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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第685話:スクワットやってる暇あったら

「サイナスさーん……ありゃ、いないか」


 帰宅後、灰の民の村に来た。

 魔境で取ってきたクレソンを開通したという水路脇に植えてくること、サイナスさんに頼まれていた魔法の葉青汁を持ってくることが目的だ。

 が、サイナスさんがいないとなれば、緩衝地帯か転移石碑で飛んだ先の開拓地だろうな。

 あまりの不味さにサイナスさんが噴き出した青汁を避ける練習までしてきたとゆーのに。

 お土産のお肉と青汁を置いて、緩衝地帯へ行ってみる。


「やっぱここにはいないか」


 野菜は比較的早めに売れてしまう商品だ。

 緩衝地帯に出してるショップはもう畳んじゃったんだろう。

 となるとサイナスさんは、掃討戦跡地の水路の辺に行ってるのかな?


「よう、精霊使い」


 黒フードに声をかけられる。

 あたしに声かけてくるってことは……。


「えーと、買い取り屋さんだよね?」

「何度会ってるんだよ。見りゃわかるだろ」

「わかんないってばよ。黒の民以外はそのスタイル見分けがつかないから」

「そうか?」

「そうかじゃないよもー。ふつーの人間は顔で判別してるの」


 黒の民の感覚は馴染めないなー。

 何で顔見せないんだろ?


「ちなみに黒の民同士はどうやって見分けてるの?」

「フードでだぜ」

「えっ?」


 似たように見える各個人のフードに違いがあるのか?


「あるに決まってるだろ。意匠もそれぞれ違うし、刺繍も入れてるしな」

「いや、黒い糸で刺繍入れられても。とゆーか個々人でフードのスタイルが決まってるんだ?」

「当たり前だろ。でなきゃどうやって見分けるんだよ」


 顔で見分けろ。

 黒の民は一度自分のフードスタイルを決めると変えないということらしい。

 だけどそんな拘りが他色の民に通用すると思うな。


「買い取り屋と認識して欲しければ、名札かタスキをつけてるといいと思うよ」

「ふむ? 前向きに検討してみるよ」


 ぜひ見分けやすくしてください。

 誰が買い取り屋さんだかわかんないのは大変迷惑です。


「ところで商売の方はどうかな?」

「順調だね。もうちょっと資金があればもっと買い取りできて、利用者の利便性が増すと思うんだが。仕方ないとは言え、残念ではある」

「だよねえ。あたしも出資したいところだけど、今おゼゼ足んなくって」

「いや、あんたがよくやってることはカラーズの全員が理解してるぜ。ムリすんなよ」


 不要なものをどんどん売れる社会になれば、経済は回るし物流も活発になる。

 あたしの望む世界に近付くんだがなあ。

 『アトラスの冒険者』であるあたしはともかく、カラーズみたいな田舎ではまだなかなかその域まで行かない。

 

「あ、魔宝玉が少しあるから買い取ってくれる?」

「いいのかい? 魔宝玉はありがたいな」


 差益が大きいって話だったな。

 先ほど魔境で得た魔宝玉を換金する。


「背中に背負ってるのは何だい?」

「これ? 食べられる野草がてんこ盛りだよ。水さえあれば育つやつ。水路開通したって言うから、植えてこようと思ってるんだ」

「おう、あんたは色々考えてるんだなあ」

「賢い頭脳がフル回転なんだよ。でも周りの人は、あたしが勢いだけで物事進めてると思ってるんだよね。大変けしからん」

「間違いじゃねえんだろ?」

「合ってるけれども」


 笑い合った後、買い取り屋と別れる。

 さて、水路はどうなってるかな?

 転移石碑から掃討戦跡地のクー川近くへ飛ぶ。


「ふわー」


 クー川と平行に、見事に水路が完成してるじゃないか。

 あれ、あそこでスクワットしてるのは……。


「カグツチさーん!」

「おお、精霊使いではないか」

「ユーラシア」

「あっ、サイナスさんもいたんだ?」

「ひどいな、君は」

「いや、スクワッターの存在感が強過ぎて、マジで見落としたよ。ごめん」


 アハハと笑い合う。


「立派な水路だねえ」

「この水路とクー川の間は、全て米作に当てたいとのことだ」

「……なるほど、もしもの水害の時、人を守ろうということだね?」


 カグツチさんとサイナスさんが頷く。

 水路クー川サイドの土手を低く、逆の居住域サイドを高くしておく。

 そうすれば増水してクー川や水路の堤防が切れたとしても、逆サイドより西側の居住スペースは守られるだろう、ということだ。


「クー川の流量は年間を通して安定していると聞いている。まず問題はなかろうがな」

「用心に越したことはないねえ」

「ところで精霊使いは何しに来たのだ? 様子見か?」

「魔境のクレソンを植えに来たんだよ」

「魔境のクレソン?」


 カグツチさんにナップザックの中身を見せてやる。


「野草か? 食べられるんだな?」

「うん。水のあるところならいくらでも増えるの。しかも冬でも成長するんだよね」

「ほう」


 カグツチさんが感心している。


「赤の民の村用にももらっていいか?」

「もちろん。これ、なるべくあちこちで増やして欲しいんだ。三分の一くらい持って行ってよ」

「うむ、すまんな」


 常食にも非常食にも使える有用な植物だしな。


「お姉さま!」

「あっ、エルマ」


 緑の民の冒険者にしてパワーカード職人のエルマだ。

 どうしてこんなところにいる?


「今日はクエストでもアルアさんとこでもないんだ?」

「ええ、土を掘り返していると素材が割と出ますから、わたしも引き取っているんです」

「なるほど」


 アルアさんの工房で素材が欲しいから。

 買い取り屋だけじゃなくて、エルマも回収しているんだな。

 カグツチさんが言う。


「エルマは素材の採取と換金を担当してくれているメンバーの一人だ」

「エルマは偉いねえ」

「お姉さまに褒められるほど、わたしは偉くなんかないですよ」


 照れるエルマ。

 可愛いやつめ。


「輸送隊新入りのレベル上げしなきゃいけないんだ。エルマ明後日の都合どうかな?」

「大丈夫ですよ。魔境ですね?」

「楽しい魔境アトラクションだよ。サイナスさん。オイゲンさんとフェイさんに、明後日午前中に輸送隊新入りをレベリングするって連絡しといて」

「ああ、わかったよ」

「エルマ。緑の民からは二人選抜する予定なんだ。一〇人くらい候補集めといてってってオイゲンさんに頼んであるから、明後日集合場所にいてくれる?」

「わかりました!」


 よし、こっちもしっかりした予定になった。

 緑の民でどんな人がいるか注目だな。


「さーて、クレソン植えようかな。カグツチさん、スクワットやってる暇あったら手伝ってよ」

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