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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第688話:クマ男

 イシュトバーンさんとプリンスルキウスを我が家に連れてきた。

 今から転送魔法陣でほこら守りの村に行き、さらにそこから自由開拓民集落ザバンまで飛ぶ予定だ。


「おい、これ凄草じゃねえか。あんたこんなもん栽培してるのかよ?」


 イシュトバーンさんが大声上げてるけど。


「あたしじゃなくて、うちの畑番の精霊の仕事だよ。すごいでしょ?」

「照れるぜ、ユーちゃん」


 いきなり案山子が喋ったことでビビるイシュトバーンさんとプリンス。


「……精霊。依り代タイプか」

「うん。土の中の養分とか水分を、畑の作物に分配できるスペシャリスト」

「いや、オイラが凄草を育てられるのも、ユーちゃんが環境を整えてくれたおかげなんだぜ」

「どういうことです?」


 プリンスが聞く。


「凄草の生育には、土の中の魔力濃度が必要なんだよ。あっちの敷地外の石で魔力を集めてこっちの畑の石に溜めて、それをカカシが分け与えて育ててるの」

「ステータスアップ薬草の栽培が可能だとは……」

「……地中の魔力を集めるのはマルーの技術だな?」

「そうそう。難しくってあたしには理解できないやつ」


 二人が感心してるけど。


「カカシ、一株もらうね」

「おう」

「プリンスは凄草食べたことある?」

「献上されたものを食したことがある。が、印象に残ってないな」

「実に不幸なことだなー」


 抜いたばかりの凄草をプリンスに差し出す。


「食べてみてよ」

「いただこう。む? 素晴らしく甘いな!」

「爽やかな甘みでしょ? これが本物の凄草の味だよ。でも抜いてしばらくすると魔力も抜けてヘタっちゃうの。萎れると不味くなっちゃう」

「知らなかった……」

「精霊使いは変なこと知ってるんだぜ」


 何でイシュトバーンさんが得意そうなの?


「行こうか。転送魔法陣こっちね」

「持っているのは?」

「魔物のお肉だよ。お土産にするんだ。お肉は大体どこ持っていっても歓迎されるから素敵だよ。これはコブタマンのお肉なんだけど、かなりおいしいの。今度ごちそーするね」

「精霊使いは食い意地張ってるから、美味いものはよく知ってるんだぜ」

「冒険者で経験豊富だから、とかゆー理由になんないのかなあ?」


 笑いながら転送魔法陣のある東区画へ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 プリンスとイシュトバーンさんがキョロキョロしている。


「ほこら守りの村か。懐かしいぜ」

「ここは?」

「ドーラの西域街道から少し北に外れた、古い村だ。土着の信仰を中心にまとまってる、一種の宗教集落だぜ」

「イシュトバーンさんはよく知ってるなあ」

「現役時代、特に若い頃はドーラ中回ったからな。あんたはクエストで知ったんだろ?」

「うん。今イシュトバーンさんが言ってた土着の信仰の関係で。御神体が暴走してたってやつ」

「「ほう?」」


 ま、今日は全然関係ないよ。

 少女霊リタは落ち着いてるしな。

 ……リタは画集のモデルになってくれるかしらん?


「集落はどこに?」

「ちょっと奥の開けたところだよ。村にはうちのオレンジ髪の精霊が『肥溜めガール』って呼んでる、すんごい占い師がいる」

「……あんたが評価するほどの占い師がいるってのは初耳だが」

「イシュトバーンさんは知らないと思うよ。まだ五、六歳くらいの女の子だもん」

「ほお?」


 興味津々だね?


「また今度ね。今日はここから南へ飛ぶよ。強歩三時間弱くらいのところだから、プリンスのスピードで一〇分かかんないくらいかな。じゃ、『遊歩』起動して」


          ◇


 身体を浮かせたイシュトバーンさんをあたしが引っ張り、プリンスのスピードに合わせてびゅーんと飛んで街道に出、やや西へ。

 自由開拓民集落ザバンに到着だ。


「引っ張っていけば大丈夫だねえ。新しい知見だった」

「結構なスピードだったぜ」

「まさしく!」


 プリンスが頷いてるけど。


「飛行魔法はレベル依存だからね。うちのクララの全速『フライ』やパラキアスさんの単独飛行なら、今の三倍くらいのスピードが出るよ」

「ほお」


 今日はイシュトバーンさんの興味を引くことがてんこ盛りだね。

 もっともプリンスは魔境でクララの『フライ』を体感してるから知ってるだろ。


 ザバンの内部へ足を踏み入れる。

 あれ、雰囲気が緊張を帯びてるぞ?

 何事?


「こんにちはー」


 こーゆー時はあえて空気を読まずに真ん中を突破するのがあたしのやり方だ。


「よう、村長。久しぶりだな」

「あっ、精霊使い殿、イシュトバーン殿!」


 初めてここに来た時、肉饅頭を勧めてくれたお爺さんだ。

 村長だったのか。


「これ、お土産でーす。村の皆さんでどーぞ」


 コブタ肉を渡す。


「これはありがたいことです」

「それからこちらは新大使として赴任した、カル帝国第四皇子ルキウス殿下だよ」

「えっ! こ、これは失礼を……」

「いや、畏まらんでください」


 恐縮する村長に声をかけるプリンス。


「そうそう、プリンスプリンスっておだてておけばいいから」

「君はもう少し畏まれ」


 アハハと笑い合う。


「えらくピリピリしてる気がするけど、何があったのかな?」

「おわかりになりますか。こちらの茶屋の奥へ」


 軽食屋へ案内されると……。


「こんにちはー」

「やあ、待ってたよ」

「……」


 パラキアスさんが挨拶を返してくれる。

 パラキアスの向かいに立つ、濃いブラウンの髪の毛とヒゲの大男は?

 結構なレベルで、年齢はパラキアスさんやオルムスさんと同じくらいだろうか?

 パラキアスさんに対して敵対的とゆーか、剣呑な雰囲気だが?


「美少女精霊使いとしては、この男どう思う?」

「迫力があるねえ。クマとクマを足して二で割ったような感じ?」

「答えクマじゃないか」


 全員が笑い、思わずクマ男の表情も緩む。


「バルバロスよ。御無沙汰だったな」


 へー、このクマ男が『西域の王』バルバロスさんだったか。

 イメージピッタリだなあ。


 ……パラキアスさんやオルムスさんの話からは、聞く耳持たない人っていう印象だった。

 でもそんなことはなさそう。


「イシュトバーンさんか。足を悪くしたと聞いていたが」

「精霊使いのおかげで歩けるようになってな」

「あたしじゃないってば」


 パラキアスさんがバルバロスさんに紹介する。


「彼女が『アトラスの冒険者』の精霊使いユーラシア。そちらの紳士がカル帝国第四皇子にして在ドーラ新大使のルキウス殿下だ」

「うむ、よろしく」


 握手。

 デカくてごつい手だ。

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