第677話:不思議な相性
要はあたしがプリンスルキウスの地位向上に協力する代わりに、プリンスもドーラのために働いてちょうだいってことだ。
「プリンス暇じゃん?」
「左遷以外の意図はないですよね。随員がいないんですから、仕事しようがないです」
「そうそう。だからドーラの物品を帝国本土に紹介してもらおうかと思って」
「ははあ、仮にも皇子の情報なら飛びつく商人はいるだろうってことか」
「うん。帝国に馴染みがない産物でも、プリンス発のレポートなら信頼されるし」
「ドーラにとっていいことですね。殿下の実績にもなる」
「今、こういうもののレポート書いてもらってるの」
『クールプレート』を取り出す。
「パワーカードかよ。技術が流出するのは良くないんじゃねえか?」
「そーかな?」
個々のパワーカードが普通の武器に比べて強力だとは思わない。
結局使い手次第だし。
「これは日常系パワーカードだよ」
「日常系?」
「あっ、冷えてきますね」
カードを持ったおっぱいさんが言う。
「これは暑い時に持ってると冷えるカードなんだけど、プリンスはこれと逆の温かくなるカード持ってるんだ。帝国は寒そうだから売れると思わない?」
「ほう?」
ダンも有用性に気付いたようだ。
「このままじゃ良さが伝わりにくいものを、皇子の情報で補完するってことか」
「そゆこと。来月には貿易正常化するみたい。いつまでも魔宝玉頼みじゃこの先立ち行かないから、いろんなもの作ってガンガン売るでしょ? ドーラの魅力をアピールしといて移民呼び込んで人口増えれば、どんどん発展させられるよ。いくつか輸出したいものがあるんだけど、来月の貿易通常化に間に合いそうなのはあったかパワーカードくらいなんだよねえ」
内緒話モードを解除する。
「移民は多くて困ったって話じゃなかったか?」
「受け入れ態勢のないところにいきなりだからねえ。今年は大変だけど、掃討戦跡地の開発は順調に進んでるんだ。今日明日にでも一本目の水路が開通するってことだから、多分大丈夫だな」
「ユーラシアさんは働き者ですね」
「働き者なんだよ。でも皆あたしが好き勝手してるとしか見てくれないの」
「好き勝手してるんだろ?」
「否定はできないけれども」
笑い。
「サクラさんに重大な頼みごとがあるんだよ」
「私に? 何でしょう」
「これ見てくれる?」
例のイシュトバーンさんが描いたクララの絵を版画にしたものを見せる。
「……これジジイの絵だな? 例の画集の話か?」
「うん」
「画集?」
首をかしげるおっぱいさん。
美人は何しても美人だな。
「以前、レイノスの服屋がオープンした時に、こういう服が注文できるっていう絵が新聞に載って、新聞が完売したことがあったんだ。その絵を描いた人の美人画集を作って売ろうじゃないかって案があるの。六〇ゴールドで」
「六〇ゴールド? とても安いですね」
「あんた五〇ゴールドって言ってなかったか?」
よく覚えてるな。
「五〇はムリだった」
「ほお? 計算してるってことは、かなり話は具体化してるのか?」
「サクラさんとこに話持ってくるのは開始間近の段階なんだな。オーケーもらったらスタートするよ。これも輸出品になる予定」
「「輸出?」」
「いいものは誰が見たっていいから。帝国でだって売れるわ」
驚いてやがる。
「帝国で一番人気の皇女リリーが、塔の村で冒険者やってるのは知ってるんだっけ? モデルの了解を取りつけてあるから、帝国で販売する際はその知名度存分に生かすつもり」
「要するに、私もモデルにということですね? もちろんよろしいですよ」
「やたっ!」
「よろしいぬ!」
ヴィルのカットインが遅くて変なパターンになった。
「代わりといっては何なのですが、ユーラシアさんに頼みたいことがあるんです」
「どーんと言ってください」
「またペコロスさんとの会食をセッティングしていただけませんか?」
「お安い御用だよ!」
ダンがポカンとしてる。
こーゆー時こそ何か言えよ。
「昼休憩の時間も終わりですので、私は業務に戻ります。ダンさん、ユーラシアさん、ありがとうございました」
「あ、ああ」
「さよならー」
「バイバイぬ!」
おっぱいさんが去ってゆく。
ダンが声を潜めて言う。
「お、おい。どういうこった?」
「何が?」
「サクラさんとペコロスさんだよ。どうなってんの? ユーラシアは知ってたのか?」
知らんがな。
「あたしが見るところ、おっぱいさんと相性が良くてうまくやっていける男性って、案外少ないんだ」
「俺も似たようなことは感じてたな」
「オニオンさんはおっぱいさんと相性のいい、数少ない一人だよ。おっぱいさんのラブセンサーが良さげだと感知したんじゃないかな?」
「知っててあの二人会わせてたのか?」
「いや、最初は面白半分だったけど、レベル上がったら相性関係がすごくよくわかるようになったんだよ。ダンも結構なレベルでしょ? まだわかんないの? ダメだなー」
「ユーラシアコモンセンスをこっちに適用するんじゃねえよ!」
ユーラシアコモンセンスか。
なかなかいい響きじゃないか。
「あんたの高性能なラブセンサーで俺を見てくれ。俺とうまくいきそうなのは誰だ?」
「残酷な結論でも言う方がいいのかな?」
「お、おう」
腰が引けたね?
「ダンは割と誰とでもうまくやっていけるよ」
「どこが残酷な結論なんだよ!」
「え? ダンとやってくなんて残酷じゃない?」
ダンの白目って白いね。
でもその目あんまり好きじゃない。
「……うまくやっていけるってのは、あんたとでもか?」
「自分のことはよくわからんのだけど、多分」
「ま、あんたは置いといてだ」
置いとくのかよ。
「あんたがいい女認定してる中で、一番俺と相性いいのは誰だ?」
「うーん……」
「判別が難しいのか?」
「難しくはないよ。ただダンと多分面識ない子なんだ」
「じゃあ紹介しろよ」
「面倒なのはここからだよ。相性はこれ以上ない、あたしも他に見たことないくらいピッタリだけど、何故かうまくいく気がしない」
「何だそりゃ?」
あたしにもどういうことかわからんのだけど、『閃き』の固有能力がそう囁くんだもん。
「あたしもいい結果にならないのに紹介するのは気が引けるなー。向こうの子が可哀そうじゃない? ダンはどうでもいいけど」
「なるほど、俺も可哀そうだしな」
被せるなあ。




