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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第662話:予想外の事態

 リリーが難しそうな顔してら。

 お茶のためだと物事を真面目に考えるんだな。


「……水魔法が一番のネックだの」

「あたしは『プチウォーター』で淹れてる。だけどあの魔法かなり勢いよく水が出るもんだから、コツが必要なんだよね。レベルによって出る水の量が違うってとこも問題あるし。今、その問題を解決する新魔法作ってもらってるから、ちょっと待っててよ」

「うむ、楽しみが増えた」

「お茶を淹れるための新魔法? ペペが作っておるのか?」

「そうそう。で、超すごいお茶全量と新しい水魔法のスクロールは、帝国に輸出しようと思ってるの」


 おっと、プリンスルキウスの目がキラッとしましたね。

 やる気のある新大使で、こっちもありがたいわ。


「ドーラで茶は飲まんのか?」

「ドーラでは本物のお茶を飲む習慣が一般的じゃなくて。それにこれ、販売価格をかなり高く設定するつもりなんだ。どっちにしろ水魔法が必要ならお金持ちしか飲めない。となると欲しがるのは帝国の貴族様か富豪でしょ?」

「むう、仕方ないの」

「安心しなよ。リリーの分くらいは取り置いてやるから」

「おお、すまぬの」


 喜ぶリリー。


「代わりにこのお茶、『リリーのお気に入り』って名前にしていい?」

「ハハッ、構わぬぞ」


 よーし、『超すごいお茶(仮)』は『リリーのお気に入り』にクラスチェンジした!

 馴染みのある名前の方が帝国で売れるんじゃないかな?


「知り合いの知恵者が言ってたんだけど、このお茶プリンスが気に入った相手にだけ輸出を許可するってことでいいかな? どうせ量はそんなに取れるもんじゃないから」

「ああ、いいね。上手いこと考えたじゃないか」

「ありがたいことだが、予に肩入れするのは何故だ?」


 肩入れと見たか。

 プリンスの言葉に、オルムスさん、デス爺、黒服が意味ありげな目を向けてくる。

 黒服も気付いてたか。

 ……ま、ちょっと場所が悪い。


「……ドーラの独立は内面ゴタゴタしてたからね。新大使に媚売って帝国と仲良くしたいの」

「筋は通っているな」


 半分納得していないようなプリンスルキウス。

 リリーの前だ。

 父親である現皇帝の余命があまりなく、次期皇帝がどうのこうのという話はしたくない。


 しかしプリンスは随分超すごいお茶を買ってくれているようだ。

 思ってた以上に商品価値が高いのかな?

 今まで植民地だったドーラのものだから、帝国では正当に評価されない可能性も考えてたんだけど。

 

「ところでオルムスさん、予想外の事態って何なの?」

「そうだった。ルキウス殿下に随員が一人もつけられていないんだ!」

「え?」


 随員ゼロ?

 文官も武官もいないの?

 予想外にも程があるだろ。


「ふーん、プリンスは一人でもバリバリ働ける人なのか」

「違うよ!」


 アハハ、わかってるとゆーのに。

 どうせ仕事なんかないんだからというドーラ軽視と、万が一にもプリンスに功績を挙げられたくない思惑からか。

 しかし……。


「困ったね。でも逆にどうにかしたら、プリンス独力の手柄だねえ。手腕を見せつけるチャンスでもある」

「どうにかなるか?」

「さっきからいい匂いが漂ってきて、考えがまとまらないんだけど?」


 ハハッ、今日は帝国の皇子皇女がいるから、婉曲にお昼御飯を請求したった。

 婉曲って言わない?

 細けえことはいーんだよ。


          ◇


「ごちそうさまっ! 堪能したー」


 用意してくれた昼食をいただいて満足満足。

 オルムスさんが聞いてくる。


「殿下に随員がいない件だが。どうにかなるかい?」

「やろうと思えば。その前に、プリンスと行政府を繋ぐ秘書的パイプ的な役割をする人員を一人雇うことはいいかな?」

「必要だね。心当たりはあるか?」

「レイノス中町の住人なんだけど」


 ドーラ独立以前まで帝国に直接納税していたレイノスの中町市民は、帝国の臣民であるという意識が強い。

 逆にドーラ人をバカにする傾向があるのだが。


「上級市民だけど、割と頭の柔らかい人物がいるよ。帝国の債権で暮らしてるニートだから、呼べばすぐ来ると思う」

「なるほど、上級市民か。ある程度の教育は受けているだろうが……」

「皇子に仕えてって誘ったら、多分一発オーケーだぞ?」


 皇族に対しては敬意を隠さないから。

 レイノスの地図を取り出し、精霊様騒動を引き起こしたソバカス男の家を指差す。

 あたしが引き起こしたんだろうって?

 見解の相違だわ。


「リリー迎えに行ってくれない?」

「我が? どうしてだ?」

「皇族フリークっぽいんだよね。リリーが直接行ったらすげえビックリすると思うから。驚かせてみたくない?」

「面白そうだな!」

「じゃ、黒服さんとじっちゃんはリリーのお供でついて行ってよ」

「お主はどうするのじゃ?」

「プリンスのレベルを上げたい。プリンスがあたしを信用するならだけど」

「「「「「!」」」」」


 駐在武官も警備員もいないんじゃ身動きもままならない。

 ならば逆転の発想として、プリンスが護衛の必要もないほど強ければいいじゃないか。

 プリンスの目を見つめる。

 どうだ?


「まいった。精霊使い殿に任せようじゃないか」

「プリンスは決断力あるねえ」


 しかしプリンスの立場に立ってみると、今状況を変えなきゃ良くて飼い殺し、悪けりゃ処分なのだ。

 ドーラにいる間に存在感を可能な限り上げることが望ましい。

 赤プレートに話しかける。


「ヴィル、聞こえる?」

『聞こえるぬ!』

「イシュトバーンさんに繋いでくれる?」

『わかったぬ! ちょっと待つぬ』


 リリーが興味深そうに話しかけてくる。


「あの幼女悪魔か。何をしているのだ?」

「晩御飯の確保だよ。オルムスさんもごちそーになる?」

「あいにく残業になるな」


 残念そうだね。


『おう精霊使い、どうした?』

「今行政府の新しい在ドーラ大使ルキウス皇子のところにいるんだ。今日晩御飯食べに行っていい?」

『面白いじゃねえか。メンバーは?』

「皇子とリリー皇女とその従者一人、それからデス爺とうちの子達だな。ワイバーンの卵持って行くよ」

『おう、わかった』

「ごめんね、今急ぎなんだ。詳しいことは夜に」

『待ってるぜ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 こっちもオーケーと。


「じゃ、四時間後もう一度行政府に集合ね」


 さあ、プリンスルキウスを連れてワクワク魔境ツアーだ!

 ドーラ名物高速レベリングを見せたるわ!

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