第650話:絵はすごい価値
フイィィーンシュパパパッ。
「こんにちはー。こんばんはの方がいい時間帯かな?」
「ようこそ、精霊使い殿。これは大荷物ですな?」
イシュトバーンさんの家にやって来た。
今日は未判別のアイテムや美術品を一切合切持ってきているので、結構な量になっているのだ。
量的にワイバーンの卵は持ってこられなかったよ。
残念無念。
「結構な価値のあるものばかりとお見受けしますが」
「みたいだねえ。全部クエストで手に入れたんだけど、この絵なんか割といいものっぽいんだよね。あたしん家置いとくともったいないから、イシュトバーンさんに預かってもらおうと思って」
「そういうことでしたか。では運ぶのをお手伝いいたしましょう」
「お願いしまーす」
警備員さんは親切だ。
「ヨハンさん達はもう来てるかな?」
「はい。つい五分ほど前においでになったところです」
「ちょうどよかったなー」
主役の登場は後が望ましいが、遅過ぎるとエンターテインメント精神に反するからね。
屋敷まで行くと皆の顔が見えてくる。
「こんばんはー」
「おう、待ってたぜ」
「ユーラシアさん、こんばんは」
「師匠、こんばんは」
皆に挨拶して屋敷の中へ。
「……おいおい、絵ってこんなにあるのかよ?」
「大体毎日出るんだよね。主催者の趣味かもしれない」
「師匠、これはどうしたんですか?」
ラルフ君にはザクザク宝箱のことを話してなかったか。
幸せのおすそ分けとして話しとこ。
「最近取りかかってるクエストでね。毎日宝箱をもらえるんだよ。いくつか並んでて、その内一個がハズレ。ハズレ以外の全ての宝箱を開けると、次の日の宝箱は一個増えるって仕組みなんだ。すごく幸せなクエストでしょ?」
「おい、『当たり』と『ハズレ』が逆なんじゃねえか?」
イシュトバーンさんがからかう。
いや、あたしの感覚でも逆だけど、説明聞く方が混乱するだろ。
「……つまり、毎日ハズレだけを残して、他全部の宝箱を開けていると?」
「そうそう! 今日も一〇個以上開けてきたんだ」
「……」
口あんぐりのヨハンさん夫妻とラルフ君パーティー。
おかしいな?
わかりやすいシステムだと思ったけど。
そして面白そうな目で見てくるイシュトバーンさん。
「かなり危険なクエストではないですか?」
「まあ高レベルのあたしんとこ振られるんだから、ヤバいクエストなんじゃないかな」
「ハズレの宝箱を開けてしまうと、相当なペナルティがあると予想されるでしょう」
「多分ね。でもハズレなんか引かないから関係ないな。主催者が降参するまで、宝物全部かっぱぐつもりでいるんだ。すごく毎日楽しいから感謝してるよ」
ヨハンさんが言う。
「ユーラシアさんだと、見ただけでハズレ宝箱はわかるものですか?」
「わかっちゃうねえ。何となくカンが働くの」
あたしは『閃き』の固有能力持ちだから当然だ
あたしほどでなくてもレベルの高い冒険者だったら、ある程度の危険は察知できると思う。
「ま、過程はどうでもいいぜ。飯が出てきた」
「いっただきまーす!」
◇
「じゃあブツを見ていくぜ」
「お願いしまーす」
お腹一杯で満足だ。
食後にイシュトバーンさんがアイテムを手にしながら品定めをしていく。
「各種状態異常耐性と即死無効付きのティアラだな。この魔法銃は最高グレード、かつマジックポイント自動回復付きだ。この矢立てないし箙は矢の自動生成機能はもちろん、矢に闇属性が付与される」
へー、闇属性付与なんて難しいだろうに。
結構なお宝だな。
パワーカード装備のうちのパーティーには用のないものだが。
「即死・スタン付与の物騒なダガー、沈黙無効付き魔法防御三〇%アップのローブ、睡眠・混乱・激昂無効付き回避率二五%アップの盾、ヒットポイント自動回復八%付きで敏捷性と運以外のパラメーターをかなり引き上げるフルプレートアーマー」
「す、すごい……」
ラルフ君達が目を丸くする。
「ま、伝説級ってほどじゃねえが、かなりの逸品ぞろいだぜ」
「ラルフ君達にも何かあげるよ。でもクエスト終わるまで待っててね。ひょっとするとこれ持ってることで、黒幕に絡まれるかもしれないから」
「おい、あんた美術品置いていこうとしただろうが!」
「だからわざわざ預かってくれるかって、確認取ったんじゃん。イシュトバーンさんは面白いことあった方が楽しいんじゃない?」
ハハッ、慌ててるわ。
いや、絵はマジックアイテムじゃないから、さすがに探知できないと思うよ?
「これ、今日手に入れたお宝なんだけどさ。鳴るとワイバーン出ちゃうの」
鳴らないようにしてあるハンドベルを渡す。
「魔寄せの鐘の類だな。実物見るのはオレも初めてだ。しかしワイバーンが出る? よっぽど強く振ったんだろ。デカい音が出るほど強力な魔物が現れるんだぜ」
「マジか」
結構思いっきり振ったような気がする。
これもヤバめなアイテムだな。
壊しちゃった方がいいか?
ヨハンさんは美術品に興味があるらしい。
「こちらは絵ですか。素晴らしいですな」
「呆れたもんだ。二〇枚近くあるじゃねえか」
イシュトバーンさんもそちらを見始める。
「……実にいいじゃねえか。エイトク、タイカン、チヒロなどなど、ここ五〇〇年くらいの帝国、あるいはそれ以前の時代の画家だな。いずれも行方がわからなくなっていたものだ。見てみろ、コサカの『ペンとパイナップルとリンゴ』だぜ? 持ってくとこ持っていけば、一〇〇万ゴールドは下らねえ」
「メッチャ高いな」
ビックリだ。
素材やパワーカードは数千ゴールドだから、同じくらいの価値のものだと思ってたよ。
絵描きって儲かるのかな?
「売っちゃった方がいいかな?」
「待て待て、こういうものを欲しがるのは帝国の貴族か大商人くらいだぜ。売る伝手がねえだろ。出所を探られてもつまらねえ」
「むーん? それもそーか」
うまいこと売れるなら、ドーラ発展の資金につぎ込めるんだが。
帝国人の知り合いなんてリリーくらいだ。
リリーが絵なんて高尚な趣味を持ってるとは思えんし(偏見)。
仕方ない、惜しいけどしばらくは保留だな。
「これ見てみろよ。あんたの像だぜ」
「あたしの?」
どゆこと?
ああ、女神像は地母神ユーラシアのものだったのか。
「なるほど、道理で気品があると思ったよ」
こら、笑うとこじゃないわ。
まったく失礼な。




