第687話:あたしの影響力
――――――――――一三九日目。
「新しい『地図の石板』が来てるかもしれないから、一応海岸だけチェックしといてね」
「「「了解!」」」
今日はお茶の村ザバンへ行くが、うちの子達は留守番だ。
昨日のザクザク宝箱クエストは少し変だった。
完了のアナウンスがなかったからあれで終わりだとは思わんけど、念のためだ。
「じゃ、行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
まずレイノスのイシュトバーンさん家へ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「おう、待ってたぜ精霊使い」
「え?」
イシュトバーンさんが待ち構えてるじゃないか。
何ぞ?
「これからザバンへ行くんだろ? オレも連れてけ」
「いや、直通の転送魔法陣がないんだって。比較的近いところから飛行カードで飛んでいくんだけど」
昨日そう言ったじゃないか。
イシュトバーンさんのレベルだとスピード出ないから、足手まといだしな?
「近いったって、強歩何時間かの距離はあるんだってば」
「オレは浮くだけにしとくから、あんたが引っ張ってくれればいい」
「……なるほど、考えたね。面白そうだから一緒に行こうか」
「だろう? 決まりだ」
きっと昨日方法を考えてたんだろうな。
努力に免じて連れてってやるか。
イシュトバーンさんも現役時代にはザバンに行ったこともあるだろう。
今でも影響力があって、役に立ってくれるかもしれんし。
「じゃ、プリンス迎えに行政府行くよ」
「おう」
美少女精霊使いとその他一名出発。
「昨日あれから海の王国に行ってたの」
「ん? 何かの買いつけか?」
「いや、単に御飯食べに行ったんだけどね。青汁で口曲がりそーだったから」
「ハハッ、女王は肉好きって話だったか?」
「大歓迎してくれるね」
道々話をしながら行く。
「女王にも画集のモデルオーケーもらったんだ」
「ほう? ウミウシの女王ニューディブラに会えるのか。楽しみが増えたな」
「クララの絵を見せたんだよ。そしたら女王も、これほどの絵師に描いてもらえるのは大変な名誉だって言ってた」
ハハッ、イシュトバーンさんったら満更でもないようだ。
「おう、例のあんたの縁談ってどうなったんだよ? 黄の民のモヒカンとの」
「ああ、話してなかったね。無事終わったよ。目論見通りハッピーエンドでした。でも思ったより面白い話にならなかったんだ。聞きたい?」
インウェンエンドになったことはあたしの望み通りだ。
でも展開が地味だったからなー。
個人的にはもう少し拗れた方が好みなのだが。
「聞かないと落ち着かねえからな」
「じゃあ明日か明後日、ニルエのとこ行って絵を描かせてもらおうか? その時に話すよ」
フェイさんとの縁談はニルエにもチラッと話したことだ。
どう決着したか聞きたいだろうからな。
「楽しみにしてるぜ」
だから薄味の話なんだってばよ。
期待するほど楽しくないと思うけど。
「あっ、ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」
「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」
「そのノリどうにかなんないの?」
新聞記者ズでした。
喜んでるね。
昨日の魔法の葉青汁イベントの記事は好評だったのかな?
「おかげさまで、今朝の新聞は完売です!」
「うちもです! 二割多く刷ったんですが」
「良かったねえ」
「いいのか? あんたが読んだら、もう一度青汁の刑を食らわせたくなるような記事だったぞ?」
新聞記者ズよ、何故目を逸らす?
まーユーラシアペナルティの恐ろしさが周知されればいいのだ。
「と、ところでお二人はどちらへ?」
「行政府だよ。プリンス誘って、ザバンっていう自由開拓民集落行ってくるの」
「ザバン……確かカトマスの西ですね。何の用ですか? 陰謀ですか?」
陰謀ノリが好きだねえ。
芸の一種かな?
「ぼちぼち帝国との貿易が解禁されるじゃん? ドーラから輸出するものがないと、どんどんおゼゼが流出してよろしくない。ドーラがビンボーになっちゃうの」
「大変じゃないですか!」
「大変なんだよ」
イシュトバーンさんがニヤニヤしている。
「そ、それで何らかの陰謀が……」
「押すなあ」
「ハハッ、大した話じゃないんだぜ。ザバンでは茶を作ってるんだ」
「茶? いわゆる本物の茶ですね?」
イシュトバーンさんが目配せしてくる。
軽く流せって? 了解。
「輸出品にどうかって考えてるんだよ。視察に行ってくるの。パラキアスさんと現地で待ち合わせなんだ」
「面白くなくてすまんな」
「いえいえ、十分記事の一つにできますので」
「ごめんねえ。記者さん達の方でも、こんなもの輸出すればいいんじゃないかって調べてくれると嬉しいな」
「行政府が輸出品を求めてるってことは案外重要なんだぜ」
「ああ、なるほど。要望を募る記事もいいですね」
「じゃーねー」
新聞記者ズと別れる。
「あんたの言うことは、自分が考えてるより影響力あるから気をつけろよ。こすっからい商人があの茶に目をつけたらつまらねえ」
「そーか。そうだね」
買い占められたら困るということか。
買い叩かれると茶農家テオさんの損だし、上手く販売できなきゃドーラの損。
プリンスの実績にするという案もパーだ。
新聞記者ズに絡まれた時用に、話すネタはいつも持ってるといいかもしれないな。
行政府に到着。
受付に話しかける。
「こんにちはー」
「あっ、精霊使いさん!」
「プリンスにあーそーぼっ! って伝えてくれる」
「はい、連絡はいただいております。こちらへどうぞ」
二階大使室に案内される。
「失礼しまーす」
「待ってたよ」
プリンスがにこやかに話しかけてくる。
「アドルフごめんね。今日は連れていけないけど」
「ロドルフだというのに」
「ちょっと補佐官っぽくなったね」
「そ、そうか?」
照れるソバカス男。
まったくちょろいぜ。
周りを見渡していたイシュトバーンさんが言う。
「皇子殿下は、美術品に興味はないか? この部屋はどうも殺風景でいけねえ」
「ありますね。老が描いてくれますかな?」
「いや、精霊使いがクエストで手に入れてきた一級品があるんだ。大使室に飾るなら相応しいと思うが……」
「あっ、いいねえ。無料で貸し出すから、イシュトバーンさんの見立てで飾ってよ」
「近日中に持ってくるぜ」
プリンスも喜んでるし、ここに飾られるなら絵も嬉しいだろう。
「さて、行こうか」
転移の玉を起動、イシュトバーンさんとプリンスを連れてホームへ。




