第648話:初々しさが足りない
さーて、大分面白いことになったから連絡しておくか。
赤プレートでヴィルに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ!』
よしよし、いい子だな。
「イシュトバーンさんに繋いでくれる?」
『わかったぬ! ちょっと待つぬ』
しばらくの後、イシュトバーンさんの声が聞こえる。
『おう、精霊使い。愉快な話だな?』
「愉快な話だよ」
『あんたの縁談か?』
「そっちはまだなんだけど、ラルフ君のラブい話が急浮上しちゃったの」
『ヨハンの息子の? どういうことだ?』
かくかくしかじか。
緑の民族長家がどうのこうの。
『ほう? じゃあ緑の民の交易参加問題も解決か?』
「一応ね。ただこれ、ヨハンさんの言い分もあるかもじゃん? ヨハンさんに確認取らないと」
『問題ねえだろ。今晩来れねえか? できればヨハンとラルフも連れてこい』
「あとでヨハンさんとこへ報告に行くから、イシュトバーンさんが来いって言ってたと伝えとくよ。行けるようなら、もう一度ヴィル飛ばすから」
『わかった。待ってるぜ』
「例の宝箱クエストで、結構美術品みたいなのが出てくるんだよ。いいものだと思うんだけど、あたしん家じゃ埃っぽいから、イシュトバーンさん家で預かってくれない?」
『おう、構わねえぞ』
「じゃあまたあとで連絡するよ。ヴィルありがとう。通常任務に戻っててね」
『了解だぬ!』
こっちはこれでよし。
美術品の倉庫も無事決まりました、と。
「えーと、若い二人はどうなったかな?」
「さっきチラッと見たが、固いというか初々しいというか。見てるこっちが恥ずかしくなる」
「ダメだなあ。『威厳』持ちなんだからどうにでもなるのに」
「君に足りないのは初々しさだな」
何をゆーか。
あたしはピチピチだわ。
サイナスさんは最近あたしに対して失礼だ。
「おーい、ラルフ君! 名残惜しいだろうけど、今日は帰るよ!」
空気を読め?
ラブラブに付き合ってたら日が暮れちゃうだろーが。
「ヒルデちゃんごめんね。今度は時間ある時にラルフ君を寄越すからね」
「いえいえ、そんな……」
赤くなるヒルデちゃん。
可愛いやつめ。
マジでラルフ君とはお似合いです。
「では師匠、ギルドで待ち合わせということで」
「うん、サイナスさんごめん。送っていけないけど」
「いいよいいよ」
「では、皆さんさよーなら!」
オイゲンさんも長老ズもぺこぺこ頭を下げてる。
喜んでもらえるのは気分がいいな。
転移の玉を起動して帰宅する。
◇
「……とゆーわけなんだ」
ラルフ君家に来て、緑の民族長家であったことを説明した。
ラルフ君パパママの驚くまいことか。
「ラルフちゃん……」
「ユーラシアさんの目から見て、そのヒルデさんはどうですかな?」
ヨハンさんはさすがに冷静だな。
「大人しめの子だよ。正直民を導く立場としてはどうかと思うけど、ラルフ君とは相性バッチリ。ラルフ君がバックにつくなら、問題なく緑の民は治まると思う」
「し、師匠……」
「お愛想でも冗談でもなくて本気だぞ?」
ラルフ君は照れてるけど、ヨハンさんは真剣だ。
ふっと息を吐いて言う。
「……ユーラシアさんをラルフの嫁に迎えられないのは非常に残念ですけれども、これも巡り合わせというものでしょう」
あたしを嫁にって本気だったのかよ。
最近モテ過ぎるわ。
ヨハンさんが大きく頷く。
「わかりました。族長になる気はさらさらないという誓約書を持って、緑の民の村を訪れればいいですな? いつがよろしいでしょうか?」
「早い方がいいとは思う」
とは言っても、ムオリス君の『フライ』を使わず普通にカラーズを訪れるのであれば、二日は見なくちゃいけない。
三日後の輸送隊出立に緑の民の交易品を間に合わせるのはムリだな。
緑の民から隊員の選抜まではできたとしても、パワーレベリングが追いつかない。
まあ、次々回の輸送隊出立までに交渉成立できれば御の字だろう。
「ユーラシアさんも来ていただいてよろしいでしょうか」
「あたしが?」
ははあ、慎重だな。
トラブった時は落ち着かせてくれってことか。
明日明後日のどちらかは黄の民の村で面白イベントがあるはずだし……。
「三日後どうだろ?」
「では三日後で」
「ラルフ君は『遊歩』のカードは持ってるんだっけ?」
「噂の飛行カードですよね。まだなんです」
「注文しときなよ。ヒルデちゃんに会いに行く時必要だから」
「……」
あんまりからかわれ慣れてないのな。
ラルフ君が行けないのなら……。
「じゃ、緑の民へはあたしから連絡入れておくね」
「はい、お願いします」
よし、これでオーケー、と。
「今晩イシュトバーンさんにお呼ばれしてるんだよ」
「イシュトバーン殿に?」
「あんまり意外な決着の仕方したから、さっきイシュトバーンさんに話したんだ。そしたら、できればヨハンさんとラルフ君も連れてこいって」
「ハハッ、肴になれということですな?」
御名答です。
「今晩ですな? わかりました。参りましょう」
「ヴィル、聞こえる?」
赤プレートに話しかける。
『聞こえるぬ! 待ってたぬ!』
待ってた?
『代わるぬ!』
あ、イシュトバーンさんのところで遊んでもらってたのか。
『おう、精霊使い。どうだ?』
「大丈夫だよ。ヨハンさんに代わるね」
プレートをヨハンさんに渡す。
『おうヨハン。めでたいことになったようだな』
「どうやらそのようで」
『今日は来てくれるんだな?』
「はい、もちろん。私と妻と、ラルフの冒険者パーティーの合わせて六名で参りますが、よろしかったでしょうか?」
「あたしはうちの子達とヴィルで行くよ」
『わかったぜ。ハハッ、大人数で楽しいな』
イシュトバーンさんも嬉しそうだし。
「じゃ、また夜に」
『おう、待ってるぜ』
「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻っててね」
『わかったぬ!』
これもよし、と。
最後に商売の話だな。
「ヨハンさんに紹介しておきたい、こんなものができたんだ」
「父様、これはドーラの識字率を上げるという目的の、師匠の戦略商品です」
札取りゲームの説明をうんぬんかんぬん。
「これはぜひ普及させたいものですな!」
「白の民の村で子供達に遊ばせたら、すごく食いつきが良かったんだよ。プレイしてるところを見せることさえできれば絶対に売れるはず」
「実演ですか。考えてみましょう」
五〇〇セット注文いただきました。
やったぜ!




