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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第637話:精神衛生上は良さそう

 フイィィーンシュパパパッ。


「やあやあ遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそは美少女精霊使いユーラシアなるぞ!」

「姐御、何の名乗りでやすか?」

「何のじゃなくて何となくの名乗りだね。気分ってやつだよ」


 アハハと笑って宝箱を眺める。

 今日もまた日課のザクザク宝箱のクエストにやって来た。

 日課のクエストってのも考えてみりゃおかしなもんだから、ノルマのクエストって言い変えた方がいいか。

 さらにおかしいかな?


「一日一回しかチャレンジできないってのが腹立たしいなー」

「まあまあ、主催者さん側も準備が必要なんですよ。きっと」

「結構なお宝が入ってるもんな。美しく可憐なあたしに献上するために、吟味に吟味を重ねてるのかもしれないし」

「ボスはゴーヨクね」

「そうそう、あたしは強欲あたしは最強」


 アハハ、ダンテがあれっ? って顔してら。

 このパターンは大体あたしが何だとお! って怒鳴るのがお約束だからな。

 意表を突いたった。


「今日の姐御は温厚でやすね?」

「あたしは常日頃から温厚だけれども、こう宝箱が並んでると細かいことはどーでもよくなるね。ただし、一日何度も宝箱クジを引きたいのは本音だよ」


 ダンテがやっぱりゴーヨクねと呟いてるのを華麗にスルーして宝箱を検分する。

 パッと見いつもと変わりないな。

 宝箱の数が増えてるだけ。

 当たりの数も一つ。


「いよいよ一〇個か。二桁ともなるとなかなか壮観だねえ」

「本当にザクザク感が出てきました。ワクワクしますねえ」

「アイシンクソー、トゥー」


 うちの子達も宝箱は大好きだ。


「でもこれ、何百個も宝箱並べるだけのスペースがないよねえ。一年後とかどうするつもりだったんだろ?」


 一〇〇個くらいなら何とか置けそうだけど?

 でもぞんざいな扱いの宝箱って嫌だなあ。

 開けるのにワクワクドキドキしないのなんて宝箱じゃない。

 そんなんだったらいっそのこと、中身だけくれればいい。

 

「先のことまで考えてなかったんでしょうねえ」

「困るなー、設定の甘いことでは」

「ボスをナメてたね」

「野郎、舐めくさっていやがるのか!」

「怒らない怒らない、自分が誰に歯向かってるかさえ理解しないで宝箱を提供するんだから、可愛いもんじゃないの」


 皆で笑う。

 ザクザク宝箱クエストの主催者は、あたしが宝箱を外したというか当てた時の制裁を心待ちにしてるんだろうが、残念ながらドジは踏んでやらん。

 ここまで来ると残り一個の宝箱に後ろ髪引かれる思いより、イベントが破綻した時、どんな悔しそーな顔してあたし達の前に現れるかの方がワクワクだからね。

 最終日までにどれだけお宝を回収できるのかも楽しみ。


「クララ、立札の内容に変わりはない?」

「はい。変わらないです」

「ふむふむ。そろそろ降参して銅鑼鳴らすの許してもらえるかと思ったけど」

「許しなんか関係ないでやしょ?」

「関係ないけれども」


 こらダンテ。

 ふーって顔するな。

 どうせあんたも鳴らすんだろーが。


「さーて、景気付けに思いっきり鳴らしてからだな。いくぞおー!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」

「あっしも鳴らしやすぜ!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」

「ミートゥー!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」

「念のため私も!」


 だから何の念だ。

 クララは昨日もそう言ってたけど。


「グオングオングオングオングオングオーン!」


 うーん、ファンタスティック。

 心まで洗われるようだ。

 何かこれだけで今日のノルマを達成した気でいたわ。

 でも本番はこれからだったわ。


「宝箱いっちゃうぞお!」


 今日は前列五、後列五の、合わせて一〇個の宝箱が並んでいる。


「開けられるのは九個か」


 どーすべ?


「あんた達三つずつ開けてきなさい」

「姐御はいいんでやすか?」

「宝箱を見てる時は幸せだけど、開ける時はそーでもないことを知った一五歳の冬」

「マジックリーフショックね?」


 正解だよ。

 これ以上魔法の葉引いたら夢に出るわ。


「いや、あたしもお約束を否定するわけじゃないんだよ? ここ一番の場面で魔法の葉が出てうぎゃーってのは許容するの。でも毎回魔法の葉ってのは違うわ。あたしはぞんざいに扱われる安い女じゃないわ」

「言い訳はいいでやすぜ」


 言い訳じゃな……言い訳だわ。


「よーし、宝箱開けちゃってください!」

「「「了解!」」」

「ボス、トゥデイはどれがストライクね?」

「おっとごめんよ。今日の当たりは後列の右から二番目だね。興味があるからって開けちゃいけないよ。正直あたしもすごーく誘惑に負けそうな時あるけど」

「負けないでくださいよ」

「いいお宝が出続ける内は誘惑に打ち勝ってみせるよ」

「何が誘惑だかわかりゃしねえ」


 笑いながら宝箱を開けていくうちの子達。

 何が出る?


「魔法のダガーです!」

「白い魔宝玉でやす! 見たことのないやつ!」

「ピクチャーね!」

「絵は結構出た気がするけど、主催者の趣味なのかな?」

「かもしれませんねえ。あ、こっちも絵です。風景画!」

「女神像でやす!」

「ペンダントね! マジックアイテム!」


 あと一周だ!

 張り切っていってみよう!


「現金五〇〇〇ゴールドです!」

「魔法の兜だぜ!」

「ブックマップ! ワールドマップね!」

「本にまとめられてる地図? こりゃまたえらく毛色の変わったものが出てきたね」


 あれ? クララがメチャメチャ食いついてますが。

 あたしもこれからのドーラは帝国以外の外国とも付き合っていかなきゃいけないと考えているから、世界地図は欲しいと思ってたけど。


「広域の地図はカル帝国が禁制品に指定しているので、ほぼお目にかかれないんですよ。しかもこれほど詳しいものとなると……」


 ほう、お宝だな。

 まあクララが大喜びしてるからいいだろう。

 悪くない(誰かさん風)。


「ところで魔宝玉は何?」

「尚白珠ですね。売却すれば数千ゴールドになると思います」


 よしよし、今日もなかなかいい出物だったね。


「どーもあたしが開けない方がいいみたいだな。明日からあんた達が開けなさい」

「姐御はいいんで?」

「少なくともあたしの精神衛生上は良さそう」


 魔法の葉より面白みのあるアイテムが手に入った方がいいしな。

 その後皆で銅鑼をガンガン鳴らし、十分満足したところで、転移の玉を起動し帰宅した。

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