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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第645話:『威厳』で決着?

 ――――――――――一三四日目。


「アリスー、帝国の第四皇子ルキウスって人の評判はどんな感じ? 今度新任の在ドーラ大使として来る人」


 今日は朝からギルドに行ってラルフ君を連れてくる予定だった。

 が、お肉のストックが少ないことに気付いたので、先に本の世界へコブタ狩りに来たのだ。

 お肉とラルフ君、どっちの重要性が上だと考えれば妥当な判断と言える(キリッ)。


「悪くないわよ。政治手法としては、話し合いを重視する調整型の人物として認知されているわ。辣腕家の主席執政官第二皇子ドミティウスの陰に隠れがちだけど、一部高官の評価は第二皇子以上よ」

「へー、いい人かな。あっ、リリーとの仲はどうかな? 第七皇女の」

「良好よ。同腹の兄以外で、最もリリアルカシアロクサーヌ皇女と親しい兄弟姉妹はルキウス皇子だわ」

「ふむふむ」


 リリーと仲がいいならいい人に違いないな。

 プリンスルキウス推しで考えててよさそう。

 会うのが楽しみだ。


「前に絵のモデルお願いするかもって言ったじゃん?」

「ええ」

「あの話ちょっと前に進んだんだ。多分頼むことになるからよろしくね」

「わかったわ」


 画集の話が流れたとしても、イシュトバーンさんにアリスの絵は描いてもらおう。

 美女美少女に会わせると言っといて、いきなり人形だったらどういう反応示すか楽しみだ。

 意表を突いてやるニヤニヤ。


「じゃあね、アリス。また来るよ」

「またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ギルドにやって来た。

 角帽のギルド総合受付ポロックさんは、いつもニコニコしている感じのいい人だ。


「やあ、おはようユーラシアさん。今日もチャーミングだね」

「おっはよー、ポロックさん」

「今日も朝から仕事かい?」

「ラルフ君パーティーと待ち合わせてるんだ。カラーズ~レイノス間の交易関係で、ラルフ君連れてこいってことになってるの」

「ほう、商人のお父さんの方じゃなくてラルフさんをね?」


 ポロックさんはある程度話を聞いてるのかな?

 少し話しておくか。

 どこから状況を打開できる展開になるかわからんし。


「ラルフ君パパは腕利きの商人で、今カラーズ~レイノス間の交易を仕切ってもらってるんだ」

「うん、聞いているよ」

「だけどラルフ君パパは、カラーズ緑の民の村の族長家とゴタゴタがあるんだよ」

「ふうん、どうしてなんだい?」

「ラルフ君パパの両親が、カラーズ緑の民の村から飛び出してきた人なんだ。血筋の上から言うとラルフ君パパは、今の族長より緑の民を束ねるのに相応しいそーで」

「ははあ? だから緑の民の村の族長が警戒していると?」

「そゆこと」


 正確に言うと警戒してるのは族長じゃなくて、族長の叔父叔母連中だけど。


「人間関係で揉めてると緑の民が交易に参加してくれないじゃん? ラルフ君パパじゃなくて、ワンクッション置いてラルフ君が顔合わせに行くのはどうかって案が出てさ。緑の民族長家の了承が得られたんだ」

「ラルフさんの『威厳』に期待するということかな?」

「うん。顔合わせできりゃ『威厳』が効くから、勝ったも同然」


 『威厳』は、自分より低レベルの者に譲歩を引き出す固有能力だ。

 こういう時の交渉には抜群の威力を発揮するはずだが?


 シュパパパッ。

 あ、誰か飛んできた。


「ピンクマンとサフランか」

「おはよう、カールさん、サフランさん」

「おはよう。ここだと邪魔になるだろう。中へ」


 ピンクマンに促されてギルド内部へ。


「師匠、おはようございます」


 既にラルフ君パーティーは来ていたか。


「おっはよー。ラルフ君達もちょっと食堂来てくれる」

「はい」


 皆で食堂へ。


「今日、ラルフ君パーティーを緑の民の村へ連れていくんだ」

「交易について緑の民首脳を説得する件だな? 状況は最終局面だな。ではラルフの『威厳』で決着するということか?」

「とゆーつもりだったんだけど、どーもまだ見えてないことがあるんだよね」


 緑の民族長家長老連にラルフ君を紹介することになった経緯について、ピンクマンに話す。


「おかしいじゃないか。ヨハン氏の血筋が排斥される条件が変わらないのなら、ラルフが歓迎される理由がない」

「明らかに変だよねえ? ラルフ君、ヨハンさんは何か言ってた?」

「いえ、何も心当たりがないようで」


 はてな?

 波乱要因には違いないが。


「緑の民長老ズもオイゲン族長も、ラルフ君が『威厳』持ちだってことは多分知らないんだ。だから面会さえできれば、あとはスルスルいくはずなんだけど」

「うむ、会わせてしまえば揉めなさそうだが?」


 ピンクマンの表情は、ありありと『ユーラシアはトラブルメーカーだから』と言ってる。

 そーゆーのわかるからな?

 おかしなフラグ立てんな。


「ま、緑の民の方はラルフ君を連れてく段取りができた時点で問題なし」

「問題があったらパワープレイなんだろう?」


 はい、ゴリ押します。

 もう緑の民長老ズとガタガタやってるの飽きたから終えたいしな。


「ところで新人さんの方、どうなってんの? あたしも毎日チュートリアルルームに顔出してるんだけど、全然変化なくて」

「カールさんと師匠が担当されてるんでしたっけ?」

「そうそう」


 ピンクマンも顔をしかめる。


「小生も会えないのだ。新人は一回しかチュートリアルルームに来ていないのだろう?」

「らしいね」

「難しい人なんですか?」

「バエちゃんは『悪い子』って言ってたよ。でも話聞く限り、理屈っぽいタイプか疑り深いかだけのような気もするんだよね」

「小生もそう思った。実際に会ってみなければわからんが」


 この新人はヨブ君みたいな怠け者ではなさそうだ。

 『アトラスの冒険者』の資格をむざむざ放棄するとも思われない。

 いずれチュートリアルルームでじゃなくても、ギルドで会うことになるのだろうが……。


「こっちからアプローチもできないしねえ」

「ああ。待ちしかない」


 ピンクマンにも新たな情報はなかったな。

 なら放置だ。


「さて、ラルフ君達行こうか。デートの邪魔しちゃ悪いし」

「「「「はい!」」」」


 サフランに目配せする。

 ピンクマンが抗議しようとしてるが、あんたらはどこからどう見てもデートだからな?

 武器・防具屋さんで『遊歩』のパワーカードを二枚注文、フレンドで転移の玉を起動し、ラルフ君パーティーとともに帰宅する。

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