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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第668話:リリーもモデルに

 フイィィーンシュパパパッ。

 イシュトバーンさん家にやって来た。


「こんばんはー」

「いらっしゃいませ。今日も大荷物ですな?」

「うん、これイシュトバーンさんにお土産」

「では、こちらへどうぞ」


 屋敷に案内される。


「御主人!」


 先行させていたヴィルが飛びついてくる。

 よしよし、いい子だね。


「おう、来たか精霊使い」

「あたしアーンドうちの子達だよ。あれっ? まだデス爺や新大使達は来てない?」

「来てねえな」


 あたしがチュートリアルルームに寄って遅くなったから、もうとっくに来てると思ってた。

 プリンスをお披露目しながらゆっくり来るのかもしれないな。

 プリンスを押し上げるためにやれることはやっとかないと。


「ところで何だそりゃ? 宝箱?」

「えーと、まずワイバーンの卵ね。こっちは今請けてるクエストで出てくる宝箱の空箱なんだけど、ちょっと不思議な特性があるんだよ」

「どんなふうに?」

「中にものを入れとくと、劣化するスピードが遅いの。例えば生肉を入れとくとするじゃん? かなり持つんだよね。その効果が永続的なのか時間が経つと消えちゃうのかはまだわかんないけど」

「ほお、相当面白れえな。どれ、見せてみろ」


 イシュトバーンさんが興味津々だ。

 『道具屋の目』の固有能力なら何かわかることがあるだろう。

 空箱を弄り回している。


「……これ聖風樹でできてるな」

「えっ?」

「効果は永続的だぜ。聖風樹にそんな効果があるとは知らなかったが」


 聖風樹とは吹き抜ける風に揺れる枝が美しいことから名付けられた木だと、クララが教えてくれた。

 『道具屋の目』の固有能力はすごいな。

 クララでさえ、見ただけじゃ聖風樹製だとまではわからなかったのに。


「……永続効果だとすると、いろんな使い道があるなあ」

「そうだな」

「今日持ってきた分はあげるから、ここでも有効に使ってよ」

「ん? いいのか?」

「いいよ。てゆーか毎日クエストに行っちゃ空箱持って帰ってるから、家が箱に侵略されそーになってるの。ぜひもらって欲しい」


 イシュトバーンさんが呆れたような目で見る。


「あんた最初から箱の効果に気付いてたのかよ?」

「いや、違くて。初めは立派で丈夫な箱だから冷気が漏れにくいなと思ってさ。『氷晶石』と併用して、冷蔵の用途のために使おうとしてたの。でもある時凄草が宝箱の中から出てきたんだ。変でしょ?」

「何が? お宝なら凄草が入っててもおかしくねえだろ」

「お宝か否かじゃなくてさ。凄草ってすぐに魔力が抜けてヘタっちゃうはずなのに、新鮮なやつが出てきたんだ。だからひょっとして箱自体に特殊な効果があるんじゃね? って思ったの」

「ほお、あんたは細けえとこにすぐ気付くんだな。ただカンがいいばかりじゃねえんだ」


 感心してら。

 鼻が高いわ。


「洞察力すごい関係で二つ名にならないかな? 格好いいやつ」

「『些細なことまで見抜く女』とかか?」

「……モテなくなりそう」

「モテなくなるぬ!」


 こらヴィル。

 あんまり面白くないぞ?

 そうこうしてる内に、プリンス達登場。


「やあいらっしゃい。言葉崩していいか? 精霊使いがいるところで敬語使うと、後ろ頭辺りがゾワゾワするんだ」

「構いませんとも」

「あたしをダシにするのはひどいなー」


 皆で笑う。


「デスさん、久しぶりだな。息災かい?」

「おかげさまで。イシュトバーン殿も元気そうですな」

「一〇年ほど前に足を悪くして歩けなかったんだが、精霊使いに治してもらってな」

「治したのはクララだよ」

「それは重畳」


 いい雰囲気だな。

 イシュトバーンさんがあのえっちな目をリリーに向ける。


「皇女殿下か。なるほど美しい」

「お褒めいただき、嬉しいの」

「彼女ももちろん候補なんだろう?」

「当然だねえ。リリー抜きじゃ帝国で売るの難しくなっちゃう」

「何の話だの?」


 リリーと黒服、プリンス、デス爺が疑問符をぶら下げてる。

 まー候補と言われただけじゃ何のことかわからんだろうけど。


「こういうこと」


 クララの絵の版画を見せる。


「これはクララの?」

「セクシーだな!」

「ううん、これは艶かしい」


 四人が驚く。

 そうだろうそうだろう。

 イシュトバーンさんの絵のインパクトは抜群だ。


「これ、イシュトバーンさんが描いたものを版画にしたんだ。この手の絵の画集作って売ろうと思ってるの。リリーも協力してよ」

「おお、モデルということか。光栄なことだな。もちろんオーケーだぞ!」

「やたっ! これで帝国に輸出しても爆発的に売れる!」


 プリンスが叫ぶ。


「あっ、輸出品として考えてる画集って、これのことか!」

「そうそう。二〇枚くらいの美人絵版画を載せる予定なんだ。このクオリティでリリーの名前があって六〇ゴールドなら売れないわけがない」

「「「六〇ゴールド?」」」


 驚く三人とニヤニヤするイシュトバーンさん。

 今までの書籍の価格の常識から考えると、べらぼうに安いことはわかってる。


「ドーラでの販売価格は六〇ゴールドにする予定。ごめん、輸出すると輸送費分高くなっちゃうけど」

「六〇ゴールドで出せるのか?」


 デス爺の問いだ。


「本当は五〇ゴールドを目指してたんだ。とゆーか本って高いじゃん? 五〇ゴールドでエンタメ本を出せれば、本を読みたい人も字を覚えたい人も増えるかなーと思ってさ」

「どうしてお主が本に拘るのじゃ。枕にしかせぬじゃろうが」

「もーじっちゃんはせっかくあたしが格好いいこと言おうと思ってるのに、台無しじゃないか。だまって聞いててよ」


 アハハと笑い合う。

 あたしは面白い本があれば読むわ。

 あたしを喜ばせる本が世の中にないだけだわ。


「五〇ゴールドはムリだったな。もう少しノウハウが蓄積されて、紙代や印刷代が安くならないと。でも六〇なら大丈夫だよ。どうせメチャクチャ売れるし」

「こういう試みを続けていけば、製紙業も印刷業も育つだろう」

「だといいなー」

「二〇人もモデルを紹介してくれるんだな?」


 イシュトバーンさん、嬉しそうだね。

 あ、ヴィルがイシュトバーンさんとこ行った。


「そのつもりだよ。ねえリリー。エルとレイカにもこの話しといてよ。いずれ正式にモデルの依頼に行くけど」

「わかったぞ! ユーラシアの考えていることは実に面白いな!」

「おっと、ようやく飯が来たぜ。食べてくれよ」

「「「「「いただきます!」」」」」

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