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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第638話:色々な話

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後に恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。魔法の葉ありがとう』

「マジックウォーターに加工するんでしょ?」

『そうだな』

「よかった。お弁当に入れるとかだったらどうしようかと思った」

『弁当? マジックポイント回復効果があるからかい? さすがにコストが高くなり過ぎるな』


 あれっ? 話が通じてない気がする。

 サイナスさんは魔法の葉の地獄の味を知らないのかもしれないな。


「マジックウォーターって売れる? 掃討戦の時は買い込んだけどなー」


 『風林火山』のパワーカードを手に入れてマジックポイント自動回復が可能になるまでは、あたしも時々マジックウォーターを買ってた。

 でもギルドでだしな?

 カラーズで売れるのかしらん?


『まあカラーズ内では大して売れるものではないな。ただレイノスでいい金になるらしく、買い取り屋が引き取ってくれるんだよ』

「あっ、なるほど!」

『直接輸送隊に任せてレイノスで売った方が利幅は大きいんだろうが、買い取り屋を儲けさせてやってもいいだろう?』

「うん、あたしもその考え方は好き」


 買い取り屋さんとは仲良くしといた方がいいよ。

 しかし薬品は一般販売のルートが難しいんだよな。

 あたしは母ちゃんを病気で亡くしているだけに、怪しげな薬屋じゃなくて、信頼できる大手の薬屋とゆーものがあるといいなあと思う。

 冒険者を顧客にしてポーションやマジックウォーターなどで安定した儲けが出るなら、もっとマニアックな薬も置いておけそう。

 いいお客さんを持ってる店が羨ましい。


「買い取り屋さんがマジックウォーター売ってるのは、レイノスのどこの店だろうな……その店買い取れないかな?」

『こらこら、脱線するな』

「いや、割とマジなんだけど。うちにはクララがいるのだ。薬草は手に入る。既に客のついてる薬屋があるなら、絶対今以上に繁盛させてみせる」

『君、以前ドーラを買えるくらいの金持ってたこと忘れるなよ?』

「むーん? あんまり手を広げ過ぎても関われないしな」

『ああ。大人しくしてなさい』


 何かのフラグのような気はするが、あんまり心配させ過ぎてサイナスさんハゲちゃうと気の毒だしな……デス爺のハゲはあたし関係ないよね?


『あの話はどうなったんだ? 黄の民お団子副隊長の』

「すげえ面白いことになってた! 何とフェイさんがあたしを嫁に欲しいんだって」

『えっ? それは……』


 それは何だよ。

 ツッコミ殺しか。


「輸送隊が帰ってくると話が動くと見たね。あたしの読みでは」

『君どうするんだ? 結婚するのか?』

「フェイさんと? ないなー。大体フェイさん自身が望んでるわけないな」

『どういうことだ?』

「親族連中がうるさくて、面倒になってるんじゃないかと思うんだ」


 つまり二人の令嬢を抱き込んだ両陣営それぞれからの縁談の推しが強くて、フェイさんも辟易してたんだろう。

 立場上フェイさんがどちらも選ばずに断ると角が立つ。

 だからあたしを引き合いに出して、うやむやにしてしまえという算段なのだと踏んだ。


「だけど思ったより大マジで親族一同に反対されたもんだから、これあたしに振ったらどうなるか、イタズラ心が湧いたんだよ、きっと」

『安心した』


 ホッとせんでも。


「心配しなくても、カラーズ内のパワーバランス的にあたしがフェイさんとこ嫁ぐ未来はないな。フェイさんもわかってるって」


 あたしの判断力に期待してるらしいしな。


『輸送隊が帰ってくると話が動くのは何故だ?』

「あたしが黄の民の村うろつくとなると、インウェンのガイドが必要だからだね」

『黄の民の村をうろつく?』


 サイナスさんわからないか。


「要するにあたしがフェイさんの縁談を壊しに行くんだよ」

『……悪ふざけも大概にしておけよ?』

「先方の御希望だから仕方ないじゃん」


 あたしじゃなくて、フェイさんの悪ふざけだぞ?


『白の民の村の方は、煽って子供達にやる気を出させたと聞いたが』

「アレクから聞いた? 子供達は特に問題なかったな。皆いい子」

『ルカ族長も満足しておられたか?』

「うーん。でも白の民は識字率が特に低いんじゃないかって感じたよ。札取りゲーム試作品が大人気だった」


 未来が見えるとワクワクするもんだ。

 字を覚えると世界が広がるって刷り込んできたからな。


『札取りゲームの木製プロトタイプができ上がってきてたぞ』

「完成度どうだった?」

『問題ないと思う。金属版を依頼してきたと言っていた』

「よしよし。明後日ラルフ君が来るから、その時ヨハンさんにも会ってくるよ」


 札取りゲームの需要があることは確かだが、類似品が出るまでにブランドとして確立するにはそれなりの仕掛けが必要と思われる。

 イシュトバーンさんにも概要を知らせといた方がいいかもしれない。


「あたしの方からもう一つ。パラキアスさんと連絡取ったんだけどさ。例の帝国の第四皇子、ドーラに大使として着任するのは明後日だって」

『早いな。会ってくるのか?』

「リリーを連れて、行政府行ってこようと思う。大使って暇なのかな? いつでも会えるぞみたいなこと言われたんだけど?」

『実質左遷なんだろう? ユーラシアの話を聞く限り、第四皇子が活躍できそうな場所に送り込まれるわけがない』

「もっともだねえ」


 逆にこっちで功績挙げたらすごく目立つってことかな?


「超すごいお茶を持っていこうと思うんだ。皇族に飲ませてお墨付きをもらえれば、堂々とぼったくり価格で輸出できる」

『というより、第四皇子ルートで輸出したらどうだ?』

「え?」


 サイナスさんが変なこと言いだしたぞ?

 第四皇子ルートとは?


『どうせあのお茶は上流階級向けなんだろう? 第四皇子に口を利いてもらえなければ、あのお茶が手に入らないとなれば、貴族や大商人の間で皇子の存在感は増す』

「サイナスさんはズル賢いなー。その作戦で行こう!」

『君にズル賢いと言われるとへこむんだが』

「美少女精霊使いの精一杯の賛辞なのになー」


 もっともこの件はあたしの一存ってわけにいかない。

 パラキアスさんやオルムスさんと相談だな。


「今日も楽しかった。サイナスさんおやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は空いたな。

 ニルエ連れてレイノス見物にでも行くか。

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