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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第670話:プリンスルキウスの立場と今後の方針

「サイナスさん、こんばんはー」


 恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「今日、プリンスに会ってきたんだ。新任在ドーラ大使のルキウス第四皇子殿下」

『そういう話だったね。どうだった?』

「ぽっちゃり系の感じのいい人だったよ」

『ユーラシアの素直な感想って気持ち悪いな』


 何てことゆーんだ。

 いや、これはあたしの高度な観察力と文学的表現を期待されているのか?


「皇女リリーの眉毛って太いんだけどさ。プリンスったらリリーに会うなり、しばらく見ない間にちょっと眉毛が逞しくなったかな? だよ? 何の前触れもなく眉毛を弄りにいくとは、なかなか侮れない男だった」

『帝国の皇子を侮ろうとするなよ』


 あの挨拶だけで、プリンスがひとかどの男とわかるわ。

 まあ眉毛弄りはともかく。


「ビックリすることがあったよ。帝国からプリンスにつけられた随員が一人もいなかったんだ」

『ええ? 随員なしなんてことがあり得るのか……』

「サイナスさんどう思う?」

『えらく悪意を感じるじゃないか。問題は悪意の方向性だが』

「うん」

『ルキウス殿下に業績を上げさせない、帝国国内の情報を与えないという方向がまずあるだろう?』

「あるねえ」


 うむ、皇帝陛下がもう長くないというのが本当だとする。

 プリンスは正妃の子ではないため、皇位継承順位は高くない。

 今この場面で政治的手腕を発揮できないなら、存在感などない。

 次代の皇帝の目はなくなってしまうのだ。

 プリンスがどれだけ警戒されているのかわかろうというもの。


『もう一つの悪意の方向性は、ドーラに向かってるんじゃないか?』

「どゆこと?」

『独立したドーラが警戒されているから嫌がらせをする。ないしは積極的な交流を持ちたくない』

「サイナスさんはそー見たか。あたしはドーラが軽く見られてるんじゃないかと思ってたんだ」


 ドーラなんて取るに足らない国だから。

 どっちにしても今の状況は、プリンスの手足をもいでドーラに蓋をしているに等しい。

 どえらい迷惑だ。

 何とかせねば。


『いや、しかし実務はドーラ側でどうにでもなるとして、近侍なり護衛なりはどうするんだ?』

「一人つけた。いわゆるレイノス中町の上級市民なんだけどさ。忠誠心には問題ないし、比較的考え方のこなれてる人だから、何とかなりそう」

『一人? 最低限も最低限だな。武道の達人か何かなのか?』

「素人だよ。護衛はつけない代わりに、プリンス自身に何とかしてもらうことにした」

『え? また君何かしたのか?』

「またってゆーのは心外だなー。ただのマジカルミステリー魔境ツアーだよ」


 サイナスさんが驚く。


『帝国の皇子を魔境に連れていったのか? 危険だろ』

「クララが蘇生魔法使えるから大丈夫だよ」

『な……!』


 冗談に決まってるだろーが。


「ドーラ側がプリンスに大勢人員を割くのは難しいんだ」

『金がないということか?』

「とゆー悲しい現実もあるけど、ドーラ政府がプリンスにどういう対応を取るか、帝国が知ることは容易だから」

『……慎重さが求められるな』


 帝国政府はプリンスに対してどういう態度を取っているかということを、随員なしで明らかにした。

 帝国が冷淡な扱いをしているプリンスを、ドーラ政府が厚遇するわけにはいかないのだ。

 ドーラに対する帝国の印象が悪くなっちゃうから。


「かといってプリンスがドーラ国内で暴漢に襲われて負傷しましたじゃ、責任を問われるじゃん?」

『ごもっとも』

「プリンスが帝国に帰ってから、簡単に暗殺されても困るんだなー。ほら、マジカルミステリー魔境ツアー大正解!」

『レベルが上がっていれば危険も少なくなるということか』

「物事大体レベルが解決するからね」

『いくつまでレベル上げてきたんだ?』

「五〇。帝国の将軍でも四〇代だったから結構なもん」


 あれ、呆れてるだろ。

 あたしを尊敬してくれないと。


『何でもないことのように言うなあ』

「プリンスも才能ある者が三〇年以上どうのこうのって言ってたから、才能ある人には悪いけど、ドーラの現実も知ってもらいたいって言ったったよ」

『恐ろしいことだが、ドーラの現実ではあることは認めよう。しかしドーラの常識ではないことに留意しような?』


 サイナスさんは上手いこと言うなあ。


「帰ってきてからギルド行って、パワーカード一揃いと空飛ぶカード買ってあげたから、大抵のことは平気だな」

『毒は?』

「あたしのやることに抜かりはないのだ。毒無効のカードと治癒魔法付きのカード装備させた」


 『スカロップ』と『ホワイトベーシック』のことだ。


「ラッキーなことに、プリンスは『威厳』の固有能力持ちだったんだよ」

『あのラルフ君と同じやつか。レベルの低い者に強いという』

「そうそう。レベルの上げ甲斐があるよねえ。リリーも見違えるほど凛々しくなられたって、驚いてたしなー」

『皇帝候補者が『威厳』持ちって、かなり有利なんじゃないのか? 状況次第では面白い』

「おっ、サイナスさんも楽しみ方がわかってきたね? でも現状島流しでしかないことはプリンス本人もよく理解してるんだ」

『だからドーラで活躍させるということか。輸出関係だな?』

「うん。貿易が正常化するのは来月みたいだよ。こっちも輸出品揃えて大儲けしないと!」

『え? 目的変わってないか?』

「プリンスの利益はドーラの利益って具合にするんだなー」


 魔宝玉とコショウの国としか認識されていないドーラで、プリンスルキウスが新大使として赴任してからいくつも魅力的な商品が発掘され、帝国に輸出されるとする。

 新しい輸出品が増えることはプリンスの個人的力量の発露と判断され、喧伝されるだろう。

 何故なら随員がいないんだから。


 実際問題として、帝国国内で政治的手腕を臣民に見せつける第二皇子を追い落とすことはかなり難しい。

 しかしプリンスを持ち上げ、第二皇子の対抗馬にすることは可能なんじゃないかな?


「じゃ、明日はカラーズに行くから」

『緑の民の村だな? クララ達も連れてくるのか?』

「いや、置いてく。ヨハンさん達が何人で来るかわかんないからね」


 明日はあたし単なる見届け人だし。


『では明朝待ってるぞ』

「うん。サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は緑の民の村か。

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