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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第671話:どうでもいいこと、どうでもよくないこと

 ――――――――――一三七日目。


「おっはよー! 素敵な朝だよ」


 早めに灰の民の村に来たのだ。

 サイナスさんが訝しげな顔をしている。


「あれ? 君、いつもならまだ寝てる時間だろう?」

「そんなことないわ。あたしは七時過ぎには起きる習慣だわ」


 今日は緑の民族長家長老連とヨハンさんとの初顔合わせの日。

 ヨハンさんは血筋がいいせいで長老連に警戒されてるわけだ。

 考えてみりゃこの状況は、自分のルーツを知った王子が母国に帰るみたいなストーリーで、ワクワクしないわけでもない。

 所詮田舎国の村の話だけれども。


「輸送隊の日でしょ? 出発の前に、インウェンの幸せそーな顔見ておこうかと思ったの」

「さすがにこの時間に緑の民の村を訪問するのは失礼だ。時間潰しておいで」

「はーい」


 おっとアレクが来たぞ。


「おはよー。今日はアレクも出の日なんだ?」

「道々有用なアイテムに気をつけながら行ってくるよ」

「うん、行っといで。下ばっかり見てて周りの注意を怠るんじゃないよ。ところで金属版ってでき上がりいつなの?」


 緑の民の版画屋に頼んでいる札取りゲーム印刷用の原版のことだ。


「今日明日にでも、まず文字部分は完成する。絵はもう数日くらいかかるらしい」

「順調だね。木札部分も三日後にはまず半量、そのまた五日後には全量でき上がってくるんだ。完成してる部分だけ先に刷り始めてもいいかもしれないねえ」


 来月の輸出に間に合いそうだが、まあドーラで普及させるのが先だしな。

 様子を見ながらでいいか。


「話聞いてる? フェイさんとインウェンが結婚するみたいだよ」

「ユー姉が暗躍したという話は聞いた」

「おお、暗躍! 心をくすぐる言葉がさっと出てくるアレクかっくいー!」

「よせよ照れるぜ」


 アレクとともに緩衝地帯へ。


          ◇


「おっはよー!」


 インウェンだけじゃなくフェイさんもいるじゃないか。

 ……こうあからさまにラブい話に突っ込んでくれっていうお膳立てができてると、却って反発したくなるのは何でかな?


「フェイさんも随分朝早くからいるんだね?」

「ハハハ、今日は精霊使いも聞きたいことがあるだろうからな」


 読まれてるがな。

 ますますやる気なくなるわ。


「じゃ、まずどうでもいいことから。木札は半量が三日後、全量が八日後だよね? あたしじゃなくて、アレクかケスが取りに行くと思うから渡してあげて」

「うむ、了解だ」

「それどうでもいいことなんだ?」

「どうでもよくないことと比べれば。具体的に言うとラブい話に比べれば」


 変な顔になるアレク。

 あたしのエンターテインメント基準の判断ではだよ?

 札取りゲームの識字率における影響はひっじょーに大きい。

 重要だとは思ってるから頑張れ。


「この前あげた作りのいい箱あるじゃん?」

「うむ、宝箱だな?」

「そうそう。イシュトバーンさんに見てもらったんだけど、あれ聖風樹製なんだって。中に入れとくと悪くなりにくいのは永続効果だった」

「ほう、色々利用価値があるな。かなり有用ではないか」

「ありがたいよねえ」


 特に酪農品を産する白の民は欲しがるかもしれない。

 とゆーか、あっちこっちに配ってくるべきだな。

 このまま宝箱が増え続けると、あたしん家がパンクしてしまうという事情もあるし。


「俺からもどうでもよいことだが。イーチィの輸送隊正式組み入れはいつにすればよい?」

「ちょっと待っててくれる? 今日ヨハンさんが緑の民の村に来るんだ」

「うむ、聞いている。和解になるな?」

「まず間違いなく」


 大体ラルフ君がメッチャ気に入られてるもん。

 将来ラルフ君は緑の民族長ヒルデちゃんを旦那としてバックアップし、アルハーン平原~レイノス間の交易を一手に引き受ける大商人になるんじゃないの?

 と考えると、ヨハンさんはラルフ君の父親って立場でしかないし。 


「めでたく手打ち、緑の民も交易参加ってことになると思う。当然緑の民からも輸送隊の人員を募るから、レベリングする時にイーチィも一緒にやる」

「ふむ、やはりレベリングはするのだな?」


 言外に戦争はもうないのだろう? と言っている。

 プリンスルキウスが一人で送られてくるみたいな不穏さはあるけど、さすがに戦争はないと思う。

 帝国でも政府何やってんだってことになっちゃうだろうし。


「魔物と戦える人員はある程度必要と感じたよ」

「うむ」


 フェイさんが頷く。

 この前柵が破られて魔物が侵入したってこともあったからな。


「さーて、どうでもよくない話を聞かせてもらおうじゃないか!」


 赤くなるインウェン。

 可愛いなあ。


「どうということはないのだ。あれからすぐにシーハン、イーチィ両側から断りの連絡が来てな。精霊使いに会った、ユーラシアで文句はない、さもなくばインウェンが良いという、判で押したような両家の返答だった。直ちに反ユーラシアで一族が結束してな。インウェンのところへ使いが飛び、すぐにまとまったということだ」

「予定通り過ぎて実につまらん。もう一幕くらいあたしを楽しませてくれてもよかったのに」

「精霊使いを楽しませるのはよほど嫌なんだろう」


 アハハと笑い合う。

 インウェンもアレクも笑いなよ。


「で、結婚はいつなの?」

「一年後くらいになるだろうな。現在は掃討戦で得た地の開墾に全力ということもあるし、輸送隊もこれからだ」


 今のところ輸送隊でインウェンの代わりはいないしな。

 結婚が少し先になってしまうのは仕方ない。


「まことに申し訳ないが、さすがに親族の手前、お主は結婚式に呼べぬ。勘弁してくれ」

「ごめんなさい。ユーラシアさんには大変お世話になりましたのに……」

「いいんだよ。フェイさんとインウェンが幸せになってくれることが嬉しい」

「ユーラシアさん……」


 ウルウルするインウェン。


「代わりに引き出物は特別奮発させてもらうからな」

「あっ、引き出物はもっと嬉しい!」


 大笑い。

 あ、誰か飛んできた。

 ヨハンさん達だ。


「いらっしゃーい! 随分と早いね?」

「皆さん、おはようございます。緑の民族長家が、老人ばかりなので朝は早い方が都合がいいとのことでしたので」

「早くていいんだ? サイナスさん呼んでくるね!」


 フェイさんが言う。


「俺も行った方がいいか?」

「いいの? じゃあお願いする」


 族長クラスが多い方がスムーズに話が進むだろう。

 サイナスさんを呼びにひとっ走り。

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