第681話:量産されていく犠牲者
そして本日のメイン、イシュトバーンVSダン。
レッツファイッ!
「ダナリウス、久しぶりだな」
「クソジジイ、歩けるようになってんじゃねえか」
「精霊使いのおかげでな」
「あたしじゃなくて、クララの魔法なんだけど」
イシュトバーンさんとダンの関係もこなれてきたな。
もうちょっと対決姿勢が鮮明になるかと思って構えてたのにつまらん。
あたしの都合も考えて欲しい。
「ユーラシアさん、用意できました! キャンペーンイベント開始の挨拶よろしくお願いします」
「はいはーい!」
新聞記者ズの声だ。
当然のように挨拶を振られたぞ?
とゆーか魔法の葉青汁の試飲なんて地味なイベントを、記事にして面白くなるくらい盛り上げるには、あたしが司会やるべきだとは思うけど。
新聞記者ズ正解。
あとで褒美として青汁飲ませたるニヤニヤ。
「こんにちはー。寒い中お集まりいただきありがとう。皆さんのアイドル、美少女精霊使いユーラシアですよ」
犯罪防止のための啓発キャンペーンというお堅いお題目だったせいか、何となくノリが悪そーだったのが、一発で砕けた雰囲気になった。
さすがあたし。
誰だ芸人精霊使いだろって言ったやつ。
その二つ名も悪くない気がしてきたけれども!
「近頃導入されました通称『ユーラシアペナルティ』なる刑罰があります。この名前、あたしとしては異議を申し立てたく、命名した新聞社には損害賠償を請求したいところではありますが、ひとまずそれは置いといて」
ギクッとした新聞記者ズ。
安心しろ、絶対に許さん。
「これはマジックポイントを回復する薬草として比較的ポピュラーな、魔法の葉を使用した青汁を飲ませるというものです。ところがですね、どこが刑罰になるんだ? とゆー声が上がってるんです」
頷く人かなり多数。
ふむ、やっぱり魔法の葉の味って知られてないようだ。
あたしも実際に齧ってみるまで知らなかったもんな。
カトマスみたいな冒険者に所縁のある村なら、知ってる人が多いのかもしれんけど。
まあレイノス人には必要のない知識だったわ、昨日までは。
「魔法の葉への理解が浅いと、犯罪の抑止効果がありません。そこで魔法の葉青汁とはどんなものか、皆さんに知ってもらうイベントを開催することになりました。拍手!」
「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」
「試飲用の魔法の葉青汁を用意させていただいてまーす。実際に刑罰に使う一〇分の一以下の量ですので、気軽に飲んでみてください。もちろん身体に害はありませんからね」
興味を持ってるコップを見ている人が何人もいる。
物好きなのか好奇心が旺盛なのか。
刑罰に使う一〇分の一以下の量でも殺傷力(比喩)は抜群だぞ?
公開処刑だぞ?
「なお本日は、新しい大使として赴任したカル帝国第四皇子ルキウス殿下にお越しいただいてまーす。拍手!」
「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」
プリンスが手を挙げて拍手に応える。
感じのいい皇子じゃないか、貫禄あるぜ、などの声が聞こえるな。
『威厳』が効いてると見た。
……帝国の大使であることの反感は全くない。
ドーラの友好独立大成功だ。
「さーて、能書きばっかりじゃ面白くないね。イベントを始めようじゃないか!」
「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」
よーし、掴みはこんなもんだろ。
挨拶を終えて戻ると、ダンとイシュトバーンさんがニヤニヤしている。
「どうした。ユーラシアにしては、大人しいじゃねえか」
「おう、もう少し働いたってバチ当たらねえ」
「何なのあんた達はもー。盛り上がるのはこれからだぞ?」
イシュトバーンさんは違和感を覚えたようだ。
「盛り上がる? そういう催しじゃねえだろう?」
「いや、こいつが言うからには盛り上がるんだぜ」
「黙って楽しみに見てるといいよ」
このイベントが目立たず終わったんじゃ、魔法の葉青汁は恐ろしいという啓蒙活動としては失敗だ。
あーんどあたしの名を冠した罰則が甘く見られるのもひっじょーに面白くない。
つまりあたしはこの催しを成功させる義務がある。
よし、理論武装完了だ。
一人の男の人に狙いを定める。
「おっ、お兄さん飲んでみる? 犠牲者第一号だよ! 皆、拍手!」
「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」
満更でもない様子でグイっと一気飲みする男。
御愁傷様。
「うごおおおええええええ!」
目を白黒させてのたうち回る男。
そりゃそーだ。
一方で見物人達はどっと沸く。
「何だこれ! 意識が飛びかけたぞ?」
「アハハハ、お兄さんナイスリアクション! 最高だったよ! 次の挑戦者は誰かな? 今のお兄さんのリアクションを越えられるか?」
プリンスが手を挙げる。
「では、予がチャレンジしようではないか!」
「おっと、プリンスが自ら犠牲になりに来たよ! 皆わかってるね? 多少リアクションが薄くても褒め称えるんだぞ?」
どっと笑い。
前の男と同じようにコップを煽るプリンス。
「げふげふげふげふげふげふげふげふ!」
寒いのに汗を吹き出しながら、真っ赤な顔で咳込むプリンス。
これが魔法の葉の地獄の味です。
「ひどい……これはひどい……」
「なかなかだったよ! さすがに帝国のプリンスは侮れない男だね! さあ、続いて面白パフォーマンスを見せてくれるのは誰だ?」
イシュトバーンさんとダンが、なるほどこうやって煽るのか。
趣旨変わってねえかなどと小声で話している。
うるさいよ。
「「「「「はい!」」」」」
「五人の挑戦者が現れたぞー! 一番愉快なのは誰だ! タイミングを合わせて飲んでもらおうか!」
群衆から自然とカウントダウンの声がかかる。
「「「「「「「「五! 四! 三! 二! 一! 〇!」」」」」」」」
五人が一斉にコップをあおる!
「うぎゃああああああああ!」
「ぐごげげげげげげげげげ!」
「がうがうがうがうがうー!」
「「……」」
あ、二人気を失った。
「残念! 失神芸は狙いどころ良かったけど、被っちゃったね。残った三人にコメントもらおうか」
三人がそれぞれ一言。
「ひ、ひたすら不味い」
「オレがどんな悪いことしたって言うんだ! 今後行う悪事の予約なのか?」
「……花畑が見えたぜ」
「真ん中のおっちゃん面白い! 優勝! 拍手! 次行ってみようかー!」
ハハッ、面白いようにチャレンジャーが釣れるぞー。
入れ食いだ!




