第65話:変態紳士ピンクマン
さて、用は終わったな。
そろそろお昼だ。
食堂でお昼御飯食べていくか。
「おい、ユーラシア。こっち来いよ」
食堂から聞き覚えのある声だ。
振り向いたら負けのような気もする。
銀髪ツンツン頭、悪そうで憎めない笑顔の情報屋、ダンだ。
「何なの奢ってくれるのありがとう」
「流れるように決めつけるなよ。まあいいけどな。紹介するぜ、こちら変態紳士のカール。『アトラスの冒険者』だぜ」
「『変態紳士』って他人の紹介に使っていい言葉なんだ?」
『アトラスの冒険者』になってから常識が歪む気がするなあ。
まあ色々おかしい『アトラスの冒険者』に常識を求めてもな。
「よろしくね。あたしは美少女精霊使いユーラシアだよ」
変態紳士カールは初めて見る人だ。
何故言い切れるかというと、格好がユニークだから。
ピンクの帽子と上着に黒眼鏡。
こんなん忘れるようじゃ記憶力がどうかしてる。
「……こちらが、あの?」
「そう、ペペさんからスキルを買った精霊使いのユーラシア」
変態紳士と精霊使いが並列の二つ名みたいで嫌だなあ。
「……カールだ。今後ともよしなに」
何だこの人?
モジモジしてるし、挙動不審なんですけど。
人見知りなのかな?
こんな態度で『アトラスの冒険者』の依頼が務まるのか?
「すまんな。こいつ、可愛い子を前にすると緊張しちまうんだ」
「そーゆーことなら仕方ない。あたしの罪だ」
「こんなに色の白い幼女は初めてで……」
「クララかよ! 黒眼鏡外せ、どっち向いてるかわかんないから!」
強引に黒眼鏡を剥ぎ取る。
……まあまあ見られる顔じゃないか。
ダンが深刻ぶって言う。
「カンのいいあんたのことだからもうわかってると思うが、カールはいわゆるロリの国の住人だ」
「そんな国はない」
言い方が冷たくもなるわ。
どーしてダンはこんなのに会わせた?
こらそこのピンクマン、クララをチラチラ見んな。
脅えてるだろうが!
「クララのためなら罪を犯すよ……」
「まあ待て、パワーカードしまえ。実はこのカールはペペさんの信奉者でな」
「ペペさんの?」
とりあえず起動しかけた『スラッシュ』を止める。
「ドーラ大陸一の魔道士に名が挙がるくらいすごい人だが、あのなりだろ?」
「まあペペさんは一〇歳以下って言っても通用しそうだけど。え? でも実際の年齢はかなり上なんでしょ?」
「小生、実年齢を愛でたいのではないゆえ」
おお、何となく名言っぽいな。
筋の通ったロリの人だった。
さすがは変態紳士。
「でよ、ペペさんのスキル買った時の話が聞きたいんだと。二番目の時に俺は見てたが、最初の時もどうせ愉快な掛け合いだったんだろ? 話してくれよ、俺も聞きてえんだ。こいつが飯奢るから」
「そーゆーことなら。あっ、ペペさーん! こっちおいでよ、食事ごちそーしてくれるって!」
ナイスタイミング!
片付けを終え、今まさに帰ろうとするペペさんをうまいこと捕まえた。
喜んでこっち来たよ。
予想通りだ、生活楽じゃないって言ってたし。
ダン、面白がるな。
ピンクマン、慌てんな。
「こっちがダンでそちらがカール、カールはペペさんの大ファンなんだって」
「まあ、そうだったの? 初めまして」
やっぱり初めましてだった。
だってペペさんいつも寝てるもんな。
こらピンクマン、固まってんじゃないよ。
声かけろ声。
「……あ、あの小生……」
こっち見んなピンクマン。
助け舟出せってか?
「ごめんねえ、憧れのペペさんと差し向かいで緊張しちゃったみたい。注文入れてよ」
「そお? じゃあ遠慮なく」
――――――――――三〇分後。
「で、あたしが『次も期待している。あんたの比類ない才能が、あたし達が習得するに相応しいスキルを完成させることを』って言ったら、ペペさんが『わがっだあああ、がんばゆうううう!』って号泣よ」
「あははははっ! そうだったわねえ」
最後のローストコウモリ肉を摘みながら、最強魔法を買った時の話を面白おかしく(事実)してあげた。
そしたらダンは食いついてくるわピンクマンは感涙に咽ぶわでえらいことに。
「ううっ、ペペ様聖女だ……」
「ペペさんはどうしてユーラシアに入れ込むんだ?」
ダンが問うと、さも当然といったふうにペペさんは答える。
「私のスキルを使いこなしてくれるからよ」
「いやいや、使いこなしてるなんておこがましいから」
「でも津波漁なんて、私全然考えつかなかったのよ?」
「漁じゃねーよ!」
どっかん爆笑。
「あ、そろそろ私、おいとまするわね。カールさん、どうもごちそうさまでした」
「あうあう……」
だからこっち見んなピンクマン。
「どういたしまして、また声おかけしてよろしいですか、と言ってまーす」
何であたしが通訳だ。
全くわけがわからん。
ペペさんはニッコリ答える。
「もちろん喜んで。私、いつも寝てますけど、構わず呼んでくださいね。では失礼いたします」
「ばいばーい」
会釈して帰ってゆくペペさんを手を振って見送った。
ロクに喋れもしなかったヘタレピンクに向き直る。
「どうよ?」
放心状態のピンクマンがいきなりカッと覚醒し、肩を掴んでくる。
何すんだ。
ドキッとするわ。
「ありがとうありがとう! 小生、今日は天にも昇る気持ちだ……」
喜び過ぎだわ。
却って引くわ。
「何か礼をしたいのだが」
「いや、うちの子達の分まで奢ってもらったし、十分だよ」
「食事だけでは申し訳ない」
ダンが口を挟む。
「精霊使いはパワーカードっていう、特殊な装備品使ってんだ。これ作るのにやたらと素材を必要とするらしいから、あげたら感謝されるぞ」
「確かに素材もらえるのはありがたいけど、本当にいいから。次からちゃんとペペさん誘いなよ?」
「難問だ、御助力願いたい」
「アホかーっ!」
さて、ごちそーさま。
あたし達もボチボチ行くか。
しかしペペさんえらく大量に食べてったな?
あの小さな身体のどこに入ってくのか謎だ。
「ダンは午後からマウ爺アンセリのお手伝い?」
「まあな」
真面目に頑張ってるな。
ソル君との合流が楽しみだ。
「ピンクマンは?」
「小生は帰る。ペペ様がお帰りになられたからな」
変態紳士はブレがないな。
「ユーラシアこそどうすんだ?」
「パワーカードの工房行く。昨日今日で新しいやつ含めて素材が結構手に入ったからね」
「おう、またな」
「じゃーねー」
転移の玉を起動し、一旦ホームに戻る。




