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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第654話:美人さんの家

 黄の民の村は建物もデカいんだけど、全体的に道幅が広くて気持ちいいわ。

 メインストリートは荷車がすれ違える広さで利便性が高いと思う。

 計画的に村造りがされていていいな。

 インウェン先生に質問です。


「で、今から行くのは?」

「フェイ様が御親族から勧められている、二人の御令嬢宅です」

「うん、だろうなーとは思ってたけど。その二人にあたしを会わせろって、フェイさんが言ってたとゆーことでいいかな?」

「はい」


 じゃあフェイさんは、あたしが二人のお嬢と出会うことで起きるイベントに期待しているのだ。

 要するにフェイさんの認めた存在であるあたしが、お嬢を論破することによって縁談を壊してしまえとゆーことだな?

 でも問題のお嬢ズのこと、あたしは知らないんだけど?

 いい子だったら困るなー。


「インウェンから見て、その二人のお嬢ってどんな子?」

「一人は清楚な、黄の民一の美人と呼ばれている方で、し、正直フェイ様とはお似合いだと……」


 動揺すんな。

 インウェンもフェイさんとお似合いだわニヤニヤ。


「で、もう一人は?」

「ズシェン隊長の妹です。兄とは似つかぬ可愛らしい方で、誰にでも分け隔てなく振る舞える社交性を備えられていて……」


 なるほど。

 フェイさんのライバルだった眼帯男もいいとこのボンボンなのか。

 家格が重要な黄の民なら当たり前っちゃ当たり前だった。

 外見からとてもそーは見えなかっただけで。


 ただインウェンの評を聞く限り、派閥の勢力争いのために不良債権的お嬢を押しつけられる、というわけではないらしいな。

 とゆーか、普通に良縁なんじゃないの?

 フェイさんもいい話だってことはわかってるだろうに、何が気に入らないんだろうか?

 インウェンに肩入れしたいのは山々だが、問題のない良家のお嬢をエンタメの犠牲に……傷つけるというのは、あたしのポリシーに反するんだよな。


「インウェンは問題の両家について、内情とかもっと詳しいことは知らない?」

「黄の民は族長を担ってよいとされる家が五つありまして、両家ともその五つに含まれています」

「ふーん、つまり黄の民では最高の家格なんだな? ちなみにインウェンの家はどの程度なん?」

「一応、その五つに次ぐ家格の家の一つです。でも父が家を出てしまっているので……」


 インウェン家も複雑なのかな?

 父ちゃんがいないと立場が弱いってことみたい。 

 しかし両家のお嬢については、問題ない子って以外に話が出てこない。


「うーん、実際に行ってから出たとこ勝負だな」


 会ってみなきゃわからん。

 やがて大きい屋敷が見えてくる。

 黄の民にしては飾りの洒落てる家だ。


「ここがシーハンさんのお宅です」

「美人さんの方だね」


 インウェンが頷く。


「こんにちはー」


 中から人が出てくる。


「はい、いらっしゃいませ。あっ!」

「話は聞いてるかな? 噂の美少女精霊使いがやって来ましたよ」

「し、少々お待ちください」


 使用人だろう。

 指示を仰ぎに行ったか。

 あ、すぐに戻ってきた。


「どうぞこちらへ」


 奥の広い部屋へ通される。

 ああ、中もイシュトバーンさん家に似た居心地の良さがあるな。

 こーゆーのは住人のセンスだと思う。

 

「こんにちはー」

「これはよくいらしていただけた。精霊使いユーラシア殿ですな?」

「そーだよ。よろしく」


 一家四人か。

 御両親と弟さんがいる。

 件のシーハンさんは二〇歳くらいか。

 ストレートの髪が美しい、目鼻立ちのハッキリした人だ。

 しかし……。


「美人だねえ。つかぬことを伺うけど、シーハンさん、絵のモデルに興味ないかな?」

「ユーラシアさん!」


 インウェンうるさいよ。

 画集も進めていかないといけないの。


「いえ、私はそうしたことに興味ありませんので」


 あら残念。

 断り慣れてる感じだな。

 ま、仕方ない。


「ところでお父さんは、ひょっとして冒険者の心得がおありで?」

「おわかりになりますか! 今日はドーラ最強の冒険者パーティーにいらしていただけるということで、楽しみで楽しみで!」


 あれ、妙なことになったな?


「よろしければ武勇伝などお聞かせいただけると……」


 弟さんなんか目キラッキラやん。

 あんだけクールそうだったシーハンさんも身を乗り出してきたぞ?

 家の外見的な印象と違って、パワー系の家風らしい。

 まー黄の民だもんな。

 期待されてるようだから……。


「一ヶ月ちょっと前、レイノスがカル帝国の軍艦に囲まれた事件があったんだけど」


 ドーラ独立に至った経過の一部になるか。

 あたしの体験した帝国での話を披露してやる。


「……役人を名乗る詐欺に気をつけろと、回覧板で回ってきたぞ? って言ったら、ソル君の仲間二人の女の子が笑っちゃってね」

「「「「「あははははははは!」」」」」


「……で、その艦長さんが、四天王と言うからにはあと二人いるのだろう? って聞くから、『カードマニア』と『インチキ横文字トーカー』だよ、と教えてあげたんだ。こちらの二人の精霊だけど」

「「「「「あははははははは!」」」」」


「……『精霊使いユーラシアのサーガ』のエピソードとして相応しいくらいかなって言ったら、うちの悪魔の子ヴィルが相応しいくらいぬ! ってとってもいい返事」

「「「「「あははははははは!」」」」」


「……お前ら一〇〇人も雁首並べて一人もおかしいと思わなかったのかって、上の人に怒られたらどうするの? 経歴に傷がつくぞ? って言ったら、何もしないで帰っちゃったんだ。迎え撃つ準備してたのに、肩透かしもいいところ」

「「「「「あははははははは!」」」」」


「……おっぱい割とあるんだよって教えてあげたら、どうして知ってる! って聞くの。ハグしたことあるからって言ったら、兵士さん全員が羨ましそうな顔で」

「「「「「あははははははは!」」」」」


「……覗きには敏感な年頃だし。でもすごいえっちな感覚があるから嫌いなんだけどって抗議したんだ。ハハハすまんなって謝らせたった」

「「「「「あははははははは!」」」」」


「……おかげで美少女戦士殿のような方と知り合うこともできますが、って言うの。十分おつりが来るわ、よかったねえって」

「「「「「あははははははは!」」」」」


 こんだけウケると実に気分がいいな。

 話し上手になった気がする。

 インウェンまで笑い転げてるし、うちの子達も楽しそう。

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