第673話:塔の村へ連絡
サイナスさんとは毎晩ヴィル通信で話してるから、今特別に話したいこととかはない。
でもせっかくだから。
「灰の民の子は、アレクに憧れて輸送隊に入りたいとかないのかな?」
「いなくもないね」
「やっぱ輸送隊は灰の民にも注目されてるんだな。偏屈なアレクに憧れるなんてことはあるわけないから」
「ひどいなあ」
苦笑するサイナスさん。
「じゃあドーラのヒロインたるあたしに憧れて冒険者になりたい子は?」
「それはいないけど」
「何でだよもー!」
「いや、ユーラシアは特別だから」
まあ冒険者が堅実な灰の民っぽくないというのはわかる。
あたしやコモさんみたいに、村から飛び出して冒険者しようって考える方が例外なのだ。
「灰の民から輸送隊員出す時は、未成年がいいかもねえ。アレクの例もできたし」
「経験を積ませてやりたいね」
とゆーか、成人は輸送隊で働けるような人いないんだよな。
いや、就職事情は他色の民でも一緒か。
族長の号令で輸送隊員を出した最初はともかく、今後の希望者は仕事していない未成年が多くなりそう。
灰の民の村の門が見えてくる。
「ユーラシアはこれからどうするんだ? 昼までまだ時間あるが」
「塔の村行ってくるよ。いくつか理由があるんだ。まず潜入工作部隊の隊長に、プリンスルキウスが大使として赴任したことを知らせるでしょ?」
プリンスはメキスさんと面識があるようだった。
メキスさんも言いたいことがあるかもしれない。
「それからリリーの従者に皇帝がもう長くない、プリンスがドーラに来た理由ってのを知らせておきたいんだよね。リリーがいるとこだと言いづらくてさ」
「意外と気を使えるんだね」
「何で意外となのかなあ?」
あたしは常に気を使ってるわ。
気配りの美少女精霊使いだわ。
「あと箱の処分」
「ハハハ、行っといで」
「うん。じゃサイナスさんまたね」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「よう、ユーラシア。何だこれ? 何だこれ?」
「あっ、コモさんこんにちはー。これねえ、箱!」
塔の村にやって来た。
一〇個の空箱を持って。
「箱は見りゃわかるぜ。どうしてこんなもの持ってきたんだ?」
「この箱不思議なんだよ。聖風樹製で、中に入れたものが劣化しにくいの」
「ほお?」
コモさんが興味を示したようだ。
こーゆー意外な付加効果のあるアイテムはコモさんに刺さる。
「……造りは丸っきり宝箱だよな?」
「今取り掛かってるクエストで手に入る宝箱だよ。もちろん中身も重要なんだけど、箱の方も使えることに気付いたからもらってきてるの」
「しっかり冒険者してるなあ」
「食堂とか倉庫に置いといたら役立つかなと思ってさ。コモさんにも一個あげるから、研究してくんない? 実際に長期間使ってみた実績がまだないんだよね」
「おお、ありがとうよ。運ぶの手伝うぜ!」
コモさんが食堂に運んでくれた。
残りは倉庫でいいな。
「おーい、じっちゃーん!」
光る頭を発見。
「何じゃ、お主はいつも騒々しいの」
「黒服さんいないかな?」
「ん? リリー皇女はまだ起きてこぬぞ」
声を落として話す。
「だから今なんだよ。帝国の皇帝陛下は長くないんだって。昨日リリーがいたからあんまりこういう話したくなかったんだけど、黒服さんはプリンスがドーラに来た理由も含めて知ってるべきだと思うからさ。呼んできてくれない?」
「そういうことか。うむ、わかった」
「あたしはメキスさん連れてくる。じっちゃんの小屋で」
「よし」
◇
「ルキウス皇子がドーラ大使か。予想外だな。急に決まったのか?」
デス爺の小屋でメキスさんが言う。
「うん。実務的な人中心に人選進んでたのが白紙になって、急遽プリンスに決まったって。もっと予想外なのは随員がいないんだよ」
「ハハッ、明確な意思だな」
「だよねえ」
「どういうことです?」
黒服さんが言う。
大体推察はついてるんだろうけどな。
「陛下の命が長くないんだ。ドーラ政府の見解としては皇帝崩御後、第二皇子が摂政になるかそれとも皇帝になるかで、どっちにしても帝国の最高権力者になるんじゃないかって。で、政治的手腕を評価されてる第四皇子がドーラに飛ばされた。メキスさんどう思う?」
「まず間違いないな。表向きの理由は別にあるんだろうが。しかしルキウス皇子も政治の場から遠ざけられてしまっては……」
「プリンスルキウスはメキスさんと連絡取りたかったみたいなんだ。ただメキスさんがドーラへの潜入工作任務に就いてたことは知らなくて」
「極秘任務だったからな」
「どうする? プリンスに会う?」
メキスさんが躊躇しつつ首を振る。
「いや、遺憾ながら今のオレが役に立てることはない」
情報収集が専門のメキスさんだ。
確かにドーラの片田舎でできることはない。
手持ちの新しい情報もない。
「行政府の対応はどうなっておるのじゃ?」
「大したことできるわけないじゃん。随員なしなんて、何もするなってゆー帝国のほぼ有言の圧力だぞ? ドーラから一人しかお供つけないのも、逆らえないからだよ。帝国に睨まれたらどうにもなんないもん。ドーラの未来に関わってしまうわ」
口を引き結ぶ三人。
「だからあたしが個人的に力貸すことになってるの。プリンスがこっち来るって決まった時に、パラキアスさんとオルムスさんに頼まれた」
「「「え?」」」
意表突いたった。
気分がいいなあ。
「どういうことじゃ?」
「ぶっちゃけドーラに攻めてこようとした第二皇子が、帝国の一番偉い人ってよろしくないじゃん? だからプリンスルキウスを後押ししたいんだよ。プリンスが力を持てば、第二皇子を邪魔することもドーラを贔屓することもできそうでしょ? でもドーラ政府が直接プリンスに協力するのはさっき言ったように問題があるから……」
「ユーラシア様が味方すると」
こっくり、そゆこと。
プリンスがたまたま知り合った民間人の協力で業績を上げました。
これだったら少なくともドーラ政府が文句言われることはないだろ。
「あたしは政府の役員じゃないし、給料ももらってないからさー。ガタガタ言われる筋合いないじゃん? だからプリンス推しでいくんだ。できれば皇帝になって欲しいな」
「よってあの極端なレベル上げなのじゃな?」
「うん」
「レベル上げ? どういうことだ?」
メキスさんが聞いてくる。




