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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第633話:落とし穴に生産性はないから

 今日は落とし穴大会の総括だ。

 ケスを先頭にアレクとハヤテ、及びうちの子達を連れて白の民の村に向かう。


「一週間経たずして全滅ってのはひどいねえ。もっと頭使えと言いたい」

「落とし穴大会をやるっていうユー姉の発想がまずおかしい」

「そーゆー文句は意見を採用した側に言うもんなのだ。でなきゃ自由な発想を口にするのの邪魔になっちゃうだろーが」

「ものは言いようだべ」

「姉御は自分の説得力が尋常じゃないことを知るべきだぜ」

「どーゆーわけかあたしの言うことは大体聞いてもらえるけれども」


 クララがクスクス笑ってるがな。

 ケスが輸送隊に抜擢されたからって、白の民の子供達がケスの落とし穴を真似て困ってるというのが発端だった。

 そこであたしの大胆な発案で落とし穴大会を開くことになったのだが。


「落とし穴の権威ケス先生としては何か言うことないの?」

「たかが落とし穴で言うことなんかないぜ」

「まあねえ」


 落とし穴なんか掘ったって生産的なこと何もないしな。

 ケスは聡い子なので、当然わかっているのだ。

 余ってるエネルギーを持て余してイタズラに回してただけ。


「白の民は今のところ、ケスしか輸送隊員がいないんだよね。今後輸送隊の規模は大きくなるだろうし、もう一人くらいいてもいいんだけどな」

「でもユー姉、緑の民からも選抜するだろう?」

「するけど」


 本気で今日会う子達から選抜するつもりだったら、『鑑定』能力持ちの赤の民ビルカに声かけてるってばよ。

 いや、輸送隊の信用の問題もあるから、成人から選出したいって気持ちもあるんだよね。

 ただ成人は仕事持ってるだろうから、自薦ではあんまり出てこなさそう。


「ルカ族長は何か言ってた?」

「落とし穴がなくなって喜んでたぞ?」

「まずパーパスはクリアしてるね」

「でも子供達のやる気がなくなっちゃうと困るんだなー」


 落とし穴を作るってのは、全く褒められたことじゃない。

 方向性もあっち向いてホイだけど、何かしてやろうって気はあったってことだから。

 子供達の意欲は尊重してやりたいんだよね。

 今後のカラーズの、ドーラの発展に必要なものなのだ。


 そうこうしてる内に白の民の村の門が見えてくる。


「白の民の村の門は広くて気持ちがいいねえ。ウェルカムって感じ」

「緑の民の村の門も格好いいし、灰の民の村の門が質素過ぎる気はするね」

「灰の民の村には精霊がいるから、他所の人にあんまり入ってきて欲しくないってのがあるんだろうねえ」


 アレクも頷く。

 わかってたっぽいが。


「これサイナスさんには話してあるんだけど、灰の民の村入り口のところに、来客を接待する用の建物があるといいんじゃないかと思うんだ。普段は公民館として使えばいいし」

「ユー姉の寄付は絶賛受付中だろうけれども」

「今ビンボーだからムリだなー。札取りゲームで儲けたら建ててあげなよ」

「公民館を建てられるほど儲かるだか?」

「ハヤテはがっつき過ぎ。おゼゼが逃げてくぞ?」


 笑いながら白の民の村の門を通る。

 ん?


「あれ、御挨拶だね。落とし穴はやめたんじゃなかったの?」

「やめたはずだけど」


 ケスが自信なさげに言う。

 誰かが掘った落とし穴があるのだ。

 もちろんケスのものほどの出来じゃないんだが。


「大会が終わってから掘られた、新しい落とし穴だと思う」

「でもちょっとは考えてあるね」


 正面のこれ見よがしに怪しげなところには何もなく、左右に穴が仕掛けてあるのだ。

 落とし穴大会が終わったことは承知しているけれども、本日ゲストのあたし達を落とすことができれば引き立ててもらえる、みたいなことを考えた子がいるのかもしれないな。

 その意気や良し。

 こーゆーのは責める気になれないわ。


「ボクも今になってみれば、罠はある程度わかるなあ」

「ケスの落とし穴はこんなレベルじゃなかったぞ?」

「落とし穴にレベルを設定されても」

「ケスの落とし穴がカンストレベルだとすると、これはレベル一〇くらい」


 笑いながら真ん中を突っ切って族長宅正面の広場へ行くと、既に子供達が大勢集まって来ていた。

 精霊が珍しいのかな?

 興味深そうにうちの子達やハヤテを見ている。

 その中でガッカリしてるように見える子に声をかけた。


「君、あそこの落とし穴掘った子かな? やる気があるのは褒めてあげよう。でも誰か落ちると危ないから埋め戻しておいで」

「は、はい」


 すぐさま駆け出してゆく。

 何だ、素直ないい子じゃないか。

 族長宅へ。


「おーい、じーさん! 姐さんを連れてきたぞ」

「おお、御苦労じゃった」

「おっはよーございまーす」

「精霊使い殿。よくいらしていただけた!」


 握手。

 ルカ族長がアレクとハヤテに気付く。


「そちらはケスと仲の良い?」

「アレクは知ってるだろうけど、精霊ハヤテは初めてかな? 今日は広報活動に来たんだよ」


 あまりわかってなさそうながら頷くルカ族長とともに、子供達の前に出る。


「皆の者よ! 今回の落とし穴大会の発案者である灰の民の冒険者、精霊使いのユーラシア殿が来てくださった。ケスを輸送隊に引き上げてくれた方でもある。よくお話を拝聴するよう」

「こんにちはー」


 四、五〇人の子供達が一斉に好奇の目を向けてくる。

 灰の民より随分と多い。

 これが落とし穴大会の全参加者か。

 しまった、男の子ばっかりだな。

 女の子にも聞いてもらいたかったのに。


「まず皆に聞こうか。落とし穴大会面白かった人、手を挙げて!」


 三分の一くらいの手が挙がる。

 思ったより楽しんでいただけなかったようだ。

 エンターテイナーとしては少々不満の残る結果に……いかんいかん、今日の目的と違った。


「じゃあ、どうして面白くなかったのかな? 前の方の君、どう思う?」


 前列の手を挙げていなかった子を指名する。


「……元々ぼくは落とし穴なんか好きじゃなかったし」

「それだ! 好きでもない落とし穴大会に何で参加したの? 君らはどう?」


 別のやはり手を挙げていなかった子達を指す。


「だってケスが認められたんだから、僕にもできると思ったんだよ」

「うん。オレだって認められたい」

「要するに落とし穴を作りたかったんじゃなくて、認められたいわけだね。さて、君達の得意技は何?」


 目を見合わせる二人。


「オレはウシの乳搾りかな。ちょっと自信があるぜ」

「ぼくは……特に」


 項垂れるその子。

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