
「ビッグなピクチャーね!」
「魔法の兜です! フルフェイスでない比較的軽いもの!」
「絵だぜ! かなりの大きさの風景画!」
「フィギュアね! ウイングを持つレディ!」
「コモン素材詰め合わせです!」
「絵だぜ! 肖像画!」
「キャッシュ五〇〇〇ゴールドね!」
「絵です! 裸婦画!」
「スライムの人形だぜ!」
「キャッシュ五〇〇〇ゴールドね!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」
「しゅーりょーでーす!」
銅鑼のいい音が響く。
惚れ惚れするよ。
「今日も無事、たくさんのお宝をゲットすることができました。主催者さんの御好意に感謝しましょう!」
さーて、お宝の検証だ。
人形ってのはあくまでも人の形してるべきなんじゃないの?
クマやスライムの人形っておかしくない?
「と、思っていた夢見る子供の頃があたしにもありました。でもこれは紛れもなく人形だね?」
頷くうちの子達。
クマ人間とスライム人間だ。
何だこれ?
「尋常でない気味悪さでやすね」
「そーだね」
「アートのカテゴリーね?」
「尋常でないものを全てアートに押し込んだら、アートも迷惑じゃないかなあ? ペペさんが物申しそう」
「でも、愛嬌がありますよ」
えっ? 今何と?
いや、こーゆー肌に泡立つような感情を起こさせるのはアートの内かなとチラッと思ったけど、愛嬌?
「こんなグロテスクなものを『愛嬌』ですませたぞ? 大変だ! クララがどうかしちゃったよ。この部屋のせいかもしれない。遠くから吹っ飛ばそう」
……間違いない。
ビクッとした気配が微かにあった。
開けなかった宝箱の中からだ。
やはりうちの子達は気付いていないようだが。
多分主催者で、かなり気配を消すのが上手なやつみたい。
知らんぷりしとくか。
「クララはあのクラッシャーコケシと仲がいいくらいでやすから」
「もっともなことだね」
「ひどくないですか?」
「クララよ、あんたが今受けている不当な扱いは、いつもはあたしが受けているやつだぞ? ちょっとは尊敬しなさい」
アハハと笑い合う。
満足するまで銅鑼を鳴らしたあと、転移の玉を起動し帰宅した。




