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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第669話:ユーラシアはドーラ名物

「いやあ、ごちそうさまでした。大変おいしかったです」

「舌の肥えてる皇子殿下に褒めてもらえるのは光栄だぜ」


 プリンスもイシュトバーンさんも楽しそう。

 あたしもお腹一杯だわ。

 満足でーす。


「あの卵料理は何ですか? シンプルに焼いただけに思えるのに、実に旨みが濃い」

「あれは精霊使いの土産だぜ。ワイバーンの卵だ」

「ほう! ドーラではああいうものが食べられるんですなあ」

「プリンスはワイバーンの卵気に入ったみたいだね。また手に入ったらここ持ってきていい? プリンス連れてくるよ」

「我も食べたいぞ!」

「もーリリーはしょうがないなー。塔の村の食堂にも持っていってあげるよ」

「まことか!」

「まことだぬ!」


 アハハと笑い合う。


「皇子殿下よ、今日は刺激的な一日だったろう?」

「まさに。一人でドーラに来ることが決まった時は、事実上の追放だと思っていましたが」


 そう述懐するプリンスを、イシュトバーンさんが面白そうに見つめる。


「パラキアスという、あの浅黒い男。ドーラに着任した一昨日、彼に言われたんです。リリー皇女と仲のいい美少女冒険者が訪ねてくるはずだ、彼女は必ず予の役に立つと」


 プリンスがこっちを見る。

 いやん。


「ドーラで一番とんでもないやつだと」

「最後のセンテンス必要なくない?」

「予が言ったのではないから。しかしそのセンテンスに込められてた意味を重々感じているとも」


 皆が笑う。

 もーパラキアスさんは失礼だな。


「何の冗談かと思っていましたが、いやあ目の覚めるような思いです。今まで常識だと信じていたことがそうではなかったなと」

「面白いだろう?」

「面白いですねえ」

「面白くなるのはこれからだぞ?」

「ユーラシアはドーラ名物だからな」

「珍獣扱いだよもー」


 再び皆が笑う。

 あ、ヴィルが来た。

 よしよし。


「で、精霊使いとしては、皇子殿下にどうして欲しいんだ?」


 ん? リリーがいるから皇帝どうこうって話ができないことはイシュトバーンさんもわかってるだろうし。

 ああ、目先のことね。


「プリンスとドーラの利益が一致するところで活躍して欲しいな」

「輸出についてか?」

「うん、まずは貿易だね。プリンスからのレポートとして、帝国本土へドーラからの輸出品の情報を流す。食いついてくる貿易商もいるでしょ? プリンスが広告塔になってくれればドーラは嬉しいし、売れる商品を紹介してもらえる商人も万々歳。そしてプリンスの手腕は喧伝され重要性は高まっていくと。ウィンウィンだねえ」

「帝国に知られていない魅力的な輸出品が複数あれば、極めて有効だな」

「まず例のお茶は絶対間違いないけど、新茶ができるの三ヶ月以上先なんだよね。貿易が正常化するのっていつからなんだろ?」


 プリンスが腕を組む。


「……第一回の移民を受け入れて以降ということになっている。まあ一ヶ月後くらいからか」


 画集も札取りゲームも間に合わない。

 セレシアさんの服は画集のあとだし、手持ちのお茶を放出する手はなくもないが……。


「輸出が滞ってた分、魔宝玉とコショウはたくさん輸出できるはずだぜ」

「新顔で間に合いそうなのは、温かくなるパワーカードくらいかなー」

「温かくなるパワーカードとは?」


 プリンスが聞いてくる。


「これなんだけど」


 『ウォームプレート』を渡す。


「ほう、温かい! カイロの類か」

「火も使わないから危なくないでしょ? 燃料いらないし。帝国はドーラより寒いらしいからウケるかなーと思ったんだけど」


 デス爺が言う。


「コルムも作れるはずじゃな?」

「この前覚えてもらったから作れる。じっちゃん、コルム兄に弟子取ってもらってさあ、これ大量生産したいんだけど」

「ふむ、一人弟子を入れたようだぞ」

「あっ、そーなんだ?」


 しめた! 塔の村は素材が足りなくなる心配はまずない。

 アルアさんの工房と違って、人手でさえあればある程度個数作れるはず。

 一ヶ月後の老狐の月、所謂二の月はまだまだ寒い。

 売れる!


「プリンス。そのカードあげるから、使い勝手確かめて売れそーなら宣伝してよ。貿易正常化とともに輸出するから」

「うむ。了解したぞ!」

「ドーラのものが売れれば帝国のものも買えるからね。双方とも経済的に潤うよ」

「皇子殿下も輝くわけだな?」

「誰かさんの頭部のようにね」


 黒服が意味ありげな視線を向けてくる。

 何も言わないけど黒服は感付いてるらしいな。

 リリーのいないところで、皇帝の病気の篤いことと後継者問題について話しておきたいものだが。


「明後日階段下の広場でイベントやるんだよ。イシュトバーンさんも来る?」

「ん? 何のイベントだ?」

「さっき新聞記者ズに捕まってネタ提供しろって言われたからさあ。魔法の葉青汁は死ぬほど不味いですよキャンペーンをやることにしたの」

「ハハッ、ユーラシアペナルティのやつだな?」

「「「ユーラシアペナルティ?」」」


 塔の村までは伝わってないらしい。

 かくかくしかじか。


「……というわけで、初めは冗談だったんだけど、実際に施行されるようになったんだ。えらい不名誉な名前までついた」

「さすがにユーラシア。ユニークな刑罰だの」

「リリーはそう言うけどさー。プリンスは『刑罰として軽過ぎないか』なんて言うんだ。だからプリンスにも飲んでもらおうと思って」


 リリーと黒服の顔色が変わる。


「兄様、魔法の葉の不味さは洒落にならんのだぞ?」

「お嬢様の仰る通りです。お身体に障るかもしれません」

「む、むう?」


 今更尻込みするプリンス。


「いや、見に来てくれる皆さんに不味さと罰としての有効性が伝わればいいんだ。イベントで参加者の皆さんに飲んでもらうのは、実際に刑施行に使う量の一〇分の一くらいだけどね」

「そ、そうか」

「ちなみにユーラシアは、魔法の葉青汁飲むのとドラゴンのブレス食らうの。どちらか選べと言われたらどうするのだ?」

「ドラゴンのブレス選ぶに決まってるだろ」


 プリンスの丸い顔が引きつってるぞ?

 経験のために一度くらい飲んどくといいよ。

 あたしは御免こうむるけど。


「我も見物しに来たいの」

「じっちゃんに連れてきてもらえばいいじゃん。あ、でもイベント午前中だわ。起きられる?」

「何だ。リリーの寝坊癖はまだ直らんのか?」

「兄様にバレたではないか!」

「バレたぬ!」


 笑いの中で解散となる。

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