第684話:まだ遊べるらしい
泡食って聞いてくるオニオンさん。
「ど、どういうことです?」
「どうもこうも。おっぱいさんからのモーション? 秋波? ラブラブ光線? 好きに思えばいいんじゃないかな」
「何故にワタクシ?」
わからないか。
「おっぱいさんは美人で人当たりいいけど、他人を恐れ入らせるよーなオーラがあるじゃん? 本当に気の合う男性って、マジでほとんどいないんだよ」
「……はい、何となく察していましたが」
おっぱいさんって奢られてても一線引く感じだもんな。
「で、あたしの見るところ、オニオンさんは稀有な例外。おっぱいさんも、何となく自分と相性いいこと感じてたんじゃないかと思う」
「……」
「今度何かのタイミングで会食セッティングするから、オニオンさんもそのつもりでいてよ」
「は、はい。冗談じゃないんですよね?」
「冗談じゃないんだよ。あ、ダンもその場にいたから、魔境に来たら聞いてみるといいんじゃないかな。男性目線の意見があるかも」
「わ、わかりました」
「じゃ、行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
半分呆然としているタマネギを放置してユーラシア隊出撃。
今日も稼ぐぞー。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
一時間ちょっと魔境を満喫した後、ザクザク宝箱のイベントに来た。
日課でありノルマであり冒険者の義務だからね。
「一つ二つはいいけれど」
「姐御?」
「三つ並んで宝箱」
「ユー様?」
「四つ横っちょに宝箱」
「ボス?」
今日もまたうちの子達が心配そうな目で見てくる。
あたしの宝箱に対する賛美の発露だとゆーのに。
「五ついつでも宝箱。六つ向こうに宝箱。七つ斜めに宝箱」
「「「……」」」
「八つやっぱり宝箱。九つここにも宝箱。一〇はとうとうつるっパゲ」
「最後の何でやすか?」
「デス爺が想像の中に割り込んできたんだよ。さすがだなー」
アハハと笑う。
何がさすがなんだか。
「この宝箱部屋もまたよく銅鑼が響くんだよね。海底との趣きの違いを楽しもうじゃないか。ガンガンする人!」
「「「はい!」」」
「あんた達好きだねえ」
「ボスもライクね?」
「ラブだねえ」
鳴らせば鳴る、鳴らさねばならぬ、何事もと言うしな。
気のせいだって?
細けえことはいーんだよ。
「いってみようか!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
うむうむ、毎日のことながら素晴らしいな。
心に染みるいい音だ。
「じゃ、宝箱開けていこうか」
今日は四列四個ずつ、計一六個の宝箱が並んでいる。
整然と並ぶ宝箱は心に感動をもたらすよ。
が……。
「ん? 変だな?」
「ユー様、どうされましたか?」
「クララ、立札に何て書いてあるか、よーく確認してくれる?」
「えっ? わかりました」
表裏がそれぞれこう。
いらっしゃませ。
宝箱は一つのハズレ以外、残り全てにお宝が入っています。
一日に一回チャレンジ可能です。
ハズレ以外の全ての宝箱を開けると、次の日は宝箱が一つ増えます。
ハズレを引くと終了、次の日からチャレンジできなくなります。
どうぞお楽しみください。
注:お宝が入っている宝箱に罠はありません。
注二:銅鑼を鳴らさないでください。
注三:鳴らした場合、ハズレ宝箱での罰則が強化されます。
注四:鳴らした場合、ハズレ宝箱での罰則が本当にひどいことになります!
注五:もういいです。
「今までと書いてあることに変わりはないです」
「何が変なんでやすか?」
「今日、当たりの宝箱がないんだよ」
「ワッツ?」
あたしの言う当たりの宝箱、主催者サイドではハズレの宝箱がない。
主催者もちょっと考えてきたな?
「困ったぞ? 当たりハズレの概念が変わったのかな?」
「ユー様、感覚の異なる宝箱はありますか?」
「ないなあ。全部お宝入りだなー」
『ハズレ以外の全ての宝箱を開けると、次の日は宝箱が一つ増えます』の記述からすると全部の宝箱を開けるべき。
しかし『宝箱は一つのハズレ以外、残り全てにお宝が入っています』ということは一つはハズレ判定のようだ。
そんなのはさすがにわからん。
後付けでハズレ認定してくるのかもしれんし。
逆に言うと、どの宝箱を開けてもひどいことになるおそれがない。
安心して開けられるとも言えるが……。
「当たり引くと明日から楽しめなくなっちゃうのか。実につまらんなー。どーすべ?」
時間稼ぎのために宝箱を開けさせない策にも思える。
小癪な。
「姐御、こんな時は原点に戻りやしょう」
「原点?」
「オールかっぱぐね!」
「……それもそーだね!」
クララが笑う。
「向こうの思惑で決まってしまうのでしたら、期待値が最大になる方向がベストです。このクエストが終わるなら終わるで構わないでしょう。かっぱぎましょう!」
ザクザク宝箱が終わると思うと確かに残念だ。
でも新しい石板クエストが支給されるのは嬉しい。
「おっ、幼女ヒーラーがやる気だよ? 皆の者、開けておしまい! 最後の魔法の葉満載のやつはあたしが開けるね」
「「「了解!」」」
笑いながら宝箱を開けていく。
うちの子達が五つずつ開ける勘定だな。
絵が五枚、変なポーズの男性像が一体、レア素材『巨人樫の幹』『ベヘモス香』が一個ずつ、コモン素材詰め合わせ×二、現金五〇〇〇ゴールド×三……。
「斧ですね。魔法の武器!」
「スキルスクロールね! 『クイックケア』!」
『クイックケア』は基本状態異常を治療し同時にヒットポイントを回復する、戦闘中にのみ使える魔法だ。
使う機会がなければないほどいいスキルではあるけど、いざという時のために習得しときたいやつ。
このスクロールが出たのはありがたいな。
あたしは『クイックケア』を使えるから、素早いダンテが覚えるのがいいか。
「よーし、あたしの番だ。開けるぞー」
あたしが最後になるかもしれない宝箱の蓋を持ち上げる!
「ぎゃーやっぱりハズレだっ!」
予想通り魔法の葉わさわさだ。
うちの子達が腹を抱えて笑っている。
どーしてこれ、あたしが開ける時だけ出てくるんだろうな?
かなり謎だ。
「よーし、ガンガン鳴らすぞー!」
「「「了解!」」」
満足するまで銅鑼を鳴らす。
ザクザク宝箱のクエストは、今日で終わりかも知れないな。
でも転送先が変わらないなら、時々は銅鑼を鳴らしに来ることにしよう。
転移の玉を起動し帰宅した。
……あれ? クエスト完了のアナウンスがないな。
まだ遊べるらしいぞ?




