第66話:正体不明の『大掃除』
フイィィーンシュパパパッ。
「アルアさーん、こんにちはー!」
「はいよ。アンタはいつもムダに元気だね」
「ムダじゃないんだよ。元気が溢れ出ちゃうの」
あれ? それをムダって言うのかな?
まーいーや。
アルアさん家に飛んできて、まずやらなきゃいけないのは素材を売ってポイントに換えること。
『逆鱗』って売値二二〇〇ゴールドもするのか。
ドラゴン倒しまくったら大儲けだな。
現在の残り交換ポイントは一九四。
残念ながらパワーカード一枚分だけしかポイントがない。
交換できるのは以下の通り。
<五〇ポイント>
『逃げ足サンダル』敏捷性+一五%、回避率+五%、スキル:『煙玉』
<一〇〇ポイント>
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『ボトムアッパー』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+七%
『ルアー』狙われ率+五〇%、防御力+一五%、魔法防御+一五%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
『火の杖』魔法力+一五%、スキル:『プチファイア』
『マジシャンシール』魔法力+二〇%、MP再生三%
『シンプルガード』防御力+二五%、クリティカル無効
『鷹の目』命中率+五〇%、攻撃力+一〇%、敏捷性+五%
『ハードボード』防御力+三〇%、暗闇無効
『アンチスライム』【スライム特攻】、攻撃力+二〇%
<一二〇ポイント>
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
<一五〇ポイント、一枚限り>
『癒し穂』魔法力+二五%、スキル:『些細な癒し』
『風月』攻撃力+二五%、スキル:『颶風斬』、『疾風突』
新たに交換対象となったのは『ハードボード』『アンチスライム』『風月』の三種だ。
『アンチスライム』はよく知ってるけど、『ハードボード』と『風月』はお初のカードだな。
考察するべし。
『ハードボード』は、今交換可能な中で最も防御力補正の大きい、前衛向きのカード。
攻撃命中率の下がる状態異常・暗闇を無効にできることは覚えておくべき。
あたしが暗闇を食らうと『雑魚は往ね』の効果が落ちそうだから、有用かもしれない。
注目すべきは『風月』だ。
交換一枚限りのカードなので、レア素材『逆鱗』で交換可になったと思われる。
現在交換可能なカードの中で一番攻撃力補正が大きい。
敵全体に風属性強攻撃を放つ『颶風斬』と速度補正のある刺突強攻撃二連の『疾風突』、二つの大技バトルスキルを備えている。
すげえ。
アルアさんが注意してくれる。
「『風月』は攻撃属性がついていないことに注意しな。単体では武器にならないよ」
ほんとだ。
『スナイプ』も同じだけど、パワーカードのそーゆーところは厳密だなあ。
「アルアさーん、交換レート表見てると皆欲しくなっちゃう」
「だろうね。パワーカードは数を持ってるほど、様々なケースに対応できるよ。戦略を考えたかったら、素材をたくさん持ってきな」
「おおう、そーきたか」
「成長してる証拠さね」
成長したって他人に言われると嬉しいもんだ。
もっとも自分で成長を自覚してもいる。
最初冒険者を志した時、あたしん家や灰の民の村に出るかもしれない魔物を倒せるようになりたかった。
だからレベル二桁を目指し、既に達成している。
もう最初の目標には届いているのだ。
考えてみれば最初の転送魔法陣が出現してから、まだ二〇日しか経ってない。
仲間の精霊が二人も増え、生活も全然変わってしまっている。
思ってもみないスピードで変化って起きるもんだ。
「姐御、どうしやすか?」
アトムの言葉で現実に引き戻される。
何のカードと交換するか決めないとな。
「……ちょっと難しいね」
攻撃力の高い『風月』に魅かれるのは山々なのだが、強敵やボス戦がなければ思ったほど役に立たない気もする。
とするともうちょっと交換ポイントを稼いで、沈黙無効のある『光の幕』二枚をクララとダンテに装備させるか?
あたし用に『ハードボード』という手もある。
「ユー様、交換ポイントは温存しておいて、次のクエストの傾向を見てからにしてはいかがでしょうか?」
「よし、クララの意見採用。アルアさん、今は交換やめとく」
「待つのも戦略の内さね。すぐ交換するばかりが能じゃないわさ」
帰ろうとした時、作業場のコルム兄が手招きをした。
「ユーラシア、ちょっといいか?」
「何? 可愛い従妹の顔見たくなった?」
「ハハハ、相変わらず冗談がうまいな」
褒められたはずなのに嬉しくないのは何故だ?
ともかくコルム兄の側に行く。
「この前ギルドの職員二人が査察に来た時、おかしな話をしてたんだ」
「おかしな話? 甘いものがどうこう?」
「そっちのお菓子でなくて」
「わかってるけど何がおかしいのよ。笑えってこと?」
「そうでもなくて。大掃除をするんだと」
「大掃除?」
コルム兄は何を言いたいんだ?
「オレも二人の会話を盗み聞きしただけだから、詳細はわからないんだ。ただ大掃除には、レベル二五以下の正式な『アトラスの冒険者』は全員参加ってことだった」
「正式な『アトラスの冒険者』ってことは、ギルドまで来て登録を終えた人ってことだな? 全員参加の大掃除ってのが意味不明だけど」
「カラーズ各村からも代表を募り、レイノスの警備兵も参加する。チラッと聞き返したら、今聞いたことは忘れてくれって言うんだ。わけがわからないだろう?」
「サッパリ」
「大掃除……クリーンナップ作戦」
ダンテがボソッと呟く。
「メイビー何かのシークレットワードね」
「コードネームってこと?」
「どういうこった?」
「私もダンテの言う通りだと思います。何か大掛かりな秘密の計画があって、参加するメンバーからするとおそらく荒事かと」
クララも物騒なことを言い出す。
「とにかく伝えたよ。君にも関係あることだろうからね」
「うん、ありがとう。周りにアンテナ張っとくよ」
「それがいい」
いずれギルドから大掃除についての正式発表があるんだろ。
慌てないようにしないと。
荒事ならばとにかくレベルを上げておけば間違いないんじゃないかな。
「じゃあ帰るね。アルアさんもさよなら」
転移の玉を起動し、我が家に戻る。
謎の作戦『大掃除』。
ユーラシアの参加する初めての大イベントです。




