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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第67話:謎の本

「これからどうしようか? まだ少し時間あるけど」


 アルアさんの工房から帰宅後、うちの子達と相談する。

 海辺で夕飯の材料を取ってきてもいいし、もう少しバトルもありだ。


 コルム兄の言ってた、『大掃除』なるイベントがひっじょーに気になるのは確か。

 でも秘密の計画みたいだしな。

 今のところ何が何やらまるでわからないから、ウダウダ考えていてもどうにもならなさそう。


 秘密の計画というのが本当なら、チュートリアルルームやギルドで聞くのはやぶ蛇だ。

 警戒されて却って情報が出てこなくなっちゃいそう。

 どーすりゃいいかな?


「姐御、新しい転送先、試しに行ってみやしょう。状況いかんでパワーカード考えればいかがでやしょう?」

「よし、採用!」


 七つ目の転送魔法陣が出現している。

 チュートリアルルームを除いてクエストとしては六つ目だが、『謎の本』という何ともその名からは判断しづらい場所なのだ。

 明日以降に本格的に挑戦として、見物がてら予備知識仕入れとくのは悪くない。


 秘密の計画『大掃除』がクララの言うように荒事だとしても、戦闘経験を豊富にしとくことはプラスに働くだろうから。


「今日のところは『雑魚は往ね』を使わず、魔物の種類と攻撃パターンを見極めるつもりでいくよ。ヤバそーだったら即行で帰宅する」

「はい」「ようがす」「ラジャー」


 ギルドの武器・防具屋で買った『誰も寝てはならぬ』はあたしが装備した。

 睡眠無効がつく上に、防御力と最大ヒットポイントがアップする、使いでのあるカードだ。


 ちなみに現在のパワーカード編成はこう。


 あたし……『スラッシュ』『アンチスライム』『シンプルガード』『誰も寝てはならぬ』『ポンコツトーイ』

 クララ……『マジシャンシール』『エルフのマント』『逃げ足サンダル』『癒し穂』『ポンコツトーイ』

 アトム……『ナックル』『サイドワインダー』『シールド』『ルアー』『厄除け人形』『ポンコツトーイ』

 ダンテ……『火の杖』『プチエンジェル』『ボトムアッパー』『ポンコツトーイ』


 四枚のパワーカードをクララと分け合い、今後カードが手に入るのか不安視していた時から比べると隔世の感がある。

 逆にカードが充実してきただけに、まだまだ足りない部分があるなあとも思う。

 当面の目標は、全員が七枚の最大装備枠を埋めることだな。


 七つ目の転送魔法陣の上に立つ。

 強まる魔法陣の光。

 フイィィーンという音と同時に、例のごとくあの事務的な声が響く。


『謎の本に転送いたします。よろしいですか?』


 だから情報量が少ないんだってばよ。

 しかし本好きのクララが心なしか嬉しそうに見える。


「転送魔法陣さん、これって本の魔物が襲ってくるのかな?」

『ということはないです。ヒントはここまでです』


 ぐむむ見透かされたか。

 おのれ転送魔法陣、倶に天を戴いておれようか。

 いやそんな大袈裟なもんじゃないか。

 行ってみなきゃわからんというのは、あたしみたいな慎重派にとってはどうにも頼りないんだが。


「転送よろしく」


 フイィィーンシュパパパッ。


「ここは?」


 無機質な寒色の壁に囲まれた部屋だ。

 天井はやけに高い。

 壁全体が光って部屋を明るくしているところといい、印象としてはチュートリアルルームに近いな。

 目立つものといえば部屋の中央にある小さな机と、そこに乗っている青い本だ。

 思わず声が出てしまう。


「本だね」

「本ですね」

「本だな」

「本ね」


 感想が一致しながら語尾の一致しない不条理さにおかしみを覚えつつ、恐る恐る本に近寄る。

 いや、だってキーアイテムが他にないんだもん。


「……強い魔力を感じるぜ」

「表紙には何も書いてないです」

「タッチするしかないね」


 推測の根拠となることと言えば、本の魔物が襲ってくるということはないという、転送魔法陣の言葉だけ。

 つまりこの本は魔物ではない。

 むう、気は進まないけど、触ってみるしかないよなあ。


「あたしがいく。あんた達は後方で待機。油断はしないで」

「「「了解!」」」


 おお、いい感じ。


「三人の声が揃った方が気持ちいいからさ、これから作戦行動中の返事は『了解』にしてくれない?」

「「「了解!」」」


 あたしは本をつついてみた。

 ふむ、特に変化はないな。

 続いて表紙に掌を当てる。

 これも変化なし。

 となれば……意を決して表紙を開く。


 ズアアアアアッ!

 魔力の奔流に包まれる。

 これは転送だ!


「ここは?」


 飛ばされた先は赤黒チェックの床が特徴的な場所だった。

 四面の壁が本棚になっており、ズラーッと本が並ぶ様はなかなか見ごたえがある。

 これはクララが羨ましがる構造だなあ。


 ふむ、うちの子達も皆いる。

 あの本はパーティーメンバー全員が飛ばされる転送装置だったんだな。


「皆無事?」

「はい、大丈夫です」

「モーマンタイね」

「姐御、あれを見てくだせえ」


 アトムの指差す方向を見ると、先ほどと同じような机と青い本、それから青い魔法陣がある。

 あれは確か……。

 まあ近寄ってみるか。


「クララ、どう?」

「ユー様、永続的で何度も使える回復魔法陣です。間違いありません」


 魔法陣の術式を調べたクララが断言した。


「やたっ! ここで経験値稼ぎができるかな?」

「ボス、モンスターがいるね」


 ウロウロしてる魔物を相手にレッツファイッ!


「コブタマン三体! 肉がおいしいらしいです!」


 何だとお! ぜひやっつけねばっ! ダンテのスパーク! 一匹逃げたっ! あたしのハヤブサ斬り! コブタマンの攻撃! あたしが食らうが大したことはない。アトムの薙ぎ払い! 一匹倒した! クララの些細な癒しで全体回復。よーしいける! ダンテのアイスバレットとあたしの攻撃で残り一匹を仕留めた。


「姐御、夕御飯には十分過ぎやすぜ」

「いやー、実にいいねここ。回復魔法陣もあるし、お肉も狩れる。黄金コンボじゃん。さては天国かな? コブタマンは逃げることあるみたいだけど、洞窟コウモリほど問答無用じゃないし、敏捷性も大したことないね。どんどんいってみよう!」


 クエスト? 何それ?

 洞窟コウモリに逃げられてしまう現在、おいしいお肉を自在に狩れるようになったことの方が重要だ。

 しかもコブタマンは、洞窟コウモリよりはるかに食べでのあるサイズだしね。


 ま、今日の夕御飯は確保したので、どんな魔物がいてどんなエリアか調べるのが優先課題ではあるな。

 今後コブタマンはずっとお世話になるお肉です(笑)。

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