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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第652話:フェイさんの嫁取りイベントの件

「サイナスさん、こんばんはー」


 イシュトバーンさん家から帰ってきて、あとは寝るだけ。

 恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「イシュトバーンさんのところでお腹一杯ごちそーになったから眠い」

『君、毎晩眠いって言ってるじゃないか』

「心身ともに健康にして美少女精霊使いだからかなあ」

『関連がわからない』

「美容と健康のために、睡眠は極めて重要ってことだよ」

『ユーラシアの発言には、いついかなる場合も言い訳……理由が用意されてるなあ』


 サイナスさんが笑う。

 あたしは余裕を持った受け答えとゆーものが信用に繋がると考えているので、計算して喋ることを意識している。

 あんまりそーゆー風には思われてないようだけど。

 エンタメと軽口が前面に出過ぎているから?


『エンターテインメントと思われる連絡があるよ』

「おっとそりゃ楽しみだね。さあ、どんと来い!」

『夕方に輸送隊のお団子副隊長が来たんだ』


 今日は輸送隊がカラーズに帰着する日だった。

 なのにもうインウェンから連絡があったのか。

 インウェンも自分がレイノス行ってる間、黄の民の村で誰かに調べさせていたのかな?


「待ってたよ。明日だって? 明後日だって?」

『待ち構えてたのか。明日だそうだ。朝に緩衝地帯黄の民のショップに来てくれ、という話だったよ』

「楽しみだなー」


 サイナスさんは苦笑してるみたいだけど。


『フェイ族長の嫁取りイベントの件なんだろう?』

「だろうね。全然関係ない業務連絡だったりしたらビックリだわ」

『君のエンターテインメントポイントについて拝聴しようじゃないか』


 ハハッ、サイナスさんもエンタメだと思ってるんじゃないか。

 あたしがじっくり語ってやんよ。


「フェイさんの親族が推すくらいだから、二人の嫁候補ってのはどちらもかなりのお嬢さんだと思うんだ」

『理屈として間違いのないところだな』

「どの辺がフェイさんの気に入らないのか、ってのがそもそものエンタメポイントじゃん?」

『えっ? 君おそらくお嬢さん方に会うことになるんだろう?』

「そーゆー展開になる可能性は高いねえ」

『貶してくるんじゃないよ?』

「あたしは高潔な人格者だから、頭っから相手を否定する気はないよ。でも悪い子だったりするとわかんない。成り行きになっちゃう」


 どういう子かってのは、明日ある程度インウェンが教えてくれるんじゃないかな。


『おい、メチャクチャにしてくるんじゃないぞ? 今後の黄の民との付き合いにもかかってくるんだからな?』

「心配性だなー。族長であるフェイさんの了解があるんだから大丈夫だって」


 とゆーか、フェイさんが面倒になってあたしに振っただけなんじゃないかって気もするし。

 興味本位で見物しに行くのは本当に楽しいってばよ。


『ヨハン氏の方はどうだったんだ?』

「基本的にヨハンさんも、ラルフ君とヒルデちゃんが結ばれることに関しては賛成。ヨハンさん三日後に緑の民の村に来るって。これ、オイゲンさんに伝えといてくれる?」

『わかった』

「あたしも来てくれって言われてるんだよね」

『ユーラシアが? 何故?』

「万が一揉めた時、笑える方向に持っていけってことだと思うんだけど」

『無差別にエンターテインメント要素を持ち込むのはいかがなものか』

「ごもっとも。でもエンタメ無関係だと、あたしが行く必要性がないと思わない?」


 まあサイナスさんは当然、あたしが証人兼いざという時のための備えに行くことは理解しているわけだが。


『オレも行った方がいいか?』

「うん。名前だけとはいえ、他色の民の族長がいた方がいいと思う」

『……君、当たりが強くないか?』

「サイナスさん今日あたしに初々しさが足りないって言ったじゃないか。ちょっとだけ根に持ってるぞ?」

『まことにすまん』


 アハハと笑い合う。


「札取りゲームだけど、五〇〇セット注文もらったよ」

『ヨハン氏だな? ほう、最初から五〇〇セットもか』

「うん。明日フェイさんに頼んでくる」


 木札部分ができれば、緑の民に依頼している金属版が完成し次第、生産・出荷に取りかかれる。


「注文入ったことはアレク達にも言っといてよ。カラーズでの販売分と啓蒙活動用にバラ撒く分含めて、六〇〇セット作ってもらおうかと思ってるんだ」

『これはオレも楽しみだなあ』

「識字率向上は、地味だけど大きいプロジェクトだよ。初めは五〇〇セットからかもしれないよ? でも直にドーラの定番商品になると思うし、帝国にも輸出したいし、紙や本も売れるようになるからね」


 サイナスさんは以前、学校を作りたいと言っていた。

 しかし読み書き計算を教える初等教育機関を作るには、ドーラは貧し過ぎるのではないか?

 大体子供も労働力として期待されているし、教育の必要性を知る大人も実はさほど多くはない。

 元々字を読める人達は重要性を知悉しているのだが。


「あたしとしては『精霊使いユーラシアのサーガ』を読む人口が増えて欲しいよ。売り上げはメンツに関わる」

『ハハハ。誰かが書いてるって話だったか?』

「進捗はどうなってるんだろうな? 全然聞く機会がないからわかんないや」


 一度ダンに確認しておかねば。


『あのクララの絵の方は?』

「版画のクオリティはイシュトバーンさんにも気に入ってもらえた。おっぱいさんの了承が取れれば、美人絵画集の企画もスタートだよ。ヨハンさんも出版の方の商人さん紹介してくれるって言ってたけど、これ多分大きくなる話だからさ、いろんな人に絡んでもらって皆で儲けたいんだよね」

『君の話は夢があるなあ』

「でしょ? おゼゼの儲かる話は夢があるよ」

『そういうことじゃないんだが』


 どういうことだったろ?


『明日は黄の民の村だな。ハメを外し過ぎるなよ』

「サイナスさんはたまにフラグ立ててくるよね?」

『フラグじゃない! やり過ぎは本当に迷惑だから!』

「うーん、善処する」


 サイナスさんの言うこともわかる。

 やり過ぎると灰の民と黄の民の関係も悪くなりそうだから。

 でもフェイさんはあたしの裁量でって言ってたし。

 これは面白くしろってことだぞ?

 依頼者の期待には応えなきゃならん。


『今日は以上か?』

「うん。サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は黄の民の村かー。

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