第691話:性質の悪い阿漕なやつ
『西域の王』バルバロスさんを半分納得させたところで再び話を変える。
幻惑させるためってこともあるけど、話しとかなきゃいけないことがあるから。
ドーラには問題が多過ぎるんだよなー。
「で、オルムスさんのこともとりあえず置いといて。目先の問題として移民が大勢来ちゃうの。バルバロスさんも聞いてるでしょ?」
「ああ、もちろん」
「いくら自主自立ったって、大してドーラの知識も持たずに来る移民を放っといたら、ロクなことになんない」
「うむ。今は冬だしな。かなりの人数が餓死するか、徒党を組んで野盗化する未来が己には見える」
バルバロスさんもヤバいと見てるのか。
そんな中でドーラ新政府に支持が集まらず、空中分解寸前だったってのは実に危険だった。
未然に防いだあたし偉い。
「大量移民を受け入れられる土地はアルハーン平原しかないから、行政府は東に力を入れざるを得ないんだよ。今の行政府の方針としては、西域はバルバロスさんにお任せってことになってるの」
思わずパラキアスさんを見るバルバロスさん。
「ユーラシアの解釈は独特だが、まあ概ね正しい。西域をどうにかできるほど行政府に資金はない。君の表現を借りるなら、西域の自由開拓民集落群は自主自立で頑張ってくれってことさ」
「方向性としては、やっぱり売れるものがあると強いねえ。あと一番西の塔の村が順調だから、街道沿いは宿場町需要が大きくなるよ。西域はバルバロスさんがリーダーシップを発揮して、何とかしてちょうだい」
レイノスをオルムスさんに任せ、バルバロスさんが西域の面倒をみる。
今までとほぼ変わらない構造ならば受け入れやすかろう。
とゆーか当面そうするのが一番丸く収まる。
「わかったぞ!」
こっちも良し。
最後だ。
「もう一つ。帝国との関係とプリンスの立場ね」
「うむ、大いに疑問なのだ。新大使として実務派を寄越すという話じゃなかったか? あ、いや、殿下が実務派でないと言っているわけではないが」
やはりバルバロスさんは、プリンスが大使としてドーラに来るに至った経緯の推測を聞いていない。
バルバロスさんにやる気を出してもらうためにぜひ知っててもらいたいな。
弱い立場の者に手を貸すの好きそうだから。
「今帝国は皇帝が病に臥せっていて、皇位継承順位一位の第一皇子が健康上の問題あり。事実上の最高実力者がドーラに攻めようとした主席執政官第二皇子なんだ。ここまでいいかな?」
「うむ」
「で、第二皇子は次席執政官だった第四皇子のプリンスをライバルと見てるっぽい。それで随員なしでドーラに飛ばした」
驚いてプリンスを見るバルバロスさん。
「随員なし? バカな。ドーラを舐めくさっていやがるのか?」
「ドーラを舐めくさっていやがるんだよ」
「事実だ。しかしドーラ政府が分を超えて新大使に助力することはできない。主席執政官の知るところにでもなれば……」
「なるほど、帝国最大の実力者を敵に回すことになるのか。厄介な……」
パラキアスさんが口を挟む。
プリンスにも聞かせておきたいんだろうな。
「理解が早くて助かる。行政府は大使の扱いを、表向きドーラ政府と無関係である精霊使いに一任した」
バルバロスさんがあたしとプリンスを代わる代わる見る。
「……殿下のレベルが高いのは元々ではなく?」
「あたしが魔境でレベリングした。ドーラからは従者をつけるのさえ憚られるじゃん? じゃあプリンス自身に強くなってもらうしかない。自主自立だね」
「ハハッ、精霊使いユーラシアの見識が優れていることはよおくわかった。ユーラシアが十人会議に参加せず、現在でも民間人の立場でいるのは、ここまでの展開を見通してのことなのか?」
「いや、偶然。あたし会議の時ドーラにいなかったから」
「真面目な会議は背中がかゆくなっちゃうからムリと言ってたぞ?」
「何でバラすかなもー!」
笑い。
緩んだ雰囲気になる。
「この流れで第二皇子の思惑通りになるのは、まったくもって面白くないじゃん?」
「まったくもって面白くないな!」
「だからプリンスを応援することにしたんだよ。恩を売りつけたプリンスが皇帝になってくれると最高でしょ?」
「ガハハ、最高だな。よし、わかった。己は何をすればいい?」
バルバロスさん、素直じゃないか。
「輸出品目を増やしたいんだ。プリンスの名前で帝国に宣伝できれば実績が上がるし、ドーラも儲かる」
「うむうむ、手を携えていけるのがいいな!」
「でしょ? ザバンのお茶は戦略商品なんだ。最高のパフォーマンスを発揮するために水魔法が必要なんてお茶はどうせ大金持ちしか買えないから、プリンスが認めた商人にしか売らないって形にして、代わりに思いっきりぼったくってやろうと考えてる」
「殿下に独占権を与える代わりに、その信用を利用してぼったくるわけだな? ガハハ、痛快ではないか!」
ノリがいいなあ。
ぼったくるぼったくるって聞いてプリンスは苦笑してるけど。
「気に入ったぞ! 精霊使いは賢いな」
「バルバロスさんは褒めてくれるけど、そこの連中は性質の悪い阿漕なやつくらいにしか思ってないんだよ」
「「「!」」」
パラキアスさんイシュトバーンさんプリンスがビクッとしたわ。
そーゆーのわかるからな?
「バルバロスさんには西域の各自由開拓民集落の産物のリストを作って欲しいな。直接売れるものじゃなくても、材料として使えるものがあるかも知れないし」
「西域の自主自立にも役立つということだな? うむ、わかった。行政府に提出しておくぞ」
「で、さっきパラキアスさんが使ってた飛行魔法のタネいる? お仕事にメッチャ役立つよ」
『遊歩』のカードを取り出す。
しげしげと見るバルバロスさん。
「これは……パワーカードだな?」
「知ってるんだ? 起動すると一人用飛行魔法が発動するパワーカードだよ。しかも事実上マジックポイントを消費しない優れもの。レベル依存なのが難点だけど、バルバロスさんなら問題なく使えるなー」
「貸してみろ」
「自分の魔力を流す感じで持って、飛べって念じて。強く念じ過ぎると……」
バルバロスさんが雄叫び上げながらすっ飛んでった。
と思ったら失速したぞ?
えらく危なっかしいな。
あ、ある程度コントロールできるようになったか。
戻ってきてひゅっと着地する。




